1. プライムコンサルタント
  2. 人材マネジメントセミナー
  3. 第6回「若者雇用を取り巻く現状と仕組み、今後の課題」~駆け出し人事コンサルタントの学習・成長ブログ~

プライム特選情報

第6回「若者雇用を取り巻く現状と仕組み、今後の課題」~駆け出し人事コンサルタントの学習・成長ブログ~

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】通算第103回

(2018年5月)

こんにちは。人事コンサルタント(社会保険労務士・中小企業診断士)の古川賢治です。



 前回は、「日本の女性雇用の現状と課題」について学習しました。
 今回は、「若者雇用を取り巻く現状と仕組み、今後の課題」と題し、若者の失業率の推移や若者雇用を支える日本的雇用システムについて学習します。また、早期離職など若者雇用をめぐる問題と今後の課題にも触れます。

1. 若者雇用を取り巻く現状と仕組み


① 若者の失業率の推移

今回は、若者雇用の現状と仕組み、今後の課題について学習します。突然ですが、日本の若者の失業率が国際的にどの程度の水準にあるか知っていますか?


いきなり難しい質問ですね。確か、国際的に低い水準にあると記憶しています。


そうですね。15~24歳の若年失業率の推移を国際比較した資料で確認してみましょう。図表1を見ると、OECD加盟国中でも日本の若年失業率は、ドイツと並んで非常に低い水準にあることが分かります。



図表1 諸外国の若年失業率(15~24歳)の推移
諸外国の若年失業率(15~24歳)の推移

資料:OECD Data「Youth unemployment rate」より作成(2018年5月現在)

日本の若年失業率の低さは、若者の雇用政策がうまく機能していると言われるドイツと同水準にあり、世界トップクラスなのですね。両者の若年失業率が低い理由には、何か共通点はあるのですか?


どちらの国にも共通して言えるのは、若者を労働市場に送り出す効果的な仕組みができている、ということです。


若者を労働市場に送り出す仕組みとは、具体的にどのようなものでしょうか?


日本の場合は、「新卒一括採用」がうまく機能しています。一方、ドイツでは、「デュアルシステム」という仕組みがうまく機能していると言われています。


なるほど。新卒一括採用は諸外国にはあまり見られない日本独自の制度だと聞いたことがあります。


はい。日本の他には韓国や、英国の一部のエリート層の雇用に見られる現象です。


新卒一括採用は世界でも珍しいのですね。では、先ほどのデュアルシステムとはどのような仕組みなのでしょうか?もう少し詳しく教えてください。


デュアルシステム(dual system)とは、直訳すると「二元的なシステム」という意味です。ここでいう二元的とは、学校教育と職業教育を並行して進めることを言います。ドイツの若者たちは、義務教育終了後、職業学校に通いながら、企業内での職業訓練も並行して進めることで、職業能力を身につけていきます。


学校で学ぶ「理論」と仕事の現場での「実践」が有機的に結びついているのですね。デュアルシステムの概要がよく分かりました。ところで、日本の若者雇用にはどのような特徴があるのでしょうか?


② 若者雇用の特徴

日本の若者雇用の特徴を一言で表すと、学校から職業への円滑な移行が行われている、ということです。そして、それを支える仕組みとして、(1)新卒一括採用、(2)企業内教育訓練、(3)内部労働市場などがあります。その他に、年功賃金等もあるのですが、ここでは上記の3つに絞って解説します。


毎年3月に学校を卒業した新規学卒者が、4月になると一斉に企業へ就職していくのは、私たち日本人にとっては当たり前のことですが、改めて考えてみると、良くできた面白いシステムですね。


学生生活から職業生活へと切れ目なく、まさにシームレスにつながっているのです。新規学卒者は、4月の一斉入社後、職業人としてのイロハを学ぶ新入社員研修をはじめ、OJTなどの企業内訓練によって一人前の組織人に育て上げられていきます。


ドイツと日本の共通点である「若者を労働市場に送り出す効果的な仕組み」といっても、中身は全く異なるのですね。そう考えると、デュアルシステムによって訓練を積み、働く準備ができているドイツの新卒に対し、右も左も分からないまっさらな状態で労働市場に飛び出していく日本の新卒が、何だか弱々しく見えてきました。


学校卒業後の一時点ではそのように見ることができるかもしれませんね。ところが、日本企業は、あえてその"弱々しい"新卒を採用することにメリットを感じているのですよ。


それは一体どういうことですか?


