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「2018年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2018.6)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 土志田るり子
(2018年6月6日(東京)夏季定例研究会ブックレット「夏季一時金関連データ」より)

【景況分析と賃金、賞与の動向】

●日本経済の現状と2018年度上半期の展望

 2018年1~3月期のGDP成長率は前期比-0.2%(年率換算-0.6%)と、9四半期ぶりに前期比マイナスとなった。
 マイナス成長となった第一の理由は、個人消費が前期比小幅マイナスとなったことである。天候不順の影響で生鮮野菜の価格が急騰したことから、実質での支出が抑制されたことに加え、携帯電話や自動車などを中心に、他の支出が手控えられた。
 第二の理由は、これまでけん引してきた企業部門において、設備投資も前期比でマイナスになったことである。企業の設備投資意欲は衰えていないものの、これまで高い伸びが続いていただけに、スピード調整の動きが出たものと考えられる。
 もっとも、マイナス成長は景気回復が維持される中での一時的な現象であり、景気後退局面入りを意味するものではない。景気の回復は18年度上期も続くと見込まれ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、18年度上期の実質GDP成長率は、17年度下期の前期比+0.3%に対し、同+0.4%になると予測している。
 4~6月期以降の個人消費は、足元で生鮮野菜の価格が安定してきていることや、気温の高い日が多いことが追い風となり、復調が期待される。就業者の増加や賃金の緩やかな上昇など、雇用・所得情勢の改善が続くことも押し上げ要因となるだろう。
 また設備投資についても、企業の手元キャッシュフローが潤沢であることや、先行する機械受注の増加が続いていることから、4~6月期以降も底堅い推移が見込まれる。
 2020年のオリンピック開催に向けたインフラ建設や、首都圏での再開発案件の増加などが押し上げ材料となる。また、海外経済の回復が継続することを背景に、輸出の増加が続くと予想される。
 なお、景気の下振れリスクは、主に海外の政治経済動向にある。米国トランプ政権の通商政策をめぐる対立の激化、米国での金利上昇による国際金融市場の混乱、北朝鮮や中東情勢の緊迫化や、原油価格の一段の上昇などが原因で世界経済が減速し、輸出の拡大にブレーキがかかる懸念がある。また、国内では一部の業種で人手不足による供給制約が発生しており、これが深刻化すれば、景気の拡大が阻害されるリスクがある。

●夏のボーナスを取り巻く環境

 2018年夏のボーナスを取り巻く環境を確認するため、企業業績と雇用情勢について、足元の動向を整理しておこう。
 経営環境の改善により、足元では企業の経常利益の増加が続いている。財務省「法人企業統計」によると、17年10~12月期の経常利益は20.9兆円(前年比+0.9%)と増加した。
 業種別に見ると、製造業では前年比+2.5%と増加したものの、伸びは7~9月期(同+44.0)から大きく縮小した。内外の景気回復を背景に需要が堅調な「生産用機械」や「はん用機械」のほか、半導体等電子部品の需要が伸びている「電気機械」で大きく増加したが、「業務用機械」や「金属製品」などでは前年から減少した。
 一方、非製造業の経常利益は前年から横ばいにとどまった。燃料価格や人件費の上昇によるコスト増の影響がはく落した「電気業」のほか、需要の強い「情報通信業」、「物品賃貸業」などで増加した一方で、資材価格や人件費などのコストが上昇しているとみられる「建設業」や「卸売業、小売業」で減益となった。
 次に、雇用情勢を見ると、趨勢的な生産年齢人口(15歳~64歳)の減少や残業時間の短縮などの要因に加えて、経営環境の改善による労働需要の高まりにより、足元の完全失業率が2.4~2.5%となるなど労働需給は一段と引き締まっている。実際に企業の人手不足感も強くなっており、「日銀短観」の雇用判断DIは、大企業、中小企業ともに不足感が強まった。
 そのような状況を反映し、パート労働者の時間当たり給与は前年比+2.0%前後の高い伸びとなっている。一方、賃上げに労使交渉が必要な一般労働者の所定内給与については、17年末までは前年比+1.0%に満たない低い水準が続いてきたが、足元で徐々に伸びが高まっている。
 18年の春闘では5年連続のベースアップが実現したとみられ、ボーナスの算定基準となる基本給の増加を通じて、夏のボーナス支給額を押し上げるだろう。
 また、18年の春闘では、多くの企業において非正規雇用者の待遇改善が議論された。背景には、16年12月に「同一労働同一賃金」ガイドライン(指針)案が示されたことや、雇用形態の違いによる待遇の不合理な格差について、複数の訴訟で違法判決が出たこと、さらに、人手不足が深刻化する中、非正規雇用者の処遇改善が人材の流出防止につながるといった、企業側の事情もあるとみられる。
 待遇改善の内容の1つとして、これまでボーナスを支給していなかった非正規雇用者にも、支給対象範囲を拡大することが挙げられ、これはボーナス支給額の平均を押し上げると考えられる(※1)
 また、パートにやりがいを持って働いてもらうために、パートの中にもレベルを設け、責任や経験にあわせてボーナスを支給するような企業が増えれば、支給ボーナスの総額を押し上げるであろう。


