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第97回 中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方-30-

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】

 

(2017年12月)

【第30回 管理職の成長を支援する効果的な管理職研修とは?(4)】

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。

 前回まで3回にわたり、当社が今実施している管理職研修の基本プログラムと、その具体的な内容を紹介してきました。
 ここまでご覧いただいたように、この研修の主なプログラムは、
(1)対話「共感・発見ミーティング」
(2)ワーク「キャリアを振り返る」
(3)体験学習「目標管理の運用」
の3つです。
 そこにもう一つ、全回を通して組み込んでいるのが、
(4)ミニレクチャー「管理者とは何か?」
です。本連載の第10回から20回までに述べた「管理者に必要な素養(リーダーシップ、目標管理、コミュニケーション、部下育成、ヤル気の起きる職場づくり)」や、第21回から26回の「これからのマネジャーに求められるもの(キャリア開発、組織開発)」の中から、各回のプログラムに関連するテーマを選んでレクチャーするものです。
 レクチャーといっても、知識をインプットすることが目的ではありません。
 研修1回目の冒頭で、私は、受講者の皆さんに、「今、あなたが思う『管理者とは何か?』を、ノートに書いてみてください」とお願いしています。合わせて、「この研修を通して『管理者とは何か?』を考え続け、自分なりの『管理者像』を見つけてください」とお話ししています。
 受講する方々に、今、自分が管理職という役割を担っていることを肯定的に受けとめ、自分なりの管理職としてのあり方を、主体的に探求し続けてほしい・・・。ミニレクチャーには、そのヒント、きっかけ、動機づけになればという思いを込めています。
 ミニレクチャーがあることによって、ワークを通して自分で考え・気づく方向性が、受講者の内面に知らず知らずのうちに形成され、ワークの効果が高まっているように感じられます。
 さて、昨年2月から約2年間にわたって、「中堅・中小企業の管理職のあり方」を考えてきましたが、いよいよ今回で最終回となりました。

「そもそも管理者とは何なのでしょうか?」

という問いかけから、この連載はスタートしました。
 最後にもう一度あらためて、「管理者とは何か?」と「管理職研修で何をすべきか?」を考えてみたいと思います。

1.管理者は、実際に何をするのか?

 私は今、当社の管理部門のマネジメントに携わっています。
 当社は、今年、基幹システム(顧客データベース、社内コミュニケーションとワークフロー、会計)の入れ替えに取り組んでいます。長年事務業務を担当しているメンバーと、新人のシステム担当者が協働し、10月までに、かなり驚異的なスピードで新システムに移行することができました。
 ところが、移行後の運営段階になると混乱が生じ、さまざまな問題が噴出してきました。新システムを軸とした新たな運営体制は、各担当がそれぞれにがんばっていれば自然にできあがるというものではなかったのです。
 業務内容、フローやルール、役割分担など、各担当者のやるべきことをシステムに合わせて組み替えることはもちろん、社内メンバーへの周知、教育や、関係する外部機関との調整を速やかに行うことが必要でした。
 それには、担当者同士の合議に任せるだけではなく、全体を俯瞰し、人を巻き込み、陣頭指揮をとることが必要だったのです。新たな運営体制を作るスケジュール感や、進め方、ToDo、ゴールイメージなどについて、ある程度の経験値や肌感覚を持っている者が、その役割を担うことが必要でした。
 「あたりまえだろう」と言われそうですが、長年、小所帯でやってきた当社は、これまで、それぞれの役割をそれぞれが感じ取って自主的に動く、いわゆる「自己組織化」によって、十分回ってきていました。私自身も、「管理者」ではなく、コンサルタントという一専門職としての役割を中心に仕事をしてきました。今回もそのスタイルでいけるものと思い込んでいたのですが、それが甘かったのです。
 数年前から組織体制が変わり、社員も増え、仕事も変化する中で、マネジメントの必要性に、あらためて気づかされた思いでした。それでもこの1年は、各社で管理職研修を実施しながら、受講者の皆さんと一緒に、私自身もわが組織のマネジメントと、私自身の立ち位置、振る舞い方を考え続けてきたこともあって、この局面になんとか対応できているように思います。

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 私がこの経験を通して学んだマネジャーの役割は、以下の3つです。

(1)業務のマネジメント
 システム入れ替えの目的(主には、業務効率化とコストダウン)を明確に認識し、その成果実現のための手順と戦略を立案し、新たな業務体制を組み立て、人を配置し、役割分担を考案する。

(2)人と組織のマネジメント
 実行することのメリット(今よりも楽になる、やりやすくなる、まちがいが少なくなるなど)を伝えて、各担当者に参加を動機づけ、協調・連携を促す。また、関係者(新システムを使う社内メンバー全員と、会計等の業務を委託していた協力先)に対しても情報を共有し、協力を仰ぐ。

(3)メンバーのキャリア支援
 事務業務に長年携わってきたからこそ持っている担当者ならではの知見や悩み、要望と、新加入のシステム担当者だからこそ持っている高度・最新の専門知識、情報を、大切に扱い、それらを活かす新たな業務運営体制を作る。

