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2017年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2017.11)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 土志田るり子
(2017年11月8日秋季定例研究会ブックレット「2017年 年末一時金関連データ」より)

【景況分析と賃金、賞与の動向】

(1)日本経済の現状と今後の展望

 2016年9月に内閣府が発表した17年4~6月期の実質GDP成長率は、前期比+0.6%(年率換算+2.5%)となった。6四半期連続のプラスであり、景気の持ち直しが続いている。また、伸び率は過去6四半期で最も高くなった。
 需要項目別では、個人消費の寄与度が最も高かった。伸び率は前期比+0.8%と、消費税率引き上げ前の駆け込み需要で高まった14年1~3月期を除けば、13年4~6月期以来の高さである。
 雇用者の増加によって家計部門全体の所得が増加していることや、雇用情勢の改善や株価の持ち直しが消費者マインドを改善させていることが消費の増加につながったと考えられる。
 企業部門では、人手不足の深刻化や労働時間短縮の流れを受けて省人化投資や情報化投資へのニーズが強まっており、設備投資が前期比+0.5%と増加基調を維持した。企業業績が順調に拡大しており、企業の手元資金が潤沢であることも設備投資を押し上げたとみられる。
 さらに、政府部門では、16年度補正予算の執行による押し上げ効果もあり、公共投資(公的固定資本形成)が同+6.0%と急増した。
 以上を合わせた内需全体の前期比寄与度は+0.9%となり、なかでも民需の寄与度が+0.6%と全体をけん引した。
 一方、外需は寄与度が▲0.3%と、6四半期ぶりのマイナスとなった。輸出はスマートフォンの部品類などを含む電子部品・デバイスを中心に1~3月期まで増加が続いたが、その動きが一服したこともあり、4~6月期は前期比▲0.5%と減少した。
 景気の持ち直しは7~9月期以降も続く見込みである。ただし、4~6月期の高い伸び率を維持することは難しく、実質GDP成長率は年度末にかけて鈍化していくだろう。
 個人消費は、雇用者の増加による家計所得の拡大が引き続きプラス要因となるが、一人当たり賃金の伸びが鈍い中で4~6月期のような高い伸びが続くことは見込みがたく、伸び率は次第に鈍化すると考えられる。
 一方、設備投資は、業務の効率化のための投資などを中心に増加基調を維持し、景気の下支え役となるだろう。
 公的部門では、政府消費が緩やかに増加していく一方、公共投資は16年度補正予算による押し上げ効果が4~6月期にピークに達した可能性があり、7~9月期以降は減少に転じると見込まれる。
 このように、7~9月期は4~6月期の伸びを維持できない需要項目があるとみられ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは17年度下期の成長率は、上期の前期比+1.1%に対して同+0.3%に鈍化すると予想している。
 それでも、年度初めの成長率が高かったため、17年度通期では前年比+1.4%に達し、16年度の同+1.3%を上回る見込みである。

