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第10回「キャリア形成と失業・転職」~駆け出し人事コンサルタントの学習・成長ブログ~

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】通算第107回

(2018年7月)

こんにちは。人事コンサルタント(社会保険労務士・中小企業診断士)の古川賢治です。



 前回は、「環境変化と日本の労働市場の変容」について学習しました。
 今回は、「キャリア形成と失業・転職」と題し、キャリアの概念やキャリアをつくるもの、個人の働く動機などについて学習します。また、長い職業人生で誰しも経験する可能性のある失業と転職にも触れます。
 完全雇用に近いと言われる現在の日本の雇用状況下、どのようなことを要因に失業が発生しているのかを紐解きますので、ぜひご確認ください。

1.キャリア形成


① キャリアとは何か

今回は、キャリア形成と失業・転職の実態について学習します。突然ですが、「キャリア」という言葉が何を意味するか知っていますか?


キャリア(Career)とは、もともとラテン語のCarraria(車の轍)が語源であるとされ、そこから転じて、"経歴"などを意味します。


そうですね。一般にキャリアとは、狭義には"仕事の履歴"を意味し、広義には"人生の中で積み重ねてきた経験"を意味します。いずれにせよ、その語源本来の意味から、後になって振り返った時に見えるものと言えます。


なるほど。キャリアとは、自らが積んできた経験を振り返った時に見える、足跡のことなのですね。ところで、キャリア形成とは何なのでしょうか?


② キャリアをつくるもの

キャリア形成とは、キャリア・デザインに沿って個人が職業能力を作り上げていくことを意味します。キャリア・デザインとは、自分がどのような職業人生を送りたいかを設計することです。


キャリア形成をしていくにあたって、実際にキャリアをつくるものは何なのでしょうか?


キャリアをつくるものとして、次のようなものが挙げられます。




  • ライフイベント(結婚、出産、育児など)
  • 仕事の経験(就職、配置転換、昇格・昇進、転職、独立など)
  • 教育や職業訓練(OJT、OFF-JT、自己啓発、人材育成プログラムなど)
  • 休職や失業(傷病、解雇、倒産など)

このように様々な要素がありますが、自らコントロールできるものもあれば、予測が困難あるいは不可能でコントロールできないものもあります。つまりキャリア形成は、①個人の都合、②会社の都合、③偶然によって左右されると言えます。


確かに、自分がどのような仕事がしたいかなどは、ある程度自分の意思で決められますが、会社からの転勤命令や業績不振による倒産などは予測困難ですね。


ここで、個人の働く動機を知るために、ある調査結果を紹介します。図表1を見てみましょう。これは、内閣府が実施している「国民生活に関する世論調査」で得られた、働く目的に関する個人の回答結果を集計したものです。


図表1 働く目的とは何か
働く目的とは何か

資料:内閣府「国民生活に関する世論調査(2017年6月実施)」より作成

図表1を拡大表示するにはここをクリック

これを見ると、全体では「お金を得るために働く」が53.4%で最も多く、次いで「生きがいをみつけるために働く」が18.4%となっています。


多くの人が、お金を仕事の目的としていることが分かりますね。年齢別に見ると、若年のうちは「お金」を第一の目的にし、年齢が上がるにつれて、「生きがい」を目的にする人が増える傾向があるようです。


次に、個人がどのような仕事を理想的だと考えているかを紹介します。図表2を見てみましょう。これも、同調査で得られた回答をもとにしています。


図表2 どのような仕事が理想的だと思うか
どのような仕事が理想的だと思うか

資料:内閣府「国民生活に関する世論調査(2017年6月実施)」より作成

図表2を拡大表示するにはここをクリック

複数回答で尋ねたこの質問に対しては、「自分にとって楽しい仕事」が60.1%(前回57.6%)、「収入が安定している仕事」が59.7%(前回60.9%)で拮抗しており、自分の関心と収入の両方を大事に考えていることがわかります。また、この2つに次いで高いのは、「自分の専門知識や能力がいかせる仕事」(41.0%、前回39.4%)であり、自分自身にも目を向けている人が多いことが伺えます。


「仕事の目的」を一つだけ挙げる図表1の調査では、「お金を得るため」という現実的な回答が群を抜いていましたが、複数回答を可として「仕事の理想」を聞いた図表2の調査では、「自分にとって楽しい」ことや「自分の専門知識や能力がいかせる」ことなど、自分にとっての仕事という見方が表に出てきたわけですね。


そうですね。ただ、自分が理想とする仕事に近づいていくためには、個人による準備や努力も必要ですが、社命による人事異動を経て職業経験を積んでいくことも同じくらい重要です。さらに、良い上司やライバルとの出会いなどの偶然性もキャリア形成に大きな役割を果たします。


なるほど。そう考えると、キャリアをつくるものには不確定要素も多く、「後で振り返った時に見えるもの」という言葉の意味もよく分かります。


2.失業と転職


長い職業人生の中では、失業や転職を経験することも少なくありません。そこでここからは、失業と転職について考えていくことにします。キャリアを形成していくうえでは、どのようにして失業が発生するのか、また自らが従事する産業では転職が頻繁で労働の流動化が進んでいるのかなどを知ることも重要だからです。


