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第74回 中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方-7-

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】

 

(2016年7月)

【第7回 『マネジャーの実像』にみる管理者の役割・仕事(2)】

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
 前回は、ヘンリー・ミンツバーグが述べている「マネジャーの役割・仕事の3つの次元でのとらえ方」をご紹介しました。
 今回は、そのうちの一つ目の切り口である「『情報の次元』でのマネジメント」について考えてみたいと思います。

1.コミュニケーションとコントロール

 ミンツバーグは、「『情報の次元』でのマネジメントは、マネジャーが成す役割のうち現場から二歩離れたところで行われるもの」と言っています。
 そしてそこには、次の2つの役割があると言っています。

 1)組織の内部・外部を問わず、コミュニケーションをとること

 2)組織内部をコントロールすること

 まずはコミュニケーション。言うまでもなく、マネジャーの日常はコミュニケーションの連続です。出勤時の挨拶に始まり、朝礼での連絡や報告、部下やチームへの仕事の指示、相談を受けてのアドバイス、会議での情報受理や意見交換、面談や電話による顧客や関係部署との折衝、経営や上司への報告。
 さらに広い意味では、新聞・専門誌・インターネット・講演会・研修・業界団体のイベント・個人的な人的ネットワークなど、さまざまな媒体を通して情報を取り込んだり、発信したりすることも、マネジャーのコミュニケーションと言えます。
 ミンツバーグは、「コミュニケーションに関する役割は、マネジャーを取り巻く皮膜のようなもの」と言っています。
 マネジャーの仕事のすべてをコミュニケーションが覆っている・・・。マネジャーの日常の現実を的確に表しているように思います。
 マネジャーは、常にコミュニケーションを通じて情報の収集・拡散・媒介という活動をしている、組織における情報中枢という存在と言えるでしょう。

 しかし、コミュニケーションそのものが、最終的な目的というわけではありません。マネジャーが情報中枢機能を果たすのには、理由があります。それが、組織内部のコントロールです。
 マネジャーの日常は、方向付けと意思決定の連続でもあります。
 自部門が果たすべき役割は何か。
 どんな問題があり何が課題なのか。
 今優先的に取り組むべきは何か。
 どんな成果を出せばいいか。
 何をゴールとして目指していくか。
 日々刻々と変化する環境において、市場や顧客、会社の方針・戦略・計画、わが社の製品やサービスの特徴、仕事をしてくれるメンバーの強みや弱み、関連他部署や仕入先、協力会社の実情など多岐にわたる状況を、短期的なことから長期にわたることまで複合的に見極めて、都度方向を示し判断し続ける。するといつしか、組織全体が、ある方向に向かって進んでいる・・・そんな様子が思い起こされます。
 このように、内外のコミュニケーションを通して組織内部をコントロールし、結果として組織がその役割を果たすことが、ミンツバーグの言う『情報の次元』のマネジメントです。

2.マネジャーのコミュニケーションの現実

 ところで私は今、2つのクライアントA社とB社で、幹部研修を継続的に実施していますが、いずれにおいても毎回必ず浮上するキーワードが、「コミュニケーション」です。
 「部下とのコミュニケーションがうまくいかない」と、多くの参加者は言います。しかし、彼らの話をよく聴いてみると、「部下とコミュニケーションをとっていない」というのが大方の本音のようです。
 そこには、「みんな自分の仕事で手一杯」とか、「外回りが多いから、顔を合わす時間がない」とか、「車通勤だから、仕事帰りの一杯も難しい」など、いろいろな理由があります。
 しかしもっと掘り下げて聴いていくと、「コミュニケーションは苦手だ、やっかいだ」と感じ、躊躇したり回避したりしている方も、少なからず見受けられます。
 実際、コミュニケーション不足や行き違いによってミスや手戻りが発生し、大幅な残業増につながっているという現実もあるようです。

 また私たちは、一般社員から経営トップまで、さまざまな立場の方々が一同に会し、本音で対話をする「共感・発見ミーティング」を、多くの企業で実施しています。
 ここでよく聴こえてくるのが、「製造の人たちがそんなことを考えていたなんて、知らなかった」「部門が違っても、みんな同じことに悩んでいたんだ」「会社をよくしていきたい気持ちは同じだった」という一般社員の方々の声です。
 そして一様に、「他部署の人たちと話ができたことが、何より良かった!」という感想を述べられます。
 そんな声を聴くたびに、多くの会社で、組織を超えたコミュニケーションが足りていないことに気づかされます。
 このことは、情報中枢を担うはずのマネジャーが、必ずしもその機能を十分に果たしきれていないことを意味しています。もしくは、マネジャーのコミュニケーション機能のみでは、組織間のコミュニケーションの活性化にはつながらないということなのかもしれません。

