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第15回「労働法総論2」~駆け出し人事コンサルタントの学習・成長ブログ~

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】通算第112回

(2018年11月)

こんにちは。人事コンサルタント(社会保険労務士・中小企業診断士)の古川賢治です。



 前回は、「労働法総論1」と題し、労働法とは一体どのようなものであるかについて、概念や成り立ち、法体系等を交えながらその概観をお伝えしました。
 今回は、前回の続きとして「労働法総論2」と題し、労働関係の特色や労働法の体系、労働条件を規制するシステムなどについて学習していきます。

③ 労働関係の特色

労働法を考えるうえで、使用者と労働者の間の労働関係(労働契約)には、他の契約関係とは異なる6つの特色があります。どのような特色があると思いますか?


前回の話で出てきた、「当事者間の交渉力に違いがある(対等ではない)」などでしょうか。


1つはその通りですね。その他については次の図表3で確認してみましょう。



図表3 労働関係の6つの特色
特色 説明
1.交渉力の不均衡 労働契約締結の交渉において、通常、使用者は労働者より優位な立場にある。この交渉力の不均衡が、国家が介入して労働者保護を図ることを要請する。
2.人的関係 労働契約における労働義務の履行は、労務を提供する労働者という人(ヒト)と切り離すことができない。この特質が、労働者の人格権の尊重や健康・安全衛生の確保を図ることを要請する。
3.白地性
 (他人決定性)
実際の就労の場面では、労働者の働きは使用者の指揮命令によることになるが、その動きをすべてにわたり事前に契約で定めておくのはできないため、労働契約における一定の白地性は避けられない(不完備契約)。この白地性による他人(使用者)決定性が、使用者の指揮命令が「権利の濫用」に該当しないかどうかのチェックを要請する。
4.継続的債権関係 商品売買のような一回的債権関係ではなく、一定期間を想定して日々繰り返される継続的債権関係である。これが、契約内容の調整機能を要請する。
5.集団的・組織的就労関係 労働者は他の労働者とともに集団で働き、企業組織の中で事業目的にかなうように配置され活用される組織性がある。これらから、企業秩序を守る必要(企業秩序維持義務)が生じ、それを守らない人には懲戒処分が可能と解される。また、個人間の取引では問題とならない統一的処理の要請、処遇の公平性といった観点も重要となる。
6.個人と集団の多当事者関係 憲法28条と労働組合法によって労働組合という集団的な労働者組織が認められている。労働組合は、個人では交渉力が弱い労働者が団結し、争議権を背景に団体交渉を行うことで労働者の交渉力を引き上げるために労働法が導入した。使用者と労働組合が労働協約を締結すると、法律と就業規則の間に割り込む形で、労働条件が決定される。

なるほど。先ほど私が挙げた「交渉力の不均衡」を含めて全部で6つの特色があるのですね。


はい。これらのうち、1、2、3は、弱い立場にある労働者の保護を要請します。また、4、5は、労働関係における継続的・集団的取引の処理を要請します。6の特色は、労働組合に関する特殊な世界の話です。こうした労働関係の特色を踏まえて、労働法が展開されていくのです。


通常の契約関係にはない特色があるために、私人間の取引ルールを定めた民法ではカバーできない部分を労働法がカバーしているのですね。ところで、まだ労働法の全体像がうまく掴めていないのですが、それについて教えていただけますか。


④ 労働法の体系

それでは、労働法の全体像を把握するためにも、労働法の体系について見ていきましょう。労働法は、次のように大きく3つの体系に分類することができます。


図表4 労働法の体系
分類 説明
労働市場法 外部労働市場における求職者と求人者の労働力取引に関する法規制。例えば、「職業安定法」「雇用保険法」「高年齢者雇用安定法」「障害者雇用促進法」などがある。実施機関は公共職業安定所(ハローワーク)。
個別的労働関係法 個別の使用者と個別の労働者との関係(労働契約関係)を規律する法制。例えば、「労働基準法」「最低賃金法」「労働安全衛生法」「労災保険法」などがあり、行政機関(労働基準監督署)による監督が行われている。
集団的労働関係法 使用者と労働組合の関係や労働組合自体を規律する法制。例えば、「労働組合法」「労働関係調整法」などがある。集団的労使関係にとって不適切や行為(不当労働行為)に対しては、労働委員会が救済命令を発する。

