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第13回「総集編~これまでの働き方、これからの働き方~」~駆け出し人事コンサルタントの学習・成長ブログ~

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】通算第110回

(2018年10月)

こんにちは。人事コンサルタント(社会保険労務士・中小企業診断士)の古川賢治です。



 前回は、「パートタイム社員の就業実態と課題」について学習しました。
 ここまでの連載12回で、「人事管理・労働経済のキホンを学ぶ」をテーマにしながら、様々なトピックについて学びを得てきました。
 今回は、「総集編~これまでの働き方、これからの働き方~」と題して、第1回~12回で得られた学びをヒントにしながら、日本の雇用・人事管理で今まで行われてきたことや今後予想される変化について考えていきます。
 なお、次回からは「労働法のキホンを学ぶ」をテーマに、引き続き、私が得た学びや情報を皆様にお伝えしていきます。

1. 単一的な働き方から多様な働き方へ


 日本の雇用を考えると、これまでは、男性を中心とするフルタイム正社員を前提とした単一的な働き方が中心でした。
 残業もいとわない長時間労働※1が当たり前とされていた雇用環境では、子ども・家庭を抱える女性や体力的に衰えが出てくる高齢者など、就業時間に制限のある人たちにはあまり目が向けられていなかったと言えるのではないでしょうか。

※1日本の年間実労働時間やホワイトカラー労働が抱える問題については、第3回「労働時間管理の現状と課題」で学習しました




 ところが、バブル経済の崩壊や少子高齢化による労働力不足を背景に、こうした働き方が見直されはじめ、女性や高齢者の積極的な労働参加※2が求められるようになってきました。
 最近の話題で言うと、高齢者の雇用促進に関する政策として、2018年8月10日に人事院が、国家公務員の定年を65歳まで延長するよう国会と内閣に申し入れました。
 このような高齢者の雇用を継続する動きは、今後民間にも波及していくことと考えられます。

※2女性と高齢者の労働参加については、それぞれ第5回「日本の女性雇用の現状と課題」、第7回「高齢者効用を取り巻く現状と動向、今後の課題」で学習しました



 また、多くの場面で私生活よりも仕事が優先されてきたこれまでの働き方では、労働時間も長くなりがちであるなど働き手に過大な負荷がかかることとなり、メンタルヘルス不調※3や過労死などにつながりやすいという問題が指摘されてきました。
 そのような中、2019年4月に施行される働き方改革関連法では、長時間労働を是正するために「時間外労働の上限規制」が導入されることになっています。

※3メンタルヘルス不調やそのケアについては、第4回「メンタルヘルス対策とうつ病」で学習しました




 以上のような変化を踏まえてこれからの日本の雇用を考えると、今後は、性別・年齢・ライフステージ等に関わらない「多様な働き方」※4が広がっていくだろうと思います。
 その具体的な例として、働く時間や場所を働き手が選択できる、テレワーク・短時間勤務・在宅勤務などの就業形態を導入する企業が増えています。
 最近では、週休3日制を採用するなど、働き手の就業ニーズに応える新しい働き方のかたちを提示する企業も現れています。

※4多様な働き方については、第2回「多様な働き方の展開と課題」で学習しました




 これまでの単一的な働き方のもとで中心的役割を担ってきた「正社員」という言葉は、多様な働き方のさらなる進展とともに、その定義や意味がますます曖昧なものとなっていくのではないでしょうか。
 社会全体でなんとなく"正しい"とされてきた働き方が、今後は、働き手の就業ニーズの変化に合わせる、個別に"最適な"働き方に変わっていくだろうと考えます。

2. 人基準の働き方から仕事基準の働き方へ


 日本企業ではこれまで、仕事そのものよりも働く人の方に着目する「人基準」の人事管理※5を中心にしてきました。
 そして、それは今でも大きくは変わっていません。
 かつて、高度経済成長期を支えた日本的雇用システム(年功序列、終身(長期)雇用、企業別組合)が世界から絶賛されましたが、年功序列や長期雇用などはまさしく人基準の人事管理そのものです。

※5人事管理の概要については、第1回「人事管理の役割と課題」で学習しました




 こうした雇用慣行と日本の厳しい解雇規制が相まって、"一企業における"雇用の安定を生み出してきました。
 それが、国際的に見ても低い失業率※6を実現する日本的雇用の強みでもありますが、ともするとその安定性が組織の硬直性につながってしまうケースも見られます。
 例えば、環境変化が激しい近年のビジネスにおいては、急激な変化に応じて機動的に組織を再編成していく必要がありますが、日本的雇用では人員削減よりも一企業内での雇用を守ることが優先されがちになるため、スピーディな事業再編がしにくいというデメリットがあります。