(2)冬のボーナスを取り巻く環境

 2017年冬のボーナスを取り巻く環境を確認するため、企業業績と雇用情勢について、足元の動向を整理しておこう。
 経営環境の改善により、17年4~6月期の経常利益は22.4兆円(前年比+22.6%)と大幅に増加し、四半期ベースで過去最高を更新した(財務省「法人企業統計」)。3四半期連続の増益であり、企業業績は好調が続いている。
 業種ごとの動向を見ると、製造業では、内外需要が持ち直している「化学」や、スマートフォンや自動車向けの電子部品等の需要が伸びている「電気機械」を中心にほとんどの業種で増益となり、前年比+46.4%の大幅な伸びとなった。また、非製造業も、需要が堅調な「建設業」や「運輸業、郵便業」などを中心に、同+12.0%と増加した。
 業績拡大は17年度下期も続くと見込まれる。内外需要の回復を受けて売上高が持ち直すことや、これまでのリストラ効果で高収益体質が維持されてきたことが業績を押し上げるだろう。17年度通期では、製造業を中心に5年連続で過去最高益を更新すると予想される。
 雇用情勢は、企業活動の活発化に加え、趨勢的な生産年齢人口(15歳~64歳)の減少や残業時間の短縮などの要因により、労働需給の引き締まりが続いている。足元では女性や高齢者を中心に労働力人口が増加する中、完全失業率が2.8%まで低下し、有効求人倍率も8月は1.52倍と1974年3月以来43年ぶりの高さになっている。
 また、正社員に限った有効求人倍率は6月に1.01倍となり、調査が始まった2004年以来、初めて1倍を超えた。仕事を探す人の数よりも募集人数のほうが多く、仕事を選ばなければフルタイムの職を探している全員が正社員として就職できる状況である。
 このような労働需給のひっ迫を反映して、パート労働者の時間当たり給与は8月に前年比+2.1%となるなど高い伸びが続いている。
 一方で、一般労働者の賃金上昇率は前年比+1.0%に満たない低い水準での推移となっている。
 雇用の流動性が低いわが国において、正社員の賃金を大きく左右するのは春季労使交渉における定期昇給やベースアップであり、有効求人倍率が1倍を超えても、すぐに賃金上昇率が高まることはないのである。
 17年度下期も労働需給はタイトな状態が続くと見込まれるが、賃金は引き続き緩やかな伸びにとどまるだろう。それでも、ボーナスの算定基準となることの多い基本給が小幅に増加していることは、冬のボーナス支給額の増加に寄与すると見込まれる。

(3)2017年冬のボーナスの見通し

 企業業績の拡大が続き、労働需給がひっ迫している状況にありながら、17年夏のボーナスは前年比マイナスとなった模様である。
 厚生労働省「毎月勤労統計調査」による17年夏のボーナスの結果は本稿執筆時点では公表されていないものの、支給が多い6~7月の特別給与の動きを月次統計で確認すると、前年比▲1.0%と減少している。
 その他の統計を確認すると、大企業を対象にした厚生労働省「民間主要企業夏季一時金妥結状況」で、平均妥結額が82.5万円(前年比▲2.18%)と減少したほか、経団連が発表した大手企業の夏季賞与・一時金平均妥結額も87.8万円(前年比▲2.98%)と減少した。
 業種別には、製造業では「自動車」、「電機」などを中心に89.1万円(同▲4.89%)と減少した一方、非製造業では「商業」が前年を上回り、83.9万円(同+5.92%)と増加した。さらに、中小企業が多く含まれる連合の調査でも、17年夏季一時金の最終回答額は67.7万円(前年比▲10.1%)と減少している。
 企業業績の拡大が続いているにもかかわらず夏のボーナスが減少したのは、16年度上期の業績が低調だったことが要因であろう。既に1年以上前のことであるが、16年6月に英国のEU離脱をめぐる国民投票を契機に円高が進み、製造業の業績が大きく押し下げられた。
 11月の米国大統領選挙後は円安が進んだものの、夏のボーナスについての交渉が行われた春闘の時点では、米国通商政策の先行き不透明感や、再び円高が進む懸念があり、支給額を下押ししたとみられる。
 こうした中、17年冬のボーナスは、前年の前年比▲0.1%に対し小幅増加となる見通しである。連合の調査によると、春闘で1年間のボーナス支給額を決める企業において、17年の平均支給額は前年比+0.2%と小幅増加の回答となっている。夏の支給額は前年比マイナスとなったものの、17年冬のボーナスは増加する可能性がある。
 また、中小企業には「季別」で支給額を決める企業も少なくなく、業績の改善した16年度下期以降の実績が反映されることで、年末の支給額を押し上げるだろう。
 大企業については、「夏冬型」の企業が多いことから年末のボーナスも前年比マイナスとなり、支給額の平均を下押しすると予想される。しかし、足元で労働需給は非常にタイトになっており、引き続き人手不足が深刻な非製造業の一部業種では、夏同様、支給額が引き上げられるだろう。

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