① 失業の3分類

失業は、その発生原因によって①需要不足失業(循環的失業)、②構造的失業、③摩擦的失業の3つに分類することができます。それぞれの失業がどのようなことを指しているのかについては、図表3を見てみましょう。


図表3 失業の3分類
分類 説明
①需要不足失業
(循環的失業)
景気後退期に労働需要が減少することで生じる失業。景気循環が関係しているため、循環的失業とも呼ぶ。
②構造的失業 労働市場の需要と供給の(数の)バランスはとれているが、企業が求める人材と求職者の持っている特性など(職業能力や年齢等=質)が異なることにより生じる失業。
③摩擦的失業 転職や新規の就職をする際に、企業と求職者の持つ情報が不完全であり、両者が合意するまでに時間・コストがかかるために生じる失業。

失業と一口に言っても、3つのタイプがあるのですね。需要不足失業はイメージしやすいのですが、どうも私には構造的失業と摩擦的失業がイメージしにくいと感じます。


そうかもしれないですね。失業率などのデータ上、実際には構造的失業と摩擦的失業を明確に区別することは難しく、両者を合わせて「ミスマッチ失業」と呼ぶこともあります。


そう言われるとイメージしやすくなりました。構造的失業と摩擦的失業は、求人者と求職者の間のミスマッチが引き起こす失業なのですね。


失業の分類が分かったところで、図表4を見てみましょう。これは、いわゆるUV分析と呼ばれる手法で、「完全失業率」を「均衡失業率」と「需要不足失業率」の2つに分解したものです。ここで言う均衡失業とは、前述のミスマッチ失業のことだと捉えてください。なお、UV分析のUは失業(Unemployment)、Vは欠員(Vacancy)のことです。


図表4 完全失業率、均衡失業率、需要不足失業率
完全失業率、均衡失業率、需要不足失業率

※統計値は、総務省「労働力調査」、厚生労働省「職業安定業務統計」
※基準線(0%)上の目盛線は各年の第1四半期を示す
※グラフ右端の数字は、2018年第1四半期のもの

資料:労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計フォローアップ(2018年7月4日掲載)」

図表4を拡大表示するにはここをクリック

2018年第一四半期の完全失業率は2.45%ですが、これを分解してみると、均衡失業率は2.88%、需要不足失業率は-0.43%となっています。つまり、2018年7月現在、労働需要が労働供給を上回る人手不足の状況では、需要不足を要因とする失業ではなく、ミスマッチを要因とする失業が生じていると言えます。


需要不足失業率は、景気の好転とともに改善していることが分かりますが、均衡失業率はなかなか改善されていないですね。


均衡失業率(ミスマッチ失業率)は、景気が好転しても改善しにくいという特徴があります。均衡失業率の改善には、求職者と求人者の間で生じる、職業能力、労働条件、情報等のミスマッチを解消していく必要があります。


② 産業別転職率

最後に、転職率について触れて、今回の講義を終了することにします。次の図表5は、産業別の転職率を示したものです。なお、転職率が高ければ転職が頻繁であり、労働の流動化が進んでいると言えます。


図表5 産業別転職率
産業別転職率

※転職率=転職者÷就業者
※転職者=前職のある就業者のうち、前職の産業が同産業である過去1年間に離職を経験した者

資料:労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2017」表11-3より作成(統計値は総務省「労働力調査」)

図表5を拡大表示するにはここをクリック

これを見ると、2016年の産業別転職率は、「宿泊業、飲食サービス業」が9.1%で最も高く、「産業計」では4.8%となっています。


産業によって転職率も異なるのですね。性別や年齢による違いはありますか?


はい。ここでは詳細なデータは示しませんが、男女とも若い年齢階級で転職率が高く、年齢階級が上がるにつれて低くなっていきます。例えば、2016年の年齢階級別転職率は、男女とも「15~24歳」が10%以上で、「年齢計」の2倍以上になっています。


年齢が若いほど転職が活発なのですね。今回の講義を聞いて、長期的にキャリアを形成していくには、自分のしたい仕事に向かって真っすぐ走り続けるだけでなく、労働市場や産業といった世の中の動向を注意深く観察しながら、変化に柔軟に対応していくことも重要なのだと感じました。
教授、本日はありがとうございました。



今回の連載内容は、2017年5月12日の講義を参考に執筆しました。
東京労働大学講座「失業、転職とキャリア形成」(南雲智映 東海学園大学経営学部准教授)

※東京労働大学講座は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が毎年度開催している、労働問題に関する知識の普及や理解の促進を目的とした講座です。今年度で66回目を数え、これまでの修了者は27,000人を超える歴史と伝統を誇る講座です(2018年1月時点)。


本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(特定社会保険労務士)
古川賢治(社会保険労務士・中小企業診断士)

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