1. プライムコンサルタント
  2. 人材マネジメントセミナー
  3. 第92回 中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方-25-

プライム特選情報

第92回 中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方-25-

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】

 

(2017年8月)

【第25回 これからのマネジャーに求められるもの(5)】

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
 前回は、『キャリア開発』とならんで、『組織開発』が今後の重要な人事施策になることをお伝えし、その一手法である「ワールド・カフェ」スタイルを基盤とした「共感・発見ミーティング」の事例を紹介しました。
 さて、この「共感・発見ミーティング」には、どんな効果があるのでしょうか?今回は、それを掘り下げることで、『組織開発』の意義と必要性に迫っていきたいと思います。

1.共感・発見ミーティングの効果

 前回紹介したQ社の「共感・発見ミーティング」で起きたことを整理すると、次のようになります。

①異なる立場の思いや考えに、耳を傾け、共感するようになる
②取り上げたテーマを、他責にせず、「自分ごと」としてとらえられるようになる
③表層的・外面的・一般的な問題解決ではない、「自分たちならではの問題」の本質を探究し、理解しようとする空気が生まれる
④立場の異なるさまざまな意見から、どれかを採択するのではなく、参加者全員の知恵の相互作用や相乗効果によって、思いもよらないよりよい方向性や解決策を見出していくことができる

 一番のポイントは、「自分ごととしてとらえられるようになる」という点です。
 ミーティングをスタートしてからしばらくの間は、現行制度に対する不満や、これまでの制度改革プロセスへの非難といった他責的な発言が大勢を占めていました。しかし、対話を進めるうちに話の焦点が徐々に変化し、最後の感想共有の場面になると、ほとんどの参加者が、制度そのものとこれまでの改革プロセスを、自分ごととしてとらえて深く見つめ、組織全体の立場からコメントするようになりました。
 対話をきっかけにして、一人ひとりの「内省」が始まり、その場全体に波及していったという印象でした。「外側」の事柄や他者に向いていた目が、自分や自分たちという「内側」に向くという、「視座の転換」が起きたのです。
 このように「共感・発見ミーティング」は、表層的な通り一遍の議論ではなく、本質に目を向けた深い対話を促進する「組織的内省の場」になるのです。
 私たちは、これまで多くの会社でこの「共感・発見ミーティング」を行ってきましたが、たいていの場合、Q社と同じような場になります。
 では、一体何が、この場にそのような雰囲気・空気を生み出すのでしょうか?

強い イラスト.png

2.共感・発見ミーティングに込められたしかけ

 「共感・発見ミーティング」には、一般的な会議とは異なる、2つの特徴的なしかけがあります。
 1つ目は、「チェックイン」と「チェックアウト」の実施です。
 チェックインは、ミーティングの冒頭に行うもので、「きょう、何を期待しているか?」「今の気持ち」「この場で言いたいこと」などを、一人一言ずつ(30秒~1分程度)話す時間です。
 チェックアウトは、ミーティングの最後に行うもので、「感じたこと・気づいたこと」、「印象に残ったこと」、「誰かに伝えたいこと、分かち合いたいこと」、「今の思い・率直な気持ち」などを、やはり一人一言ずつ話してもらいます。
 日常の頭と心を切り替えて、その場の対話に意識を集中するためのちょっとした儀式なのですが、チェックインには、本音で語り合う心の準備、チェックアウトには、対話をふり返り、気づきを共有するという効果があります。
 2つ目は、「場づくり」です。
 「共感・発見ミーティング」では、4~5人単位の小グループで、テーマに集中した対話を行います。テーマに関連する問いを3つほど準備しておき、その場で順番に話し合っていきますが、問いごとにグループメンバーの組み合わせを替えます。テーブルの上には、飲み物や一口菓子を用意し、リラックスできるようにします。
 また、模造紙と色とりどりのマジックペンを用意し、思い浮かんだことや気づいたことを、模造紙に落書きしながら話してもらいます。
 そして、スタート前には参加者間で、以下の約束事を共有・合意します。

強い文中囲み.png

 たったこれだけのしかけですが、組織やポジションなどの壁を越えて、自由にのびのびと何を語ってもよいという「安心・安全な場」ができあがります。その結果、よくある会議とは異なり、不思議と次のような場の空気が生み出されていくのです。

強い図表1.png

強い 場の転換.png

強い図表2.png

 参加者は、自分を主張するだけでなく、自身の立場を超えて他者の声にも積極的に耳を傾け、全体観を持って意見を交わすようになります。
 「誰が正しい」とか「誰が勝った」かにこだわるのではなく、話し合いを通して「何か良いものが生まれれば良い」という未知への興味と期待をもって進められます。
 またグループを変えることで、あたかも全員で話し合っているような感覚になり、各テーブルで出た多様なアイデアを結びつけ、深い相互理解や新しい知識を生み出していくことができます。
 実際にやってみると、想像以上にお互いの理解が深まり、組織としての連帯感・一体感や未来への希望が生まれるのです。

