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「2015年の日本経済と春季賃金改定の見通し」(2015.2)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 藤田隼平
(2015年2月17日(東京)18日(大阪)・春季定例研究会ブックレット「春季賃金交渉関連データ」より)

【景況分析と賃金、賞与の動向】

●2015年の日本経済

 2014年の日本経済は消費税率引き上げに大きく影響を受けた1年であった。
  14年3月末にかけては、増税前の駆け込み需要が個人消費を中心に盛り上がっていたが、生産にはすでに駆け込みの反動が現れ、1月をピークに減少基調が続いた。
 さらに、4月に消費税率が引き上げられると個人消費を中心に経済活動が急速に落ち込み、しばらく景気は悪化する状態が続いた。
 内閣府による公式発表を待たねばならないが、景気動向指数の動きから判断すると、日本経済は14年1月を景気の山として8月にかけてミニ景気後退に陥っていた可能性が高い。
 とはいえ、その後の国内景気は、夏場から秋口にかけて下げ止まり、足元では緩やかな持ち直しへ向かっている。

 回復が遅れていた個人消費であったが、総務省「家計調査」によると、9月以降、緩やかな増加傾向に復している。
 夏場の天候不順の影響が一巡したことに加え、消費税率引き上げによる反動減の影響が徐々に和らいだことが要因だと考えられる。
 同様に企業の生産活動も底を打っており、経済産業省「鉱工業生産指数」の動きを見ると、8月以降、均してみれば持ち直しの動きが続いている。
 また、伸び悩んでいた輸出も、6月を底に、電子部品デバイスや一般機械類などを中心に増加基調にある。

 こうして、消費、生産、輸出の持ち直しによりミニ景気後退から脱した日本経済は、15年には持ち直していくことになりそうだ。

 まず、個人消費は緩やかな持ち直しを続けると見込まれる。
 消費税率引き上げによる実質所得の減少が依然として消費の抑制要因となっているが、一人あたり賃金の上昇と物価上昇率の低下が進む中で、その影響は徐々に薄らぐと考えられる。
 住宅投資も着工が緩やかに持ち直しへ向かう中で、今後は17年4月の消費税率10%への引き上げも意識されはじめることから、徐々に持ち直しへ向かうと期待される。
 14年度補正予算で計画されている住宅エコポイント制度の再開や住宅ローン金利の優遇拡充といった各種対策も、住宅需要を喚起する要因となるだろう。

 企業の設備投資については、業績の改善が続いていることもあって、これまで先送りされてきた投資が徐々に実行に移されている。
 今後、内需が持ち直すことで投資環境はさらに改善すると見込まれ、設備投資は緩やかに増加すると考えられる。

 一方、これまで景気を下支えしてきた公共投資は、逆に減少に向かうと見込まれる。
 14年度補正予算が組まれる予定ではあるが、その効果を織り込んでも予算規模は前年度比で縮小する可能性が高く、公共投資が増加を続けることは難しいとみられる。
 また、輸出についても、製造業を中心とした海外生産拠点の拡大などが影響し、増加テンポは緩やかなままの可能性が高い。

 実質GDPは14年10~12月期に増加に転じ、その後も増加傾向で推移することになるだろう。
 しかし、14年度の実質GDP成長率は-0.8%と上期の低迷を下期の持ち直しで挽回できず、リーマン・ショックのあった08年度以来のマイナス成長となる見込みである。
 もっとも、続く15年度には+1.5%とプラス成長に転じよう。

●春闘を取り巻く環境

 春闘の行方を占う上で重要な、企業業績、物価、雇用情勢について足元の状況を整理しておこう。

 まず、企業業績である。財務省「法人企業統計調査」によると、2014年度上期の経常利益は上期としては過去最高益となった。
 製造業、非製造業ともに13年度下期からは減益となったものの、ともに前年比では増加した。
 企業の規模別に見ても、大企業、中小企業ともに前年を上回る水準となっており、増税後に景気が弱含む中でも、経常利益は高水準を維持している。
 ただし、大企業は過去最高益となった一方、中小企業はまだリーマン・ショック前の水準に届いておらず、業績の改善度合に違いが見られる。
 また、業種による業績差は鮮明で、回復が遅れていた家計部門に近い業種、例えば、製造業では食料品や輸送用機械製造業、非製造業では卸・小売業などの業績が不振であるのに対し、企業や政府部門に近い業種、例えば、製造業では生産用機械やはん用機械といった一般機械類製造業、非製造業では建設業や不動産業などの業績は好調である。