こうして見ると、労働分野に関する様々な法律の違いがなんとなく分かってくるような気がします。


そうですね。普段、労働分野に関する報道を見るときに、「この報道は労働法の体系のうち、どの分類の話をしているのだろう」などと意識してみるといいですよ。そうしていると、例えば、「中央省庁による障害者雇用の水増し問題」に関する報道を目にしたときに、"これは、労働市場法における「障害者雇用促進法」に関する話題だな"などと反応できるようになります。


すぐに反応できるようになるには慣れが必要かもしれませんが、そうした目線で捉えることができれば、労働法に関してさらに理解が深まりそうです。


⑤ 労働条件規制システム

次に、労働条件を規制するシステムについてお伝えします。前述のとおり、労働法には様々なものがあるのですが、使用者と労働者の間で賃金や労働時間などの労働条件を決めるにあたっては、次の4つの法規範があります。


図表5 労働条件を決定する4つの法規範
法規範 説明
法律(強行法規) 労働基準法、最低賃金法などの法律によって最低限の労働条件を規定している。(例:原則として1日の労働時間は8時間までなど)
労働協約 使用者と労働組合との間で合意した労働条件や労使関係を規律する、書面による合意。
就業規則 使用者が作成する職場規律や労働条件を定めた文書。
労働契約 使用者と個別の労働者との間の合意。

「4つの法規範」と言うと少し難しく聞こえますが、簡単に言うと、労働者を雇用する際の労働条件の決定は、「4つの視点」から考える必要がある、ということです。そして、これらの4つの視点には、見ていくときの優先順位があります。これを各法規範の「効力の相互関係」と言ったりもするのですが、次のような優先順位が定められています。


「法律>労働協約>就業規則>労働契約」

まず、法律には、「これだけは下回ってはならない」という最低限の労働条件が定められていますので、他の何よりも優先することになります。次に、労働協約・就業規則・労働契約の3つの関係ですが、これについては次のようなルールがあります。



  • 就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない
  • 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となる

そうすると、労働協約に"1日の労働時間は7.5時間"、就業規則に"1日の労働時間は8時間"と定めてあったとしたら、労働協約の7.5時間の方が優先されるのですね。


そういうことです。なお、仮に労働協約で1日7.5時間、就業規則で1日7時間というように定めた場合は、労働協約を上回る(反していない)部分はそのまま有効となるので、就業規則の7時間が適用されます。同様に、労働契約で定めたある条件が、就業規則に定めた条件を上回る場合も、その部分はそのまま有効となります。


なるほど。それぞれを比べてみたときに、「○○は~~を下回ってはならない」という相互関係があるのですね。


はい。それぞれの法規範の詳細については、今後の連載の中で個別のトピックとして取り上げながらお伝えしていきますので、今のところは、4つの法規範があるのだなという程度に捉えておいてください。ここまで、労働法総論として、全体像をお伝えしてきました。次回以降は、法律に定められた労働条件など、具体的な内容に移っていきたいと思います。


広範にわたる労働法の全体像が見えて、自分なりに整理できた気がします。教授、本日はありがとうございました。



今回の連載内容は、2017年6月1日の講義を参考に執筆しました。
東京労働大学講座「労働法総論」(荒木尚志 東京大学大学院法学部政治学研究科教授)

※東京労働大学講座は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が毎年度開催している、労働問題に関する知識の普及や理解の促進を目的とした講座です。今年度で66回目を数え、これまでの修了者は27,000人を超える歴史と伝統を誇る講座です(2018年1月時点)。


本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(特定社会保険労務士)
古川賢治(社会保険労務士・中小企業診断士)

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