3.共感・発見ミーティングの必要性

 先日は別の会社で、管理職による評価制度づくりのプロジェクトを実施しました。そこで「部門の課題を抽出する」というワークをしていると、ある部門責任者のRさんが、「会社のビジョンが示されていないのに、部門の課題なんてわかりませんよ。まずは、経営陣に方針を出してもらわないと!」と強い口調で詰め寄ってきました。その会社には、年度の予算数値があるのみで、明快なビジョンや方針、戦略などがなかったからです。
 私が、「確かにそうですね。しかしRさんは、〇〇部の責任者として日々お仕事をされていますよね? それは、何らかの形で会社の方針や戦略を受けとめているからではないですか?」と問いかけると、「勝手に思っているものはありますよ。でも、それが正しいかどうか、経営陣の考えと合っているかは知りません。経営陣からはっきり示してもらわないと!」と、Rさんはさらに語気を強めまました。
 そこで私はこう言いました。「30年前、バブルが崩壊する前だったら、社長にそう要求すればよかったのかもしれません。でも、現代の経営環境においては、誰であれ、一人で先を見通した明確なビジョンや方針、戦略を、自信を持って打ち出すことなどできないんじゃないでしょうか? たとえ経営者であったとしても・・・。だから皆さんの力が必要なんですよ」と。
 するとRさんは、「腑に落ちた!」という表情で、「そうか、そうですよね。わかりました。ちょっと考えてみます。上とも相談してみます」と、態度を一変させたのです。 さっきまで、社長に、経営陣に向けられていた矛先が、急にわが社、自部門、自分に向いたように見受けられました。

 企業に雇用される私たちは、これまで、経営層が取り決めたビジョンや方針を起点に、組織階層に沿って段階的にブレイクダウンされた「役割・課題・目標」に取り組むことが、組織人にふさわしい行動だと考え、実践してきました。
 一見すると、組織の成果や企業の発展成長は、経営者や管理者がトップダウンで組織を運営し、各社員がそれに従うことで効率的に実現できるように見えます。現に、高度成長期からバブル崩壊の前までは、そのような考え方や方法論が、新たな商品・サービスを創造し、高い生産性を実現する鍵でした。
 ところが現代は、少子高齢化・人口減少・成熟化という社会情勢の変化により、多くの企業が次の成長への突破口を見出しにくくなっています。このような経営環境では、上意下達に頼った組織運営は、成長の足かせにもなりかねません。
 なぜなら、ブレイクダウン型の組織運営は、組織の至るところに自分の立場や役割に固執する部分最適の閉塞的な思考や行動を生みやすいからです。
 このような思考・行動が組織に広がると、お互いが足を引っ張り合うようになり、全員が一丸となって組織全体の共通目的に向かう力を低下させてしまいます。
 また、成熟社会の高度で多様なニーズにこたえるには、これまでにないものの創造・イノベーションや、生産性の飛躍的向上が必要ですが、それを実現するためになくてはならない「一人ひとりの自律的な貢献意欲の発動」を阻害してしまう恐れもあるのです。
 これからの組織運営には、一人ひとりが自発的に組織の共通目的に貢献しようと、自らの個性や能力を十二分に発揮するとともに、一人ひとりの相互作用によって、より大きな相乗効果を生みだすような手立てが必要です。
 一言でいえば、一人ひとりの内発的動機が、組織全体のエネルギーになるような施策が求められているのです。
 「共感・発見ミーティング」は、そんな施策の一つであると、私たちは思っています。
 当初は、「人事制度構築の方向性の共有」を目的として取り入れたものでしたが、今では、
◇自社の将来を考える幹部ミーティング
◇「管理職の役割を考える」ための管理職研修
◇「組織で働くことはどういうことか?」を考える一般メンバーの研修
など、さまざまな場で活用しています。
 また、当社自身も、 ◇当社内のお客様情報やコンサルティング事例の共有会(月1回、気がつけば、もう5年間も実施しています!)
◇会員企業様(成果人事研究会)の定例勉強会
などに取り入れています。

 ここまで述べてきたように、「共感・発見ミーティング」は、『組織開発』という施策の一つの形です。
 次回は、『組織開発』とは何か?について、あらためて整理してみたいと思います。

 

 

本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(特定社会保険労務士)

このページの先頭へ