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第17回「弾力的労働時間制(変形労働・フレックスタイム・みなし労働・裁量労働)1」~駆け出し人事コンサルタントの学習・成長ブログ~

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】通算第114回

(2019年1月)

こんにちは。人事コンサルタント(社会保険労務士・中小企業診断士)の古川賢治です。



 前回は「労働時間・休憩・休日」と題し、労働条件の定義や労働時間、休憩、休日に関する労働基準法上の最低基準を学習しました。
 今回は「弾力的労働時間制(変形労働・フレックスタイム・みなし労働・裁量労働)1」と題し、弾力的労働時間制の概況や各制度の内容を確認します。また、変形労働時間制を適用するうえでの対象労働者、労働時間の取り扱い、手続きについてもお伝えします。弾力的労働時間制の中で最も普及している変形労働時間制の基本をしっかりと押さえましょう。

1. 弾力的労働時間制とは


今回は、前回お伝えした通常の労働時間制(1日8時間、1週40時間)とは異なる、「弾力的労働時間制」について学習します。突然ですが、弾力的労働時間制とはどのようなものか知っていますか?


フレックスタイム制など、労働時間に柔軟性がある制度を指す言葉だと思います。


そうですね。弾力的労働時間制とは、労働時間を柔軟に配分したり算定したりできる制度の総称のことです。こうした制度が生まれた背景については、別記事 『労働時間管理の現状と課題 』を参照してください。ちなみに、この言葉は法律に明記されている言葉ではありません。


総称ということは、いくつか種類があるということですね。具体的には、どのようなものがあるのですか?


弾力的労働時間制には、次の5つがあります。



  ・変形労働時間制
  ・フレックスタイム制
  ・事業場外みなし制
  ・専門業務型裁量労働制
  ・企画業務型裁量労働制

それぞれ聞いたことはありますが、具体的にはどのような制度なのですか?内容を簡単に教えてください。


それについては、次の図表1を見てみましょう。各制度の簡単な説明と適用を受ける労働者数の割合をまとめています。


   
図表1 弾力的労働時間制の概況
制度 説明適用割合※
変形労働時間制 一定期間内の業務の繁閑に応じて、労働時間を弾力的に配分することができる     43.9%
フレックスタイム制 各日の始業、終業の時刻を労働者自身の意思で決めて働くことができる     7.8%
事業場外みなし制 外回りの営業職など、労働時間の算定が難しい事業場外労働については一定時間働いたとみなすことができる     7.9%
専門業務型裁量労働制 新商品・新技術の研究開発など、仕事のやり方や時間配分等を労働者の裁量にゆだねる場合、一定時間働いたとみなすことができる     1.3%
企画業務型裁量労働制 事業運営に関する事項について企画、立案、調査、分析を行う業務など、仕事のやり方や時間配分等を労働者の裁量にゆだねる場合、一定時間働いたとみなすことができる     0.3%
※適用割合は各制度の適用を受ける労働者数の割合を表し、出所は厚生労働省「2018年就労条件総合調査」

適用割合を見ると、変形労働時間制とそれ以外では大きな差がありますね。


はい。詳しくは後述しますが、各制度を利用するには、業務内容や職種の制限があることに加えて、一定の手続きが必要となります。それらの違いが、適用割合の差を生んでいるのでしょう。


なるほど。各制度についてもう少し詳しく教えていただけますか?


それでは、各制度の対象労働者、労働時間の取り扱い、手続きについて、掘り下げて見ていきましょう。


2. 弾力的労働時間制の対象労働者・労働時間の取り扱い・手続き


① 変形労働時間制の概要

変形労働時間制は、図表1の説明のとおり、一定期間を平均することがポイントになるのですが、この一定期間を区切るうえでは、3つの区切り方が定められています。


  ●1か月単位の変形労働時間制
  ●1年単位の変形労働時間制
  ●1週間単位の非定型的変形労働時間制

1か月、1年、1週間の3つの単位があるのですね。それぞれどういう違いがあるのでしょうか?