 今担っているこれらの役割は、新たなことをスタートする変革期、混乱期であるからこそ必要なのかもしれません。しかし、安定した状態になればなったで、その状況にふさわしいマネジメントがあるでしょう。ただいずれにせよ、この3点が管理者の中心的な役割であることには違いがないと思います。
 この連載を通して探求してきたことを、わが身で体験・実感する毎日です。

2.コミュニケーションを磨き続ける

 管理者としての役割を果たすために、「何を習得・習熟しておかなければならないか」については、これまでの連載の中で多くのことを述べてきました。
 その中でも、管理者としてのあらゆる役割の遂行のために、継続して磨き続けていきたいと思うのは、何と言っても「より良きコミュニケーション」です。「コミュニケーション」は、単なるノウハウやスキルではなく、ほかのすべての素養にも通じる根本マインドと言えます。
 巷でも最近、状況や相手に合わせた卓越したコミュニケーションが、「神対応」ともてはやされているように、「コミュニケーション」は、ビジネスシーンに限らず、関わる人たちとの信頼関係を築き、チームでものごとをより良き方向に進めていくための最重要なやりとりの基盤なのです。
 とはいえ、コミュニケーションのスタイルは、子供のころから無意識に身についてしまっているもので、そう簡単に変えることができません。だからこそ、スポーツのように、練習(基礎力を養う)→実践(意識化と無心・無欲化)→振り返り(他者からのフィードバックと自身の内省)のサイクルを繰り返すことが大切です。いくら知識を学んでも、そのサイクルの継続がなければ「変われない」ということを、肝に銘じておくことが必要です。自身のコミュニケーションスタイルを知り、そういう自分であることを「意識し続ける」ことなくして、管理者としての進化・成長はないと言っても過言ではないと思います(連載第15回~17回参照)。
 日々、複雑多岐にわたる業務を遂行している管理者が、「意識し続ける」ことは、決して簡単なことではありません。しかし、「今、ここ」のコミュニケーションの一つひとつが、主たるコミュニケーション相手である「部下」に、善くも悪くもじわじわと影響を及ぼし、本人の成長をも左右し、ひいてはチーム全体の業績に波及するのだと思えば、意識せざるを得ないのではないでしょうか。
 先述のように、私自身が今、マネジメントの実践の場に立たされています。決してうまくいっているわけではなく、毎日が試行錯誤の連続です。関係するメンバーに、何かを語ってみる、伝えてみるたびに、「ああ、こんな反応になるんだな」という発見があります。そして、自身のコミュニケーションのあり様を、都度、振り返り、考えさせられ、鍛えられています。
 そんな一管理者の振り返りと気づきを、個人的なものにとどめずに、同じ立場に立つ者同士が共有し、フィードバックし合い、管理者全体の組織的な成長につなげることこそが、管理職研修の大きな意義ではないかと、私は思います。

3.一人ひとりの原動力を芽生えさせる

 このように、コミュニケーションの学びと実践を中心に、「管理者とは何か?」「何をすべきか?」を知識や方法論として習得し続けていっても、管理者という複雑・多岐にわたる役割を適時・適切にうまく果たすことは、そう簡単にはできません。「うちはプレイングマネジャーばかりだから、マネジメントなんてしている暇ないよ!」というお声を、クライアント企業様からよくお聴きします。まさに今の私も、コンサルタントとしての現場をいくつも持つ中で、組織運営に携わるのは、正直、すごくきついです。
 それでも、この役割をなんとかやっていきたいと思うのはなぜだろう?
 それは、私自身が、わが社が好きで、その一員であることに意味を感じ、そこに集う仲間とともに成長していくことで、お客様や社会に、わが社ならではの価値を届け続けたい、そしてわが社の明るい未来につなげていきたいという思いを持っているからとしか、言いようがありません。これが私にとっての「管理者マインド」であり、任された役割を果たそうとする原動力です。
 私の場合、いくつもの管理職研修の場で、「管理者とは?」「管理者は何をすべきなのか?」を、受講者の皆さんとともに主体的に深く考え、意識する時間をたくさん持たせてもらえていることに加え、この原動力があるからこそ、管理者の役割を前向きに受け入れ、考え、工夫して取り組むことができているのです。
 ならば、マネジメントをやっていきたいという内発的な原動力を、管理者一人ひとりの内面に芽生えさせていくことこそが、管理職研修の究極の役割なのではないでしょうか。それは冒頭で述べた、「この研修を通して『管理者とは何か?』を考え続け、自分なりの『管理者像』を見つけてください」というメッセージともつながります。
 来週、再来週と、いくつかの管理職研修の現場が待っています。来年には、新たなクライアントで研修が始まります。これから研修のご提案をお約束しているクライアントもいくつかあります。
 これからも、ここまで考え、学んできたことを自分自身の実践に活かすとともに、その経験も踏まえながら、クライアント企業様とともに、さらに「管理職とは何か?」の探求を進めていきたいと思っています。
 約2年にわたり、読んでくださった皆様、ありがとうございました。

今号をもって渡辺俊執筆「中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方」は終了いたします。
次回より本シリーズは古川賢治(社会保険労務士・中小企業診断士)が執筆する新連載
「駆け出し人事コンサルタントの学習・成長ブログ」~人事管理・労働経済のキホンを学ぶ~が始まります(第1回 2018/1/16掲載予定) どうぞお楽しみに!

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