日本企業では新卒の白地性を好み、潜在能力の高い人を自社の色に染め上げて活躍させていくことを重視するのです。新入社員からはじまって、配置転換や企業内訓練によって様々な経験を積みながら、主任・係長など組織の上位ポジションに昇進していきます。各職務・役職に空きが出た際は、外部から人材を調達せずに内部で調達する。これが、先ほどお伝えした内部労働市場という仕組みです。


なるほど。新卒一括採用や企業内教育訓練等の仕組みが相互に補完しながら、内部労働市場を形成しているのですね。先ほどは弱々しく思えた日本の新卒も、企業に採用された後は、こうした仕組みのなかでめきめきと力をつけていくのですね。そう言えば、大手企業に入社した私の友人は、「海外留学制度など他社にはない充実した教育プログラムが魅力」だと語っていました。そのような企業に入社すれば、グローバルビジネスで活躍できる能力を身につけることもできますし、日本の雇用システムもドイツに負けずなかなか素晴らしいものですね!


はい、大企業を中心として非常に充実した教育プログラムが用意されているのは事実です。しかし、新卒一括採用や企業内教育訓練は大企業を前提としている面があり、企業規模が小さな会社にとってはまた別の話なのです。それを理解するためにも、次の図表2を見てみましょう。これは、事業所規模別に、過去1年間に若者(15~34歳)を雇用した実績があるかどうかを調査したものです。



図表2 過去1年間の若者雇用実績の有無
(単位:%) 新卒採用 中途採用
事業所規模計 20.3 21.0
1,000人以上 84.3 62.3
300~999人 74.1 49.9
100~299人 58.1 43.2
30~99人 37.5 32.1
5~29人 16.0 18.3

資料:厚生労働省「2013年若年者雇用実態調査」より作成

事業所規模が小さくなるにつれて、新卒採用を実施したことがあると回答する企業が少なくなっていますね。規模1,000人以上の事業所では、84.3%が新規学卒を採用しているのに対し、規模5~29人の事業所では、16.0%にとどまっています。これは、何を意味しているのでしょうか?


大企業に比べて資金が潤沢ではない中小企業においては、仕事でばりばり活躍できるまで時間のかかる新卒よりも、即戦力となる人材を外部から獲得(中途採用)することが一般的です。それがデータに表れているのだと思います。


採用後の企業内訓練についてはどうですか?企業規模の大小により違いはあるのでしょうか?


それについては図表3と図表4を見てみましょう。これは、事業所規模別に長期育成方針の有無と若年社員の育成方法を調査したものです。



図表3 長期的な教育訓練等で人材を育成する方針を持つ事業所
(単位:%) 新卒採用 中途採用
事業所規模計 54.2 40.1
1,000人以上 85.6 65.0
300~999人 77.7 58.6
100~299人 70.6 51.6
30~99人 59.5 44.0
5~29人 51.6 38.5

資料:厚生労働省「2013年若年者雇用実態調査」より作成

図表4 若年労働者にOFF-JT・ジョブローテーションを実施する事業所
OFF-JT実施 ジョブローテーション実施
(単位:%) 新卒採用 中途採用 新卒採用 中途採用
事業所規模計 37.5 28.5 24.8 19.2
1,000人以上 84.7 76.2 70.2 55.2
300~999人 70.0 60.5 50.2 41.9
100~299人 58.5 48.3 38.5 29.6
30~99人 45.9 39.5 30.2 24.5
5~29人 33.8 24.7 22.3 17.2

資料:厚生労働省「2013年若年者雇用実態調査」より作成

ここでもやはり事業所規模が小さくなるにつれて、長期人材育成方針を持つと回答する事業所が少なくなっていますね。中途採用者に対するOff-JTやジョブローテーションの実施率についても、大企業は高く中小企業は低いという同様の傾向が見て取れます。


中途採用が中心の中小企業では、すでに職業能力を身につけた人材を長期で育成していこうとはあまり考えていないのでしょう。また、ジョブローテーションはそれまで身につけた仕事の能力やスキルを一旦リセットして白紙の状態に戻すことに近く、これも即戦力を求めている中途採用者にはなじみにくいものです。