変形労働時間制は、「業務の繁閑に応じて労働時間を弾力的に配分する」という趣旨でつくられたものです。企業によっては、1か月単位で業務の繁閑が生じたり、1年単位、1週間単位で生じたりします。そのような違いから、3つの単位が用意されているのです。


なるほど。「月初と月末は忙しいけど、月中はそこまで忙しくない」というような話はよく聞きますね。仕事によって繁閑の差がどこで生じるかは異なるので、その違いに応じて変形期間の単位を選択すればよいのですね。


はい。変形労働時間制の対象となる労働者は、1か月と1年単位を適用する場合は特に制限がありません。しかし、1週間単位を適用する場合は、規模・業種に制限があります。具体的には、「常時使用する労働者が30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店」でなければなりません。


1週間単位だけは制限があるのですね。


また、変形労働時間制を適用した場合の労働時間の取り扱いは、次のとおりです。



・1か月単位の場合は、1か月以内の一定期間を平均した1週あたり労働時間が40時間※を超えない範囲内で、特定された週または日において法定労働時間を超えて働かせることができる。

・1年単位の場合は、1か月を超え1年以内の期間を平均した1週あたり労働時間が40時間を超えない範囲内で、特定された週または日において法定労働時間を超えて働かせることができる。ただし、その場合の限度は1日10時間、1週間52時間となる。また、対象期間が3か月を超える場合の所定労働日数の限度は1年あたり280日まで。対象期間における連続労働日数は6日まで。

・1週間単位の場合は、1週40時間以内の範囲で1日10時間を限度に働かせることができる。

※ 特例措置対象事業場(常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画製作の事業除く)、保健衛生業、接客娯楽業)は44時間

前回学習した通常の労働時間制では、原則として「法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて働かせてはならない」とされていました。労使協定を締結して残業させた場合には、法定労働時間を超えて働かせることはできますが、それを超えた部分の労働時間については割増賃金の支給(残業代)が必要です。


そうでしたね。仮に1日10時間働かせたとしたら、2時間分の残業代を支給する必要がある、ということでしたよね。


そのとおりです。しかし、変形労働時間制を適用すれば、前述のように場合によっては「1日8時間、1週40時間を超えて働かせることができる」ようになります。つまり、仮に1日10時間働かせたとしても、必ずしも「8時間を超える部分について、ただちに割増賃金(残業代)を支給しなければならない」というわけではないのです。


なるほど。例えば1か月単位であれば、1か月の法定労働時間の枠内でそれぞれの労働日に労働時間を配分していくような考え方になるのですね。制度の趣旨どおり、繁閑の差がある事業では使い勝手がよさそうですね。ただ、残業代の計算などが複雑そうですね。


そのとおりです。残業代の計算については、別記事 『1カ月単位の変形労働時間制の場合の割増賃金の支払いは』にわかりやすくまとめられていますので、そちらを参照してください。それから、変形労働時間制を適用するために必要な主な手続きは、次のとおりです。


・1か月単位の場合は、就業規則または労使協定に定め、労使協定の場合は労基署へ届出。
・1年単位の場合は、労使協定を締結し、労基署へ届出。
・1週間単位の場合は、労使協定を締結し、労基署へ届出。

最後に、これまでの要点を次の図表2にまとめましたので、改めて確認してみてください。


       
図表2
制度 対象労働時間の取り扱い手続き
1か月単位 制限なし     1か月以内の一定期間を平均した1週あたり労働時間が40時間※を超えない範囲内で、特定された週または日において法定労働時間を超えて働かせることができる。
※特例措置対象事業場は44時間    
就業規則または労使協定に定め、労使協定の場合は労基署へ届出。
1年単位 制限なし     1か月を超え1年以内の期間を平均した1週あたり労働時間が40時間を超えない範囲内で、特定された週または日において法定労働時間を超えて働かせることができる。ただし、その場合の限度は1日10時間、1週間52時間となる。また、対象期間が3か月を超える場合の所定労働日数の限度は1年あたり280日まで。対象期間における連続労働日数は6日まで。     労使協定を締結し、労基署へ届出。
1週間単位 常時使用する30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店     1週40時間以内の範囲で1日10時間を限度に働かせることができる。     労使協定を締結し、労基署へ届出。

本日の講義はここまでにして、次回はフレックスタイム制、事業場外みなし制、専門業務型・企画業務型裁量労働制のそれぞれについて、対象労働者や労働時間の取り扱い、適用手続き等をお伝えしていきます。


変形労働時間制の概要について理解することができました。教授、本日はありがとうございました。



今回の連載内容は、2017年6月13日の講義を参考に執筆しました。
東京労働大学講座「労働条件」(中窪裕也 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)

※東京労働大学講座は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が毎年度開催している、労働問題に関する知識の普及や理解の促進を目的とした講座です。今年度で66回目を数え、これまでの修了者は27,000人を超える歴史と伝統を誇る講座です(2018年1月時点)。


本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(特定社会保険労務士)
古川賢治(社会保険労務士・中小企業診断士)

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