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2018年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2018.11)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 主席研究員 小林真一郎
(2018年11月7日秋季定例研究会ブックレット「2018年 年末一時金関連データ」より)

【景況分析と賃金、賞与の動向】

(1)国内景気の現状と展望

 国内景気は回復している。具体的な景気の動きを実質GDP成長率でみると、2018年1~3月期に9四半期ぶりにマイナス成長に陥ったことで、一時的に先行きに対する懸念が高まったものの、4~6月期には前期比+0.7%(年率換算+3.0%)とプラス成長に復帰し、かつ高い伸び率となったことで、そうした懸念も払しょくされた。
 4~6月期の成長率の内訳をみると、個人消費、設備投資を中心に内需が堅調に伸びている。個人消費は、1~3月期は大雪など天候不順の影響により落ち込んだが、春以降は好天が続いたことや所得が増加していることで持ち直してきた。
 一方、設備投資は7四半期連続で増加しており、金額でみても名目、実質ともに過去最高額を更新した。人手不足に対応するための投資や、生産性を高めるための投資に加え、能力増強などの前向きな投資が増えつつあることが好調の要因である。また、五輪関連需要や研究開発投資の増加も、設備投資を底上げしている。
 これに対し、スマートフォン関連財の低迷、自動車の伸び悩みなどによって輸出は横ばい圏での動きにとどまっており、外需の成長への寄与度はマイナスとなった。 今後も景気回復の動きは維持されよう。
 その原因としては、①後でみるように、賃金の伸び率の拡大と就業者の増加によって家計の所得が順調に増加しており、個人消費が底堅さを維持できること、②海外経済の回復や電子部品・デバイスの堅調な需要を背景に、輸出の持ち直しが期待されること、③五輪関連需要の盛り上がりや、人手不足への対応などから企業の設備投資の増加基調が続くこと、などが挙げられる。
 7~9月期に、西日本豪雨、大型台風の直撃、北海道胆振東部地震などの災害が発生したことで、個人消費や企業の生産活動にマイナスの影響が出たと考えられ、実質GDP成長率が弱い伸びにとどまる可能性がある。しかし、これは一時的な動きであり、災害のマイナス効果が剥落すれば景気回復の勢いも再び高まってくるだろう。
 戦後の景気拡大期間の最長記録は2002年2月から2008年2月までの73ヶ月であるが、2019年1月にはこの記録を更新する可能性が高い。実質GDP成長率でみても、2017年度の前年比+1.6%に対し2018年度は同+1.2%と、4年連続でプラス成長を達成するであろう。
 最大の景気下振れリスクは、トランプ政権の保護貿易政策の強化によって世界経済が悪化し、日本からの輸出が落ち込むことである。中でも米中貿易摩擦の行方が懸念される。その他、米国の金利上昇に伴う新興国通貨下落や国際金融市場の混乱、中東、北朝鮮などの地政学リスク、欧米の政治的混乱なども、世界経済の悪化要因であり注意が必要である。


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(2)企業業績の好調は持続

 続いて、冬のボーナス動向に影響する企業の業績および雇用情勢の状況をみていこう。
 最初に企業業績であるが、順調に拡大している。経常利益(以下、財務省「法人企業統計」ベースで金融業、保険業を除く)は、2017年度に+6.9%と6年連続で増益を達成し、水準では5年連続で過去最高益を更新した。4~6月期においても、経常利益は前年比+17.9%と大きく増加しており、業績拡大の動きは2018年度に入っても続いている。
 業績が好調な理由は、リーマンショック以降、固定費削減を中心に企業がコスト削減努力を続けてきたことで収益力が強化されていることに加え、景気回復を受けて売上高が増加しているためである。中でも製造業では、2018年度入り後に1ドル=110円を超えて円安が進んでいることが、自動車、電気機械などの輸出企業の利益を押し上げている。
 また、非製造業では、需要の強さを背景に建設業、不動産業で好調が維持されているほか、個人消費の回復を背景に個人向けサービス業が好調であり、インバウンド需要の増加によって宿泊業の利益も増加している。一方、小売業、飲食サービス業など、人件費の増加が負担となり苦戦を強いられている業種もある。
 今後は、原油などの資源価格の上昇や人件費の増加などによってコストが増加し、増益ペースが鈍る可能性がある。それでも、国内外の底堅い需要を受けて売上高の拡大傾向が維持されることから、年度下期も増益傾向は続くだろう。このため、2018 年度通期の経常利益は前年比+6.9%と7年連続で増益を達成し、6年連続で過去最高益を更新すると予想される。

