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第26回 賃金コンサルタントとしての歩みと私たちの基本スタンス-2-

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】

 

(2014年5月)

 皆さんこんにちは。プライムコンサルタント代表の菊谷寛之です。
 2回目は、仲間と一緒に事務所を構えてから、リーマンショックに遭遇するまでの経緯を振り返ります。

(1)マネジメントの基本をつかむ
 独立したときから、私は法人形態のコンサルタント事務所を目指そうと考えていました。
 個人ではどうしても限界があると感じていたからです。

 クライアントの皆さんは、事業を長期的に存続・発展させるために、計画的な人材の育成や活用を期待して人事制度や賃金体系を整備しようとされます。
 それをお世話するコンサルタントが個人開業では、大きな不安を持たれるのではと感じていました。

 人事・賃金制度の導入や運用をサポートするには、経営全般の基本的な知識はもちろん、具体的な相談に始まって、診断から分析、解決策の企画立案、実行支援、アフターサポートまで、継続的な取り組みが必要になります。
 また、コンサルタント事務所も一つの商売ですから、新たな商品開発や、マーケティング、販売促進、顧客管理などの業務も並行してこなしていかねばなりません。
 ささやかなものとはいえ、組織的な取り組みが必要でした。  幸いに知遇をたどって、私の考えに賛同してもらえる元気で優秀な人たちが参加することになりました。

 仲間のコンサルタントも増えたので、仕事の範囲をさらに拡げようと、まず取り組んだことは、経営方針から組織目標、個人目標へとブレイクダウンし、各人の自律的な活動を促す業績評価の仕組みづくりでした。
 キャプラン/ノートンの「バランス・スコアカード」の手法を取り入れたり、主体的な業務プロセスの改善を動機づけるための「達成行動ガイドリスト」を開発したりして、評価制度の改善に力を入れました。
 そのあたりの考え方は、『新実力型賃金のつくり方』((2002年、日本経団連出版)に詳しくまとめてあります。

 私が会社を立ち上げた頃は失業率が5%を超えていた時期で、その後もITバブルが崩壊したりして、景気が落ち込んでいました。
 それが2002年を底に緩やかに回復し、いつのまにか「いざなぎ景気」を超える最長の景気拡大が続きました。

 ただし利益水準は回復しても、毎年の賃上げは「ベア・ゼロ、定期昇給分のみ」というデフレのパターンがすっかり定着し、限られた人件費を少しでも有効に活用しようと、賃金体系や賞与の見直しを進める企業が増えていました。

 各方面からのセミナーの依頼やクライアントの皆さんの相談に対応するため、皆で手分けして全国を飛び回りました。
 企業業績に連動した弾力的な賞与原資の決定と、貢献度に基づく賞与の個人配分のやり方を解説した『中堅・中小企業の業績連動賞与』(2005年、日本経団連出版)を出版したのもその頃です。

 ところが、忙しい仕事の割になんとなく満足感が得られません。
 大事に設計した賃金・評価制度をせっかく導入してもらっても、うまく使いこなせない、あるいは少々持てあまし気味のクライアントが多いようなのです。

 仲間のコンサルタントも同じような思いを抱いていました。
 「ひょっとしたら、何か大事なことが抜け落ちているのではないか」、そう感じ始めた矢先、2008年のリーマンショックが発生したのです。
 クライアントの業績は急降下し、当然、私たちもあおりを受け、危機感を抱きました。
 目の前では、多くのクライアントが経営不振から抜け出せず、苦しんでいます。
 私たちのコンサルティングは、果たしてクライアントの利益になっているのだろうか・・・真剣に悩みました。

 いろいろ模索するうちに、私はドラッカーのマネジメント理論やゴールドラットの制約条件理論(後述)の勉強にのめり込んでいきました。
 ドラッカーを体系的に勉強して分かってきたことは、企業そのものの目的・ミッションの重要性です。
 企業はイノベーションによって顧客を創造し、顧客に価値を提供するために組織全体で成果を上げねばならない、と明快に説かれていました。

 最も成果が上がる事業領域に経営資源を集中するために、経営者は最適な組織構造を作って有能な人材を登用し、目標を明示し、働く人たちの自主性を尊重して仕事を任せていきます。
 それに呼応して、部下に強みを発揮させ、その働きを評価して正当に報い、人材を開発し、部下とともに成果を上げることがマネジャーの仕事なのです。

 驚いたことにドラッカーは大変な日本びいきで、高度成長期に急成長を遂げた日本企業を大いに参考にして、マネジメントの体系を作り上げていました。
 日本の若手経営者(当時)もドラッカーを猛勉強して事業を伸ばしました。両者は師弟の関係を超えて、まさにウィン・ウィンの関係にあったのです。

 小さな会社の経営者であることを自分も意識するようになって、ようやく基本的な経営管理と人材活用のつながりが飲み込めてきました。

(2)経営のゴールを意識する
 ドラッカーは「企業の目的として有効な定義は一つしかない。
 すなわち、顧客の創造である」と喝破しました。『現代の経営』(1954年)という本の有名な一節です。

 一方、『ザ・ゴール』(1984年)の著者ゴールドラットは、企業の目的は「現在そして将来にわたって利益を増やし続けること」であると断言しています。
 別々のことのように聞こえますが、それぞれ企業がめざすゴールの本質をシンプルかつ見事にとらえていると思います。

 少し具体的にいうと、企業は市場の新たな需要を生み出す魅力的な商品やサービスを開発して、自らの顧客を増やし、息の長い商品をできるだけ多く販売して、利益を上げ続けるのです。
 それによって従業員の雇用を守り、人材を育成して、新たな事業投資を行い、社会を支える公器として存続することが可能になるのです。
 そのためには、経営者と従業員が力を合わせて常に市場と対話し、現場から学習し、仕事を創意工夫し、新たな課題に挑戦し、問題を解決し続けなければなりません。

 賃金・評価制度を導入したり改善したりするのは、そのために一人ひとりの力、そして組織の集合的な力を引き出し、自信をつけさせ、人件費を有効に活用して働きに報いるためだったのです。

 しかしバブル崩壊後、大半の日本企業はコストカットで利益を確保するデフレ的な対症療法に走る傾向が強まっていました。
 特にリーマンショック後は、賃金・賞与を切り下げたり、雇用を縮小したりして人件費に大ナタを振るう会社が続出し、クライアントはもちろん、私たちも非常に苦しい仕事が多くなりました。

 しかしコストカットだけでは、企業はいずれ勢いを失い、限界に突き当たります。
 経営が苦しいときこそ、事業にイノベーションを起こすための人的投資を継続し、未来の成長力を蓄える必要があるはずです。
 人事領域での専門的な支援を通して、「顧客を創造し、利益を上げ続ける」という企業の目的を未来志向で支えることが、私たちの本来の職業的使命ではないのかという思いが日に日に募ってきました。

 そして、私たちがお手伝いしている賃金・評価制度のコンセプトは、本当にこのような企業の目的にふさわしいものになっているのか・・・自分で発した問いに戸惑いながら、私たちは苦しい自己点検の作業の必要性を感じていました。
(次回に続く)

本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(社会保険労務士)

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