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第20回「賃金に関する法規制2」~駆け出し人事コンサルタントの学習・成長ブログ~

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】通算第117回

(2019年4月)

こんにちは。人事コンサルタント(社会保険労務士・中小企業診断士)の古川賢治です。



 前回は、労働契約における賃金の意義や賃金額の規制についてお伝えし、特に最低賃金に関する基本ルールやチェック方法などを学習しました。
 今回は、賃金支払方法の規制について学習します。基本的な内容も多く含まれますが、法改正に向けた動きなど最新のトピックも交えてお伝えします。

2.法律上の賃金規制(前回の続き)


②賃金支払方法の規制

今回は、前回からお伝えしている「賃金に関する法規制」の続きです。突然ですが、「賃金支払いの5原則」という言葉を聞いたことがありますか?


はい。「給与は毎月必ず支給しなければならない」などと定められているルールのことですよね。



そのとおりです。賃金の支払い方に関しては、労働基準法によって、次の5つのルールが明確に定められています。



図表1-賃金支払い5原則
原則 説明
通貨払いの原則 賃金は、通貨で支払わなければならないという原則。通貨は国内貨幣(銀行券、鋳造貨幣)であること。例外として、労働者の同意を得たうえで、労働者指定の金融機関へ振り込むことは認められる。
直接払いの原則 賃金は、直接労働者本人に支払わなければならないという原則。例外として、配偶者などの「使者」に支払うことは認められる。
全額払いの原則 賃金は、その全額を支払わなければならないという原則。賃金から一部を控除したり、貸付金と相殺したりすることはできない。例外として、①社会保険料や所得税等の法令に基づくもの、②労使協定を締結したうえで控除するものは認められる。
毎月1回以上払いの原則 賃金は、少なくとも毎月1回以上支払わなければならないという原則。例外として、臨時に支払われる賃金、賞与等についてはこの限りではない。
一定期日払いの原則 賃金は、毎月一定期日に支払わなければならないという原則。例えば、「毎月20日に支払う」などと定める必要がある。「毎月第2金曜日」などの月により変動する定め方は認められない。

※毎月1回以上払いと一定期日払いを一つとし、4原則と呼ぶ場合もある

一定期日を定めなければならないルールがあるとは知りませんでした。全額払いのルールの例外に関して、社会保険料などはもちろん分かりますが、「労使協定を締結したうえで控除する」とは、具体的にどのような場合なのでしょうか?


例えば、「社内旅行積立金」を全社員から一律に控除する場合などがあります。また、労働組合のある企業では、過半数労働組合と労使協定を締結することで、「労働組合費」を賃金から控除すること※ができるようになります。


※これを「チェックオフ」と言う

なるほど。そういえば、「毎月の賃金から数千円の社内積立金が控除される」という話は聞いたことがあります。また、世の中一般に銀行振込が浸透しているので、振込による支払いが原則だと思っていましたが、法律では現金払いが原則なのですね。


そうなのです。労働基準法は1947年に制定された歴史のある法律ですが、法制定当時はまだ現金払いが一般的だったのですよ。



しかし、政府がいま推進している「キャッシュレス社会」の実現を図るうえでは、この「通過払いの原則」が障害となりませんか?


確かにご指摘のとおりです。そしていま、この法規制が見直されようとしています。厚生労働省に設置されている労働政策審議会で現在検討が進められている最中で、2019年中にも厚生労働省令が改正される見通しです。


時代の流れに伴う変化ですね。具体的にはどのようなことが検討されているのでしょうか?



実際に法律が改正されるまで確かなことは言えませんが、大きな方向性としては、労働者への「デジタルマネー払い」を認めるというものです。賃金支払いの手段は、これまで現金または振込に限定されていましたが、これにデジタルマネー払い※も選択肢の一つとして加わるのです。


※デジタルマネーとは、実物の貨幣を使わずに電子情報のみで代金を支払うことができる仮想貨幣のこと


デジタルマネーというと、クレジットカードからビットコイン等の仮想通貨まで幅広く指しますが、どのようなデジタルマネーでもよいのですか?


報道等では、企業は銀行を介さずに労働者のプリペイドカードやスマートフォン上の資金決済アプリに直接入金できるようになると発表されています。なお、仮想通貨については認められません。


コンビニエンスストア等では、ICカードやスマートフォンを使ったデジタルマネーの支払いが多く見られます。その際に使っているカードやスマートフォン上のアプリに直接賃金が支払われる、というようなイメージでしょうか。


そうですね。デジタルマネー払いは銀行口座を経由しない、ということが振込との相違点です。



海外では、ビットコイン等の仮想通貨で給与支払いを行う企業もありますが、日本では検討されないのですね。


仮想通貨は値動きが激しいため、労働者の経済生活の安定を支える賃金には適さない、というのが現段階での見解だと思います。



確かにそうかもしれませんね。最後に、賃金支払方法の規制について何か留意点などがあれば教えてください。



本日お伝えした「賃金支払いの5原則」は、ある意味で常識的なルールとなっていますが、もしこのような基本事項に反することがあった場合は、それが労働者の不満や不安に直結する恐れがあります。賃金の額をいくらにするかも大切ですが、どのように支払うかも同じぐらい大切だということです。


賃金支払方法の規制に関する概要が分かり、また、今後の動向についても把握することができました。デジタルマネー払いの話を聞き、「社会の変化を受けて、法律(ルール)は見直されていくのだな」とあらためて感じました。教授、本日はありがとうございました。



今回の連載内容は、2017年6月16日の講義を参考に執筆しました。
東京労働大学講座「労働条件2」(野川忍 明治大学法科大学院教授)

※東京労働大学講座は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が毎年度開催している、労働問題に関する知識の普及や理解の促進を目的とした講座です。今年度で66回目を数え、これまでの修了者は27,000人を超える歴史と伝統を誇る講座です(2018年1月時点)。


本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(特定社会保険労務士)
古川賢治(社会保険労務士・中小企業診断士)

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