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第84回 中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方-17-

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】

 

(2017年2月)

【第17回 『マネジャーに必要な素養とは?』(8)】

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
 前々回、  前回と、私たちのパートナーである現代マネジメント研究会 菅野篤二氏の提唱する「管理者に必要な5つの技法」の中から、「コミュニケーションの技法」について考えてきました。
 前々回は、
・コミュニケーションは、仕事をうまく進め、組織が成果を上げるために欠かせない機能である
・その役割の主な担い手は、組織におけるコミュニケーションの中心にいる管理職である

ことを確認しました
 そして 前回は、管理職がその役割を担うために身につけるべきコミュニケーションの基本的なスキル=「認める」「聴く」「伝える」を具体的に紹介しました。
 ここまでお話ししてきたことは、だれもが頭ではよくわかっていることだと思います。しかし、このような考え方や具体的なスキルが身についているかというと、私自身も含めておぼつかないのが実情ではないでしょうか。

1.コミュニケーションスキルを身に着けるためのヒント

 前々回、「私には、組織におけるコミュニケーションのひとつひとつのシーンが、スポーツの試合本番のように思える」とお話ししました。
 コミュニケーションは、組織運営のあらゆる局面で発生します。どのひとつをとっても、同じシーンはないので、都度、その場に応じた最善のやりとりを、当事者が判断して実践しなければなりません。頭と心を場に集中し、相手と向き合い、声を聴き、状況や情報を統合した上で、言葉を選んで即時的に繰り出していくといったあり様は、一投、一打、一蹴、一走、一技に集中するスポーツとよく似ているように思えるのです。
 そう考えると、管理者がコミュニケーションのスキルを身につけるためのヒントは、スポーツ選手がトレーニングを積み重ね、技術やマインドを高めていくあり方にあるように思うのです。

 先日、スポーツニュースで、横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智選手が1日のスケジュールを紹介しているのを目にしました。筒香選手と言えば、今や日本を代表するスラッガー。今度のワールドベースボールクラシックでも4番を任される選手です。
 キャンプ中の現在、生活時間を除くと、「練習時間」が彼の1日の大半を占めています。練習準備から練習後の体操までを含めると、10時間以上となっていました。
 それとともに、比較的長い時間を占めていたのが、「自分との会話」という時間でした。それは、毎日の就寝前の2~3時間にも及んでいました。
 アナウンサーが、「ずいぶん長い時間ですね。これはどういうものですか?」と問いかけると、「明日の練習のことや、体の感覚、将来のことなどを、自分と向き合い、語り合う時間。自分にとってとても大切な時間だ」と答えていました。
 筒香選手に限らず、イチロー選手や、サッカーの中村俊輔選手をはじめ、高いパフォーマンスを維持し続けている選手の多くが、自分と向き合う自分なりの時間と方法を持っていることは、よく知られています。
 ①練習、②実践、③振り返りの継続が、スポーツ選手が、本番の舞台で最高の力を発揮するために、技術を磨き、マインドを醸成する基本的なのあり方だと言えましょう。

強い 瞑想するイラスト.png

2.基礎力を養い、本番に備える

 まずは練習です。
 私の身近なところでいうと、目標管理を導入している多くの企業で「目標設定面談」「進捗管理面談」「振り返り面談」など、しくみやルールとしてコミュニケーションの機会を設けているのですが、制度導入時の管理職研修の中で、面談を想定したロールプレイング練習をすることもあります。
 また、営業・接客・販売など、顧客接点の多い職種では、接遇やプレゼン、交渉などの訓練をする場合が多いと思われます。

 しかし、コミュニケーションは、面談や顧客対応にとどまるものではなく、日常のいたるところで発生します。朝礼、仕事の指導・指示、報告連絡相談、会議、顧客との打ち合わせや、トラブルへの対応など、挙げたらきりがありません。
 コミュニケーションそのものは、仕事の目的ではありませんが、仕事をよりスムーズかつ効果的に遂行するために欠かせない最も重要な手段です。
 職場で行われるコミュニケーションの機会のひとつひとつが、関わる人のモチベーションや仕事の価値や成果に影響を与える、大切な「本番」なのです。ならばその重要性を強く意識して、面談や顧客対応といった特別な場面のための方法論ばかりではなく、どんな場面でも通用する「コミュニケーション基礎力」を養う練習が必要なのではないでしょうか。
 基礎力を高め続けることこそが、様々な本番への力強い備えとなるのだと思います。

3.意識化しつつ、無心・無欲になる

 次は実践です。
 練習を実践に活かすには、大切なことが2つあると思います。
 ひとつは意識化です。日常のコミュニケーションを、「貴重な実践の機会である」と意識することが大切です。意識しなければ、いつものスタイルに流され、気がつけば従来と同じような形で終わっていたということになってしまいます。これでは練習の成果は表れません。

