1. プライムコンサルタント
  2. 人材マネジメントセミナー
  3. 第38回 ブラック企業問題と企業を取り巻く環境の変化-10-

プライム特選情報

第38回 ブラック企業問題と企業を取り巻く環境の変化-10-

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】

 

(2014年11月)

 皆さんこんにちは。コンサルタント・社会保険労務士の津留慶幸です。
 これまで9回にわたり、ブラック企業問題を法律・通達・裁判例を中心に紹介してきました。
 会社や経営者が罪に問われたり、多額の損害賠償を命じられたりと、法律等の公的なルールを守らなかった場合の影響はご理解いただけたのではないかと思います。

 しかし、このブラック企業問題は、「法律だから仕方なく守る」だったり、「罰則が嫌だから従う」という後ろ向きの発想では、なかなか根本的な解決にはいたりません。
 また、「法的に問題ない対応」を意識するあまり、いつの間にか法の抜け穴探しになり、結局グレーな対応ばかりになってしまっては、会社・社員のどちらにも良いことはありません。

 今回は、ブラック企業問題に代表される労務トラブルが、法的な問題以外にどのような影響を与えているのかをご紹介したいと思います。

5.法的問題にとどまらない経営上のインパクト

(1)労務トラブルが経営に与える影響(4つの悪循環)

次の図は「長時間・過重労働」、「名ばかり管理職」、「サービス残業」が売上や利益等にどのような影響を与えているかを4つループ(悪循環)で示したものです。
 法的なトラブルにならなかったとしても、売上、利益、人材といった経営にとって大切な様々のものに影響を及ぼし、会社・組織を少しずつ弱体化させていきます。

強い組織38回図.jpg

※上図の上矢印(↑)は増加、下矢印(↓)は減少を表しています

これから、この悪循環を1つずつ見ていきたいと思います。

(2)第1の悪循環

「長時間・過重労働」によって社員が疲弊すると、
 ⇒仕事への意欲が低下し、
 ⇒仕事の能率が低下します。
 ⇒それにより仕事の能率も下がり、
 ⇒さらに長時間・過重労働が増えます。
一方で、仕事への意欲の低下は
 ⇒退職者や休職者の増加につながり、
 ⇒さらに長時間・過重労働に拍車をかけることになります。

 長時間・過重労働は、会社が強いている場合もあれば従業員が自主的に行っている場合もあります。
 どちらにせよ、目の前の仕事を何とか終わらせようと一生懸命に頑張った結果、心身ともに疲弊し、さらに長時間労働になるということが多くの会社で起こっています。

(3)第2の悪循環

「長時間・過重労働」によって仕事のゆとりがなくなると、
 ⇒ミス・トラブルが増加します。
 ⇒そのミスやトラブルをカバーするために余計な仕事が増加し、
 ⇒さらに長時間・過重労働になります。

 第1の悪循環と同じく、「長時間・過重労働」に端を発する悪循環ですが、こちらは顧客・取引先など社外への直接的な影響(第3の悪循環)があるため、第1の悪循環とは違ったプレッシャーがかかることになります。

 この2つの悪循環の難しいところは、多くの従業員はすでに目一杯頑張っているので、状況を改善するために時間を使いにくいということです。
 このような状況で、従業員個々人に改善を任せてもなかなか問題の解決には至りません。
 具体的にどのような箇所を改善すべきかは現場の意見を取り入れて検討するべきですが、仕事の取捨選択や新たな設備の導入など大きな判断を伴う場合もありますので、会社側が積極的に関与し、現場の活動を支援していく必要があります。

 また、改善のために新たな施策を行おうとすると、その分、従業員が負担感を感じる恐れもあります。
 なぜ新たな施策を行うのか、その結果どのような効果があるのかを従業員に丁寧に説明し、共有することも重要です。

(4)第3の悪循環

第2の悪循環の「ミス・トラブルの増加」は、
 ⇒品質の低下を引き起こし、
 ⇒顧客満足の低下を招きます。
 ⇒その結果、顧客満足度が低下し、
 ⇒売上の減少につながり、
 ⇒利益の減少につながります。
また、同じく第2の悪循環の「余計な仕事の増加」は、
 ⇒生産の低下を招き、
 ⇒利益の減少につながります。
さらに、「長時間・過重労働」は人件費コスト(残業代等)の上昇を招くため、
 ⇒さらに利益が減少することになります。

 ブラック企業問題を会社と従業員の問題、あるいは会社と行政・司法の問題と捉えている人もいるかもしれませんが、この第3の悪循環が示すように顧客や取引先、ひいては利益にも関わる問題です。
 労働環境の改善には時間やコストがかかるからと後回しにしていると、会社の業績にも大きな影響を与えることになります。

 また、ここでは示していませんが、ブラック企業というレッテルを貼られることによる風評被害も考えられます。
 皆さんも大手サービス業に関する批判的な報道をご覧になったことがあると思います。

 今は企業規模に関わらず、インターネット等で瞬く間に評判が広まりますので、そういった点からも労働環境の改善は急務です。

(5)第4の悪循環

第1、第2、第3の悪循環により「利益が減少」したため、
 ⇒名ばかり管理職を増やす
 ⇒サービス残業を強いる
など間違った方法でコストを抑えようとすると、
 ⇒社員の不満を招き、
 ⇒退職者・休職者が増加し、
 ⇒さらなる長時間・過重労働につながっていきます。

 名ばかり管理職、サービス残業が起きている会社の経営者、人事担当者とお話しをすると、多くの方が「残業代を払えるなら払ってあげたい。しかし今の状況では払えない」と言われます。
 利益やコストに直結する問題であり、会社存続にも関わる問題ですので、そのお気持ちはよくわかります。

 しかし、そのまま放置していると悪循環が続き、いつか会社の存続を脅かすことになります。
 また、そのことにいち早く気が付いた会社はすでに取り組みを始めています。業界によっては人手不足が深刻化し始めていますので、取り組みが遅れると優秀な人材の採用が難しくなったり、今いる貴重な戦力が流出することにもなりかねません。

 以上、4つの悪循環をご紹介してきました。
 1つ1つが独立しているわけではないため、「ここを変えようとすると、あっちに悪影響がでてしまうのではないか?」と不安になる方もいるかもしれませんが、逆に、1つを改善すればその改善が連鎖し、好循環につながる可能性もあります。
 会社の現状、将来への影響を鑑み、どこから改善に着手するか考えてみてはいかがでしょうか。

本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(社会保険労務士)

このページの先頭へ