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●2018年夏のボーナスの見通し

 厚生労働省「毎月勤労統計調査」ベースで見た民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)の2018年夏のボーナスの一人あたり平均支給額は37万1,010円(前年比+1.2%)と3年連続で増加すると予測する。前述のとおり、基本給(所定内給与)の増加が夏のボーナスを押し上げる要因となる。また、春季労使交渉において、「年収ベース」での賃上げを念頭に一時金の引き上げに応じた企業があったことも、ボーナス支給額の増加につながると考えられる。
 業種別では、製造業の平均支給額は50万9,931円(前年比+2.3%)と堅調に増加するだろう。17年に輸出企業を中心に業績が改善したことが、ボーナス支給額を押し上げる要因になると考えられる。
 なかでも中小企業では、これまでの業績改善の効果に加え、人手不足が大企業よりも深刻であるとみられることから、ボーナス支給額の伸びが大企業を上回るだろう。非製造業の平均支給額も34万2,442円(同+1.1%)と増加が続くと予想される。製造業よりは小幅な伸びとなるが、需要の底堅い業種のほか、人手不足が深刻な業種では、人材流出を防ぐためにボーナスが引き上げられる可能性がある。
 さらに、ボーナスが支給される事業所で働く労働者の数も増加が続くと考えられる。夏のボーナスの支給労働者数(※2)は4,172万人(前年比+3.2%)に増加し、支給労働者割合(※3)も82.2%(前年差+0.5%ポイント)に上昇しよう。
 結果的に、18年夏のボーナスの支給総額(一人あたり平均支給額×支給労働者数)は、一人あたり平均支給額の伸びは小さいものの、支給労働者数の増加に押し上げられて15.5兆円(前年比+4.5%)に増加する見通しである。17年冬のボーナスに続いて、18年の夏も支給総額が増加することは、個人消費にとって追い風となるだろう。

(※1)ボーナスの金額が低いパート労働者が増加すると、一人あたりの平均支給額は押し下げられる。しかし、厚生労働省「毎月勤労統計」では、ボーナスの平均支給額を計算する際に、ボーナスの総支給額をボーナスが支給される事業所で働く労働者(当該事業所でボーナスの支給を受けていない労働者も含む)の数で割っている。このため、パート労働者であっても、ボーナスの支給対象者が増え、支給総額が増加することが統計上の平均支給額を押し上げることになる。
(※2)ボーナスが支給される事業所で働く労働者(当該事業所でボーナスの支給を受けていない労働者も含む)の数。
(※3)労働者の総数に対して、ボーナスが支給される事業所で働く労働者(当該事業所でボーナスの支給を受けていない労働者も含む)が占める割合。

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