(3)雇用需給はさらにタイト化へ

 次に雇用情勢であるが、改善が続いている。生産年齢人口(15歳~64歳人口)の減少という構造要因に加え、景気回復という循環要因を背景に、労働需給は極めてタイトな状態にある。完全失業率(季節調整値)は18年4~6月期に2.4%まで低下したが、これは93年7~9月期以来の低水準である。また、厚生労働省「一般職業紹介状況」の有効求人倍率(パートタイム含む、季節調整値)も4~6月期は1.60倍と、73年10~12月期以来の高さにある。
 こうした雇用情勢の改善は、景気が持ち直していく中で今後も続くと考えられ、企業の人手不足感はさらに強まるとことが予想される。人手不足感は大企業よりも中小企業でより強く、特に非製造業において深刻な状態にある。人手不足の解決策として、競合他社との連携、AI(人工知能)の導入、外国人技能実習制度の利用といった様々な手段も取り入れられているが、抜本的な解決には至っていない。このため、事業内容の絞り込み、営業時間の短縮、店舗の閉鎖といった業務の縮小を迫られつつある業種もあり、中小企業の中には事業継続を断念せざるを得ないケースも増えている。

(4)2018年の年末賞与の見通し

 以上みてきたように、企業業績の拡大、雇用情勢の改善など、賃金、所得を取り巻く環境は雇用者にとって良好な状態にあり、実際に様々な統計でそれを確認することができる。
 まず、厚生労働省「毎月勤労統計」の一人当たり賃金(現金給与総額)の伸び率をみると、17年度の前年比+0.7%に対し、18年4~8月までの前年比伸び率は+2.3%まで高まっている。夏季賞与の含まれる6、7月の数字が高かった影響もあるが、同時期の所定内給与の伸びも同+1.3%に上昇しており、固定費が膨らむことに慎重だった企業の姿勢が変わりつつあることがうかがえる。
 こうした状況下、夏季賞与の支給額も高い伸びとなった可能性が高い。経団連が発表した18年夏季賞与・一時金の最終集計結果をみると、大手企業の総平均妥結額(全産業、加重平均)は17年度の前年比-2.98%に対し同+8.62%と大幅に増加した。
 また、厚生労働省発表の民間主要企業夏季一時金妥結状況によれば、前年比+5.52%と前年の同-2.18%からプラスに転じた。さらに、中小企業が多く含まれる連合の調査においても、18年夏季一時金の最終回答額(季別・夏冬型の夏分、全産業、加重平均)は前年比+7.3%と順調に増加している。
 最後に、厚生労働省「毎月勤労統計」でも、夏のボーナスが含まれる特別給与は6~8月に前年比+4.4%と堅調に増加した。17年の同時期の伸びは-0.7%であったので、大幅な改善である。
 18年の年末賞与も、夏に続いて順調に増加するであろう。固定費である所定内給与の底上げを実施するよりも、変動費の性格のある賞与の方が増加に踏み切りやすいという経営の事情もあるが、一定の労働力を確保し、企業活動を維持していくためには、ある程度のコストの増加も容認せざるを得ない状況にあることも確かである。
 また、大企業については、「夏冬型」の企業が多いことも、順調な増加が見込まれる一因である。中小企業では「季別」で支給額を決める企業もあるが、業績の改善が続いており、年末賞与を引き上げる余裕のある企業が増えている可能性がある。

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