 もうひとつは無心・無欲になることです。
 チャンスをとらえたら、練習で積み上げてきたものを発揮することだけに集中することが大切です。意識化と矛盾して聴こえるかもしれませんが、意識しすぎると、どれが正解なのかを頭の中でぐるぐると探し続け、迷った挙句、結局力を発揮できないということになりやすいのです。
 また、良い結果を出したい、相手に評価されたい、承認されたいという思いが高じると、かえって、持てる力の発揮を妨げてしまうことにもなりがちです。
 定期的な部下との面談や、顧客へのプレゼンなど、あらかじめ予定されている機会については、準備する余裕がありますので、比較的意識を持ちやすいものです。逆に、準備のし過ぎ、考えすぎが災いすることもあるかもしれません。

 一方、日常に随時発生するコミュニケーションとなると、部下からの質問や相談ばかりでなく、顧客からの急な要求の電話、上司からの指示など突発的なことが多く、準備をする余裕がないため、つい反射的に対応してしまいがちです。ただ、基礎力が十分に養われていれば、瞬時、反射的に適切な判断に基づく対応ができるようになるものでもあります。
 ひとつひとつのコミュニケーションが、双方の関係性や、相手のモチベーション、意思決定に大きく影響するとなれば、どれも気を抜くことはできません。
 意識化と、無心・無欲とを柔軟に、直感的にコントロールできるようになることが、練習の成果を十二分に発揮するための鍵だと言えるでしょう。

4.共に振り返る

 最後に、そして最も重要なのは、振り返りです。
 実践しっぱなしでは、たまたまその場での成果は表れても、定着までには至りません。そのコミュニケーションが良かったのか悪かったのか。自分自身や相手の思考や感情、行動に、どのような影響や変化を及ぼしたのか。
 良かったとすれば何がその要因だったのか。悪かったとすればその原因は何なのか、次はどうしたらよいのか。どうすれば相手と自分のよりよい変化につながるのか・・・などなど、あらためて思い起こし、感じ、深く考えてみることで、気づきが生まれます。その気づきがあってこそ、間違いを修正し、足りない部分を補うために再度練習を積み重ね、次の実践の機会に活かすことができるのです。
 また、一連の経験を自身の中に意味づけ、定着させることにもつながります。
 ただ、振り返りをすること自体、誰でも一人でできる簡単なことではないとも、私は思っています。振り返りは、自分と向き合って自分を見つめること。場合によっては、見たくない自分をも見つめなければならないので、防衛が働き、振り返りという行為そのものを避けたくなることもあるからです。
 だからこそ振り返りには、周囲の支援が必要だと思います。練習や実践には指導者が必要ですが、振り返りには支援者や仲間が必要です。安心・安全な場で、共に振り返ることができれば、一人では気づけなかった思いもよらない気づきを得ることにもなり、次のステップへ大きく踏み出していくきっかけになることでしょう。

 頭でわかることと、できることは全く別モノです。わかっていればいずれできるはずだと思うのは、大きな勘違いです。特にコミュニケーションの場合、子供のころから生きてきた環境の中で、自己流で身につけてきた根強いスタイルがありますから、それを変えるのは容易なことではありません。
 だからこそ、この①練習、②実践、③振り返りを、私たちの日常の中に取り込み、継続していくことが必要なのです。そうすることによって、「わかっているけどできない」で終わらせることなく、自分なりのよりよいコミュニケーションのスタイルやスキルが養われ、自分の中に定着していくことになるのではないでしょうか。

 私は今、あるクライアント企業で、月に1回、管理職研修を行っています。管理者として必要な基礎的な素養を学んでいただこうと、毎回テーマを変えて、ワークや対話、ミニレクチャーを繰り返してきました。コミュニケーションもテーマのひとつです。
 スタートしてちょうど1年となった先日の研修で、一人ひとりの発言を聴きながら、この間の参加者皆さんの変化・成長の目覚ましさに、一人感慨にふけってしまいました。中でも一番の変化を見せていたのは、超ベテラン、職人一筋の、工場長です。最初にお会いしたときに、「コミュニケーションは、嫌い、苦手!」とはっきりおっしゃったのを、今でもよく覚えています。
 そんな彼が、「『仕事なんだから、文句言わずにやれよ!』と思っていた自分が、『大丈夫?』なんて声かけてんだよ。俺だって、やりゃあできるじゃねえか」と照れながら語るまでに変わられたのです。
 多忙の中でも、毎月、定期的に、一定の時間を使って、幹部仲間(若手からベテランまで、この多様さが、またいいのです!)が集まり、振り返り、練習する。それを現場に持ち帰り、日常で実践する。そしてまた、ひと月後に振り返る。
 そのような場を持ち続けることは、中小企業にとって決して容易なことではありません。しかしこの取り組みが、確実に幹部社員に変化をもたらし始めている。これがいずれは、一般メンバーにも広がって、ひいては会社の成長・発展にきっとつながっていくだろうという兆しを、社長はじめ参加者の皆さんが感じ始めているような気がしています。
 この場の空気と参加者の皆さんの姿から、練習、実践、振り返りを継続することの意味とパワーを、誰よりも私自身が強く実感しているところです。

本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(社会保険労務士)

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