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第76回 中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方-9-

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】

 

(2016年8月)

【第9回 『マネジャーの実像』にみる管理者の役割・仕事(4)】

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
  前々回前回と、H.ミンツバーグが提唱している「マネジメントのモデル」のうち、「情報の次元」と「人間の次元」について考えてきました。今回はその3つ目の切り口である「行動の次元」でのマネジメントについて考察していきましょう。

1.マネジャーはプレイヤーに非ず?

 マネジャーというものは、一般的に、「自分が仕事をして成果を出す者」ではなく、「人に仕事をしてもらい、成果を出させる者」と言われます。
 ここまで見てきた「マネジメントのモデル」で言う、「コミュニケーションによって組織の内外をコントロールする(情報の次元)」、「組織の内外の人々に関わり、働きかけることにより、人々が自ら動くように影響力を及ぼす(人間の次元)」と符合します。
 現場の第一線を鼓舞しつつ、少し距離を置いたところに彼らの仕事があるのです。

 たとえば、プロ野球の監督は、選手兼任監督という特異な例を除くと、実際にグラウンドに立ってプレイをすることはありません。
 彼らの主たる任務は、チームが勝つために、対戦相手ほか関係情報を収集、融合、取捨選択して、戦略を立て実行すること、試合の状況を見極め、その場その場で最適な意思決定を下すことです。
 また、選手の様子を観察して能力やコンディションを見極め、チャンスを与えて取り組ませ、声をかけて励まし、結果をともに振り返り、今後に向けた課題を見出させることです。

 オーケストラの指揮者も同様に、子供の頃からきわめてきた特定の楽器を、かなり高い技術で弾きこなすこともできるかもしれませんが、それはあくまでも補助的、趣味的なものであり、演奏会の本番に楽器を持って舞台に立つことはないでしょう。
 彼らの中心的な仕事は、聴衆の心に響く演奏ができるよう、演目に込める自身の思いを語り、共感を得る指揮をとることです。そして、楽団員一人ひとりの技術や個性、特徴を把握、統合して、相乗効果を生み出し、美しいハーモニーを創り出すことです。

 しかし私たち、組織で働くマネジャーはどうでしょう?
 身の回りに実際にいるマネジャーをよく観察してみれば、「マネジャーはプレイヤーに非ず」という表現が当たらない場合がほとんどです。
 特に、中堅・中小企業においては、プレイヤーの比重が圧倒的に大きいマネジャーが大半ではないでしょうか。にも関わらず、多くのマネジメント論においては、それはやって当たり前の仕事、時間的・量的比重は大きいかもしれないがマネジャーの仕事の本質ではない、といったとらえ方をしています。

 ミンツバーグは、「マネジャーというものは、実際には、現場の最前線でバリバリ働いており、それによって高く評価されている存在だ」と言っています。
 そしてマネジャーの役割・仕事のこの側面を「『行動の次元』のマネジメント」と称し、積極的に意味づけています。彼は、情報の次元、人間の次元という間接的な役割に、行動の次元という直接的な役割が加わってはじめて、マネジメントの究極の目的、すなわち「組織・部署が役割を果たせるようにする」を実現できると言っているのです。

2.行動の次元での具体的な活動

 ミンツバーグは、行動の次元の活動例を、「変革を推し進めたり、プロジェクトの進行管理をしたり、トラブルの火消しをしたり、契約をまとめたりしている」と言っています。
 そして、情報の次元、人間の次元と同様、これにも対内的・対外的の両面があると言っています。

強い9 文中表.jpg

 身近なマネジャーを思い起こしてみてください。
 期末が近づき、自部門の営業成績が目標に届いていない時、長い経験の中で培った幅広い人脈から有望顧客の目星をつけて自身で数字を確保してしまうのは、ベテランの営業マネジャーではないでしょうか。
 納品した製品が不良品として返品された時、顧客の厳しい品質要求・納期要求に応えるべく、コンマ数ミクロンレベルの切削や研磨をぴたりとやりきってしまうのは、熟練の技術を持つ工場長だったりします。

 わがプライムコンサルタントの代表も、常に、他のコンサルタントと同等かそれ以上にお客様とのプロジェクトを担当しており、制度構築や管理職研修などを実務として手掛けています。
 このように、多くのマネジャーが行動の次元のマネジメントに注力するのには、情報収集のため、自身の学習のため、メンバーにお手本を示すため、メンバーに任せると結果が不安だから、など様々な理由があります。
 が、その根源的な理由は、現場の現実に直接触れていないマネジャーには、情報の次元で適切な方向性を示すことも、人間の次元で効果的に部下や外部に関わることもできないということではないでしょうか。現場の実務を生身で経験することは、情報を取捨選択し、状況を分析し、戦略・方針を立てるために、また、部下や関係者と信頼関係を構築して、やる気や協力意欲を喚起するために、不可欠なのです。

3.3つの次元でバランスよくマネジメントする

 ここまで、3つの次元でマネジャーの役割・仕事を見てきました。もうすでにみなさんはお気づきだと思いますが、この3つの次元に、優劣や軽重があるわけではありません。
 情報の次元に偏れば、部下は自身で物事を深く考えず、ただマネジャーの言うことに追従するイエスマンとなってしまいがちです。
 人間の次元に偏れば、部下の気づきや成長を待つ余りに、タイムリーに成果を上げることができない危険性があります。行動の次元ばかりのマネジャーは、目の前にあるすべてを一人で抱え込み、長期的な展望や俯瞰的なものの見方ができなくなる懸念があります。
 つまり、よきマネジャーであるには、状況に応じて、この3つの次元をバランスよく使い分けることが必要なのです。
 さらには、自身の能力や個性、価値観や考え方を基盤として、3つの次元を均等ではなく絶妙なバランスで組み合わせながら、自分らしいマネジメントスタイルを作っていくことが大切であり、それこそが「真のマネジャーに成っていくこと」ではないかと思います。
 ミンツバーグは、このマネジメントのモデルを、下記のような図で示しています。

*ここに、書籍から引用した図を挿入します。こんな図です。

マネジメントのモデル 強い組織挿入図.jpg

                         出展:H.ミンツバーグ著/日経BP社発行「マネジャーの実像」

 この図の形には、「マネジャーは卵のように円満にバランスの取れた仕事を心がける必要がある」という、ミンツバーグの意図が込められています。
 ではどうしたら、この3つの次元をバランスよく繰り出していくマネジャーになれるでしょうか?
 次回は、これらの役割・仕事を担うためにマネジャー必要なスキル等について、考えていきたいと思います。

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