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第55回 大切な昇給を売り上げアップにつなぐ仕組みづくり-4-

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】

 

(2015年8月)

皆さんこんにちは。コンサルタント・社会保険労務士の津留慶幸です。
 前回は、「役割貢献」と「組織学習」を軸とした人事制度の考え方をご紹介しました。
 この軸に基づき人事制度や人事施策を整備し実行していくことが、組織の成長を促し、社員の会社への信頼感や働きがいを高めることにもつながり、結果として、人材の成長、会社の稼ぐ力の向上にもつながります。

 ただ、実際に社員からの信頼や納得を得るためには、賃金・賞与や評価の決定ルールがわかりやすい形(制度)になっている必要があります。
 そこで今回から、より具体的な制度作りについて話しをしていきたいと思います。まずは、賃金制度から見ていきましょう。

6.賃金報酬の意味と決定基準

 突然の質問ですが、みなさんの会社で最も賃金が高い人はどなたですか。なぜその人に高い賃金を払っているのでしょうか。
 高い役職だから、ベテランだから、優れた技術を持っているから、営業成績が優秀だから・・・会社ごとに様々な答えがあるはずです。

 賃金とは一般的に、「労働の対価として使用者が労働者に支払うもの」とされていますが、誰にどれくらいの賃金を払うかなど細かなことは就業規則や労使の合意に委ねられています。
 ただ、賃金制度の構築や改善を行う際に、整理する軸がないと考えにくいため、私たちは報酬を次の4つに分類しています。

第55回図T.jpg

(1)地位報酬
 社員の役割や地位、それに伴う権限や責任・リスクに対して支給するもので、基本給として支払います。わかりやすく言うと、地位の高い人は基本給が高いということです。
 これは、役割や地位が変わる(昇格・昇進、降格・降職)都度切り替えを行います。
 何がどのように切り替わるかは、その会社の賃金決定基準によりますが、例えば、等級別の賃金表や賃金バンド(賃金の上限・下限)がある会社で昇格した場合、昇格後すぐに上の等級の賃金表が適用されるのが一般的です。
 そして、この賃金表や賃金バンドには次のような種類があります。

第55回図T2.jpg

 一番左側はシングルレートと呼ばれるもので、例えばⅠ等級は20万円、Ⅱ等級は25万円、Ⅲ等級は30万円・・・というように、等級ごとに一律に決めてしまう非常にシンプルな方法です。
 こんな制度の会社はないのではと思われるかもしれませんが、契約社員の賃金やアルバイトの時給でこれに近い形を採用している会社はあります。

 単純に役割や地位による報酬の違いを表すだけであれば、このシングルレートでもできないことはありません。
 ただ、これではシンプルすぎて、同じ等級でも会社に貢献している社員とそうでない社員や、経験を積んだ社員とそうでない社員の差をつけることができないではないか、という疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか。

(2)習熟報酬
 そういった、貢献や経験による習熟を反映させるのが習熟報酬です。
 一般的に年1回、評価に基づく改定が行われます。
 貢献や習熟度合いの高い人は同じ等級でも高い賃金を支払うことになるので、上図のシングルレートでは対応できません。

 そこで、範囲給という考え方が用いられます。
 上図の右の4つ(開差型、接続型、重複型1、重複型2)は、形は違いますが、いずれも賃金の幅が上下に広がっています。
 これにより、同じ等級でも、貢献や習熟度合いの高い人が賃金も高いという状態を実現できるようになります。

 「開差型範囲給」は等級間に賃金差があり、昇格するとその差の分だけ賃金が上がります。
 社員にとっては昇格が大きなインセンティブですが、会社にとってはそれだけ負担が急に増えることになります。

 そこで、等級間の差をなくし、つなげたのが「接続型範囲給」です。
 上下の等級同士がつながっているので、「開差型範囲給」に比べて昇格時の会社負担は小さくなります。
 ただ、「接続型範囲給」は、見方によっては全等級が切れ目なく一本につながっているようにも見えます。
 昇格の運用が甘いと、各等級に設けた上限が意味をなさず、ずっと昇格し続けて賃金も上がり続けることになります。

 そして、悪いことに、この「接続型範囲給」は構造的に昇格運用が甘くなりやすい要素を含んでいます。
 図をご覧いただければわかるように、賃金がその等級の上限に到達すると、それ以降は昇格しないと賃金が上がりません。
 そのため、社員は昇格させて欲しいと強く思いますし、会社や上司も温情的に昇格させてしまいがちです。
 これは「開差型範囲給」にも言えることです。

 こうした問題を解決できるのが「重複型範囲給1」です。
 上の等級と重複した部分を作ることで、昇格しなくても一定の賃金の高さまでは到達できるようにしています。
 これにより社員からの昇格に対する圧力を緩和でき、「開差型範囲給」や「接続型範囲給」に比べると賃金の上昇をコントロールしやすくなります。

 ただ、これでもその等級の上限までは誰でも、いつかは到達することができます。
 そこで、各等級の中にさらに習熟・貢献に応じた区分(上限)を設けたのが「重複型範囲給2」であり、私たちがお奨めする方法です。この詳しい内容については今後、ご紹介していきます。

 このように、(2)習熟報酬の範囲を定めると、次はその範囲内で、どのようにして、どれくらい賃金を上げるのか(下げるのか)ということが問題になります。
 この賃金改定について、私たちは「段階接近法®」という方法を推奨しています。
 こちらについては、先ほどの「重複型範囲給2」の賃金表と併せて、後日、具体的に解説したいと思います。

 

(3)成果報酬
 (1)地位報酬と(2)習熟報酬は基本給として毎月支払うものですが、日本の多くの企業では、毎月の賃金とは別に賞与が支給されています。
 賞与は成果報酬の代表的なもので、会社業績に応じて、半期に1回支給するのが一般的です。

 賞与の配分方法については、「賃金連動型」と「ポイント制」があり、私たちはポイント制をお奨めしています。
 この「ポイント制」の賞与配分についても、今後、ご紹介していきます。

(4)功労報酬
 これはいわゆる退職金のことです。
 退職金の支払い方には、退職時の賃金に比例して支給額が決まるものや、退職時賃金とは関係なく、在職期間中に積み重ねたポイントで支給額が決まるものがあり、私たちは「ポイント制退職金」をお奨めしています。

 今回は、賃金報酬の4つの分類についてご紹介しました。次回は、賃金・人事制度を決定するための3つの切り口について解説したいと思います。

※本シリーズは、2015年5月19日に開催した当社主催のセミナー内容をもとに執筆しています。

本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(社会保険労務士)

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