教授のおかげで、だんだんと日本の若者雇用を取り巻く現状と仕組みが分かってきました。最後に、若者雇用をめぐる問題やこれからの課題等について教えてください。



2. 若者雇用をめぐる問題と課題


若者雇用をめぐる問題の一つとして、早期離職が挙げられます。いわゆる「七・五・三」※と呼ばれる現象で、図表5のとおり、大学卒業者の3割は3年以内に離職しています。
※中学、高校、大学を卒業して就職をした人の七割、五割、三割が三年以内に離職、転職することを指す語。なお、近年では高卒の離職率の変化から「七・四・三」と呼ぶこともある



図表5 新規学卒就職者の学歴別就職後3年以内離職率の推移
新規学卒就職者の学歴別就職後3年以内離職率の推移

資料:厚生労働省「新規学卒者の離職状況」より作成(2018年5月現在)

長期雇用を前提としている日本的雇用システムを考慮すると、若者の早期離職は企業にとっては良くないことだと思いますが、どのような理由で離職することが多いのでしょうか?


ここでは詳細なデータは示しませんが、厚生労働省が公表した「2013年若年者雇用実態調査」によれば、3年未満で初職を辞めた理由として「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」や「仕事が自分に合わない」という回答が多くなっています。これは、社会全体でワーク・ライフ・バランスへの意識が向上していることや、新卒入社前に職業教育が施されない日本では採用のミスマッチが起きやすいことが影響していると思われます。


確かに、企業での職業経験がないままの状態では、自分が本当にやりたい仕事について深く考えるということも難しく、入社前後で仕事のイメージにギャップが生じやすくなるかもしれませんね。そうすると、日本もドイツのような雇用システムへと転換していかなければならないのですか?


これまでの日本的雇用システムを捨て去る必要はないと思います。現に、労働政策研究・研修機構が2012年に公表した「今後の企業経営と雇用のあり方に関する調査」では、正社員の長期雇用の維持に対して約8割の企業が肯定的な回答を示しました。ただ、採用のミスマッチを防ぐためにも、若者に対する学校教育と職業教育を有機的に連携させていくことが望まれます。その際に重要な概念である「エンプロイアビリティ(Employability)」という言葉を知っていますか?


Employ(雇用する)とAbility(能力)を掛け合わせた言葉で、日本語では「雇用される能力」などと解されていますね。


外部労働市場が主流の海外では、職業能力がまだ発達していない若者は景気変動のあおりを受けやすくなります。図表1を改めて見ると、リーマンショックなど経済危機の後には若年失業率が大きく高まっているのが分かります。海外の若者は、そうした厳しい現実を背景に、労働市場にアクセスするためには自らのエンプロイアビリティを高めていく必要がある、ということを十分に認識しています。


反対に日本の若者は、そのときの職業能力がまだ低くても、新卒一括採用によって就職できるのですね。ただ、職業能力を高めておけば、それが就職に有利にはたらくことは間違いないと考えます。今後、日本の若者がエンプロイアビリティを高めていくためには、どのようなことが必要でしょうか?


職業能力に直結するような学びが必要だと考えます。そのために、大学をはじめとした教育機関の役割が非常に重要です。単なるインターンシップにとどまらず、企業での職業訓練が並行して実践できるよう、学生と企業をつなぐパイプ役としての役割も果たせるのではないかと思います。


日本の若者がエンプロイアビリティを高めていくことが課題の一つであり、それを解決するうえでは、大学等の高等教育機関が重要な役割を担っているのですね。教授、本日はありがとうございました。



今回の連載内容は、2017年5月17日の講義を参考に執筆しました。 東京労働大学講座「若年労働者の雇用」(堀有喜衣 労働政策研究・研修機構主任研究員)

※東京労働大学講座は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が毎年度開催している、労働問題に関する知識の普及や理解の促進を目的とした講座です。今年度で66回目を数え、これまでの修了者は27,000人を超える歴史と伝統を誇る講座です(2018年1月時点)。


本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(特定社会保険労務士)
古川賢治(社会保険労務士・中小企業診断士)

このページの先頭へ