春闘イメージイラスト2.png

 先行きを展望すると、14年度下期は大企業、中小企業ともに前年比で減益が計画されているが、年度で見ると、輸出企業の多い大企業は増益、内需型の中小企業は減益という分かりやすい構図となっている(日銀短観12月調査)。
 足元でドル円相場は企業の想定より円安方向に振れており、12月調査から大企業では上振れ、中小企業では下振れるリスクがあるものの、同時に原油安が進んでいるため、円安のデメリットはかなり相殺されると期待される。
 ただし、円安や原油価格下落の効果は、業種や企業の規模などによって影響度合いが異なることから、これまで以上に企業間の格差が広がる可能性がある。

 次に物価であるが、日本銀行がターゲットとする消費者物価(生鮮食品を除く総合)の上昇率は、消費税率引き上げによる影響を除くと、14年11月時点で前年比+0.7%となっている。
 上期の平均的な伸び率が同+1.2%程度であったことを踏まえると、明らかに伸び率は縮小している。
 この主因は原油価格の下落であるが、現在でも下げ止まっていないことから、少なくとも15年中は物価の伸びが抑えられる可能性が高い。

 最後に雇用情勢を確認すると、増税後に国内景気が低迷する中でも、雇用情勢は良好な状態が維持された。
 14年12月時点で、失業率は3.4%とかなり低く、有効求人倍率も1.15倍とバブル景気の余韻が残る92年並みの高水準にある。
 今後、景気の持ち直しとともに労働需要はさらに増加するのに対し、就職件数は雇用のミスマッチの問題もあって徐々にしか増えない可能性が高いことから、企業の人手不足感はますます強まると考えられる。
 そのため、特に人手不足感の強い中小企業を中心に、労働者の確保・定着のための賃上げ圧力がさらに強まると予想される。

●2015年春闘における賃金改定の見通し

 厚生労働省の調査によると、2014年の民間主要企業の賃上げ率は2.19%(前年差+0.39%ポイント)と高い伸びとなった。
 同調査で賃上げ率が2%を超えるのは、01年以来13年ぶりのことである。
 賃上げ率は定期昇給分とベア相当分に分解できるが、近年の定期昇給分は1.7~1.8%と推計されるため、ベア相当分は0.4~0.5%程度であったことになる。

 こうした賃上げの動きは大企業以外にも波及しており、経済産業省の調べによると、14年は実に64.5%の中小企業が賃上げ(定期昇給を含む)を行ったとされる(13年は56.8%)。
 連合ベースでは、14年の賃上げ率2.07%(前年差+0.36%ポイント)のうち、組合員300人以上の企業では2.12%(同+0.37%ポイント)、300人未満の企業では1.76%(同+0.23%ポイント)と差はあるものの、両者ともに上昇している。

 15年春闘についてもベア実施への期待度は高く、連合は定期昇給分以外に2%以上のベアを求めていく方針である。
 これに対し、企業側を代表する経団連も「ベースアップは賃金を引き上げる場合の選択肢の一つ」としてベアを容認する態度を示すなど、企業に対して積極的な賃上げを促す姿勢を見せている。
 また、昨年末に開かれた政府、企業、労働者の各代表による「政労使会議」の場で、安倍首相は、「賃上げの流れを来年、再来年と続けていき、全国津々浦々にアベノミクスの効果を浸透させていきたい」と述べるなど、賃上げに向けて最大限の努力を払うよう経済界に対して要請を行っている。

 もっとも、賃上げが実施されるにしても、連合が掲げるベア2%以上(定期昇給分を含めると4%以上)の実現は難しいと考えられる。
 経団連は、大企業を中心に昨年並みかそれを上回る賃上げが期待できるとしながらも、消費者物価の上昇率が縮小する中でベア2%以上という連合の要求は高すぎるとの見方を示している。
 また、企業が賃上げを行う際に重視する直近の業績も、14年度は大企業製造業を中心に過去最高益が見込まれるとはいえ、それはあくまで企業間の差を均して見た結果であり、実態はまだら模様の様相を呈している。

 結果的に、15年春闘は企業側が労働組合側の要求をある程度受け入れる形で決着する可能性は高いものの、賃上げ率は14年並みか、それをやや下回る水準に落ち着くと見込まれる。
 もちろん、労働者の確保・定着の観点から賃上げ圧力が強まる中、業績の悪い企業でも世間相場を意識してベア実施に踏み切る可能性は少なからずある。
 しかし、そうしたことができるのは財務に余力のある大企業を中心とした一部の企業にとどまるだろう。
 業績が持続的に改善しないうちは、中小企業が本格的な賃上げに踏み切るのは難しいとみられる。

【景況分析と賃金、賞与の動向】は、プライムコンサルタントが主宰する「成果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介するものです。

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