※6特に若年失業率の国際比較については、第6回「若者雇用を取り巻く現状と仕組み、今後の課題」で学習しました




 特にバブル経済崩壊以後、企業はそうした雇用の硬直性を柔軟化するために、人件費の固定化につながる無期契約の正社員という雇用形態から、人件費を変動化できる有期契約のいわゆる非正社員という雇用形態を選択するようになっていきました。
 そして現在では、「非正規4割時代」※7と言われるまでに非正規雇用者数が増加しています。

※7いわゆる非正社員については、第8回「派遣労働者の就業実態および活用」、第12回「パートタイム社員の就業実態と課題」で学習しました



 非正社員の数が増えすぎるのも問題ではありますが、より重大な問題として指摘されているのは、「正社員と非正社員の賃金格差」です。
 これについては、働き方改革関連法の1つとして、2020年4月に施行される「同一労働同一賃金」によって、徐々にその格差が是正されていくことと思われます。

 この「同一労働同一賃金」という考えは、簡単に言ってしまえば、"同じ仕事なら同じ賃金を実現する"ということで、一見当たり前のように思えます。
 しかし、繰り返しですが、これまで日本企業はあくまで「人基準」の人事管理を中心としてきたため、「仕事基準」で賃金を決定するということをしてこなかった、あるいは人事制度上したくてもできなかったのです。

 そして、そういった人基準の人事管理が、現在の正社員と非正社員の賃金格差を生み出す要因ともなりました。
 なお、ここでいう賃金格差とは、「同じような仕事内容なのに、正社員か非正社員かの違いだけで賃金に差がある」状態のことです。
 今後の法制化によって、仕事基準の人事管理を考えていく必要性が高まっていきそうです。

 その他にも、働き手自身が、働き方を仕事基準で考えるようになってきているのではないか、という変化を感じます。
 近年、キャリア※8という言葉を耳にする機会が多くなりました。

※8キャリアの意味とキャリア形成については、第10回「キャリア形成と失業・転職」で学習しました




 その中で特に最近、「キャリア権」という考え方が注目されているように思います。キャリア権とは、法政大学の諏訪康雄名誉教授が20年ほど前に提唱した概念で、同氏は、
 "働く人が、その意欲と能力に応じて自分が望む仕事を選択し、職業生活を通じて幸福を追求する権利"と説明しています。

 例えば、社員が正社員として入社した後、「ジョブローテーションの中で自分に適した仕事が分かり、今後もその仕事を続けたい!」、そう思って会社に要求する。そうすると、会社はその人のキャリア権を尊重し、以後は配置転換による仕事の変更を行わない。
 キャリア権の概念に基づき、このようなことになれば、職務を限定しないまま入社した正社員の仕事が明確になり、人事管理を仕事基準で行うようになります。

 現在、キャリア権は、法律で明確に定められているわけではなく、まだ理念としてのかたちしかありませんが、このような概念が注目されていることからも、人々の仕事(Job)への意識が仕事基準へと変化しているように感じます。

以上のような変化を踏まえてこれからの日本の雇用を考えると、「人基準」の働き方から「仕事基準」の働き方へと変わっていくだろうと思います。 そうはいっても、これまでの日本のスタンダードである人基準の人事管理が全く無くなるとは思いませんが、政府が主導する「働き方改革」とともに、私たちの持つ"仕事観"というものが変わっていくかもしれない大きな流れを感じます。

以上、これまでの本連載第1回~12回を通じて学習したことを整理しながら、個人的な思いや感想なども述べてみました。



これまでの学びを整理してつなぎ合わせながら、世の中で現実に起きていることとも結びつけていましたね。私が講義で伝えてきたポイントがちゃんと理解されていたように思います。これからもその姿勢をキープして頑張ってください。


はい!教授、これまでの12回の講義ありがとうございました。
なお、次回からは、「労働法のキホンを学ぶ」をテーマに、労働条件や労働契約に関する法規制について学習していきます。引き続き、当シリーズをお楽しみください。



今回の連載内容は、2017年度東京労働大学講座「人事管理・労働経済部門」の講義を参考に執筆しました。。

※東京労働大学講座は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が毎年度開催している、労働問題に関する知識の普及や理解の促進を目的とした講座です。今年度で66回目を数え、これまでの修了者は27,000人を超える歴史と伝統を誇る講座です(2018年1月時点)。


本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(特定社会保険労務士)
古川賢治(社会保険労務士・中小企業診断士)

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