コミュニケーション.jpg
                                          © zcool.com.cn

 

3.コミュニケーションに本気で取り組むとは

 このように、「コミュニケーションは、マネジャーの役割だ」と言われても、実際にコミュニケーションをとり続け、その質を高めていくのは簡単なことではありません。物理的な障害なら少しの工夫で取り除けるかもしれませんが、そこにマネジャーのマインドや能力が関わっているとなれば、それを変えるのは容易ではないからです。
 では、コミュニケーションのあり方を本気で変えていくには、どうすればよいのでしょうか。
 先ほど述べたA社では、営業所責任者と複数営業所を束ねるエリア責任者、経営幹部を対象に、3カ月に1回のペースで幹部研修を実施しており、すでに3年目となっています。
 昨年4月から導入した「成長支援制度(←評価制度に代わるしくみ)」の運用を含めた自らの組織運営を定期的に振り返り、課題を見つけ、次の3カ月の取り組みを意思表明するという内容です。
 またB社では、各部門責任者と経営幹部を対象に、月1回ペースで半年ぐらい研修を進めてきました。
 「ミッション・ビジョン・バリューに基づく会社の行動指針作りと、目標設定~評価の実務習得を通して、マネジャーマインドを醸成しよう」という目的で、レクチャーとワーク、振り返りというスタイルで進めています。

 両プログラムには、共通する特徴があります。それは、学びの焦点を、振り返りにおいていることです。
 たとえば、「管理職の役割」をレクチャーした後で、「自分は管理者として、日常、どのように振る舞っているのか」「自分は部下とどのように関わっているのか」を一人ひとりに考えてもらいます。
 これをグループや全体で対話し、共有することを通して、自身の気づきを深めていってもらいます。
 数時間の研修の場で、当事者として考え、語り、聴き、自問自答するというサイクルを繰り返していくことで、参加者全体としての共通の気づきやこれからこうしていきたいという思いが形成されていきます。
 参加者の多くは、それぞれの担当分野では、専門能力、豊富な経験、実績の持ち主ですが、「マネジメント」に関する専門的な教育を受けたことがありません。
 しかし、現実として日々、マネジメントの役割を担い、戸惑いながらも、困難な局面に対応してきている人たちです。だから、ファシリテーターからの情報提供や問いかけ、体験学習を通じて、さまざまな気づきがあふれんばかりに出てきます。
 これらのプログラムでは、その気づきを丁寧に扱っていくことを大事にしているのです。

 こうして生まれたその場での気づきは、おそらく、日常のふとした時に思い起こされ、それを実践に表す機会が積み重ねられているのではないかと思うのです。次の研修でお会いするたびに、皆さんの変化・進化を感じます。
 コミュニケーションにも、マネジメントにも完成はありません。だからその質を高めていくには、学習・練習⇒実践⇒振り返り⇒学習・練習・・・という継続的な取り組みが必要だと、私は思います。
 ちなみにA社は、2年半前に、「評価と報酬のしくみを作りたい」というご用命をいただいてお手伝いが始まったクライアントです。
 しかし制度づくりの途中で、社長は、「当面の間、評価はやらない」という決定をされました。「管理職が部下とコミュニケーションをとれるようになることが先決だ」というのがその理由です。
 結果、評価制度は、上司が部下とコミュニケーションをとりながら、部下の成長を支えていく「成長支援制度」へと形を変えました。
 そして、管理者の方々は、日々試行錯誤を繰り返し、その運用を定期的に振り返り、部下との関わりのあり方を共に学び続けています。

 『情報の次元』のマネジメントが、内外のコミュニケーションを通して、組織内部をコントロールすることならば、コミュニケーションが機能しなければコントロールもできません。
 見方を変えれば、コミュニケーションがしっかり機能しさえすれば、組織の方向付けは、おのずとスムーズに進んでいくとも言えるのではないでしょうか。
 このことは、次の『人間の次元』のマネジメントとも深く関わっています。
 次回はこのテーマについて、考えてみたいと思います。

 

本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(社会保険労務士)

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