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「2017年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2017.6)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 土志田るり子
(2017年6月6日(東京)夏季定例研究会ブックレット「夏季一時金関連データ」より)

【景況分析と賃金、賞与の動向】

●日本経済の現状と2017年度上半期の展望

 2017年1~3月期のGDP成長率が前期比+0.5%(年率+2.2%)と、5四半期連続のプラスとなるなど、日本経済は緩やかに持ち直している。
 景気をけん引しているのは輸出で、世界景気の回復を背景に、スマートフォンやサーバー向けの半導体等電子部品のほか、建設機械や半導体製造装置といった一般機械類の輸出が伸びている。国内でも、自動車や白物家電など、耐久消費財の需要が回復しており、足元では製造業の生産活動が活発になっている。また、維持・更新投資、人手不足を補うための投資や、研究・開発投資など、企業の設備投資も緩やかに増加している。
 16年10~12月期に前期比+0.0%と伸び悩んだ個人消費は、17年に入って明るい動きが見え始めた。
 16年末からの新車販売の好調に加え、足元では衣料品の購入などが伸びている。16年秋から冬にかけて高騰した生鮮食品の価格が落ち着いたことや、消費者マインドが改善していることも、プラス要因として効いている。
 景気の持ち直しは17年度上期も続くだろう。三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、16年度下期の前期比年率+1.5%の成長に対し、17年度上期は同+1.8%の成長になると予測している。企業業績の改善を受けて設備投資の緩やかな増加が続くと予想されるほか、引き続き、世界景気の回復が輸出や生産を押し上げるだろう。秋に新型スマートフォンの発売が予定されていることも、電子部品の輸出を押し上げると期待される。
 さらに、遅れている16年度補正予算の執行によって、17年度上期の公共投資が増加することも景気回復に寄与するだろう。個人消費は、当面は足元の明るさが続くと見込まれるが、所得の増加ペースが鈍い状態が続くため、急増は見込み難い。一方、住宅は16年度に相続税対策とみられる貸家の着工件数が急増したため、17年度はその反動で着工件数が減少し、住宅投資は減少基調に転じると予想される。
 なお、景気の下振れリスクは、主に海外の政治経済動向にある。米国では引き続き、トランプ大統領の政権運営に対する先行き不透明感が強く、市場の混乱につながる可能性がある。また、日米の通商関係が悪化したり、中国をはじめとする新興国・資源国景気が減速すれば、足元の輸出の伸びにブレーキがかかると懸念される。

●夏のボーナスを取り巻く環境

 2017年夏のボーナスを取り巻く環境を確認するため、企業業績と雇用情勢について、足元の動向を整理しておこう。
 経営環境の改善により、16年10~12月期の経常利益は20.8兆円(前年比+16.9%)と大幅に増加した(財務省「法人企業統計」)。製造業では、ほとんどの業種で増益となり、前年比+25.4%の大幅な伸びとなった。また、非製造業も、需要が堅調な「建設」や「不動産業」などを中心に、同+12.5%と増加した。16年度の経常利益は過去最高を更新したとみられるが、業績改善は17年度も続くだろう。
 内外需要の回復を受けて売上高が持ち直すことや、これまでのリストラ効果で高収益体質が維持されてきたことが業績を押し上げるとみられる。ただし、資源価格の上昇による材料費の値上がりや人件費の増加が、利益拡大の重石となる可能性がある。
 次に、雇用情勢を見ると、趨勢的な生産年齢人口(15歳~64歳)の減少や残業時間の短縮などの要因により、労働需給は引き締まりが続いている。足元では、経営環境の改善により労働需要がさらに高まっており、女性や高齢者を中心に就業者は増加しつつも、完全失業率は2.8%に達している。これは1994年以来、実に22年ぶりの低い水準だ。当然、企業の人手不足感は強いのだが、一方で、賃金の伸びは鈍い。
 パートタイムに限れば、時間当たり給与は前年比2%台の伸びが続いているが、一般労働者の所定内給与(基本給)の伸びは1%にも満たず、過去に同程度まで人手不足感が強まった時期と比べても、賃金の伸びは鈍いと言わざるを得ない。
 先行き、17年度も賃金の伸びは緩やかにとどまるだろう。この先1年間の賃金を左右する17年の労使交渉(春闘)において、賃上げ率が16年を下回ったとみられるためである。それでも、ボーナスの算定基準となることの多い基本給がわずかながらも増加することは、夏のボーナス支給額の増加に寄与する。

●2017年夏のボーナスの見通し

 厚生労働省「毎月勤労統計調査」ベースで見た民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)の2017年夏のボーナスの一人あたり平均支給額は36万8,272円(前年比+0.9%)と2年連続で増加すると予測する。
 前述のとおり、基本給(所定内給与)が小幅ながらも前年比で増加していることが、夏のボーナスを押し上げる要因となる。また、17年の春闘では、固定費の増加になるベースアップに慎重な姿勢を示す企業があったため、経団連が賞与・一時金引き上げを含めた「年収ベース」での賃上げを検討するよう呼びかける場面があった。数は多くないが、実際に賞与の増額で対応する企業もあるとみられ、これらがボーナスの平均支給額を押し上げると考えられる。

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 さらに、16年12月に「同一労働同一賃金」ガイドライン案が策定されたことも、今年の夏のボーナス支給額の増加に寄与する可能性がある1。ガイドライン案によれば、正社員と非正規社員が同じ業務を遂行している場合には、賞与も同様に支給する必要がある。
 現時点では、これを守らなかったことで行政処分を受けることはないが、人手不足が深刻化する中、人員確保を狙って前倒しで社内規則の整備を進め、賞与の支給対象者を増やす企業があっても不思議ではない。
 また、ガイドライン案と関係なく、パート社員にもやりがいを持って働いてもらうために、仕事をレベル分けして責任や経験に応じて賞与を支給するような企業が増えれば、ボーナス支給額を押し上げると考えられる。
 業種別では、製造業の平均支給額は51万1,217円(前年比+2.8%)と堅調に増加するだろう。輸出企業を中心に、16年度下期以降の業績改善が夏のボーナス支給額のプラス要因になると考えられる。
 また、中小企業にも円安進展や海外需要増加の効果が波及し、ボーナス支給額の伸びは大企業よりも高くなると予測する。非製造業の平均支給額も33万8,758円(同+0.6%)と増加が見込まれる。製造業よりは小幅な伸びとなるが、需要の底堅い業種を中心に増加が続くと見込まれる。
 雇用者数が増加する中で、ボーナスが支給される事業所で働く労働者の数も増加すると考えられる。
 夏のボーナスの支給労働者数2は4,140万人(前年比+3.0%)に増加し、支給労働者割合3も82.6%(前年差+0.4%ポイント)に上昇しよう。結果的に、17年夏のボーナスの支給総額(一人あたり平均支給額×支給労働者数)は、一人あたり平均支給額の伸びは小さいものの、支給労働者数の増加に押し上げられて15.2兆円(前年比+3.9%)に増加する見通しである。
 16年冬のボーナスに続いて、17年の夏も支給総額が増加することで、足元で緩慢な持ち直しが続く個人消費にとってはプラス材料となるだろう。

1 パート労働者のボーナスの金額は一般労働者より低く、通常、パート労働者のボーナス支給対象者が増加すると、一人あたりの平均支給額を押し下げる。しかし、厚生労働省「毎月勤労統計」では、ボーナスの一人あたり支給額を計算する際に、ボーナスの総支給額を、ボーナスが支給される事業所で働く労働者(当該事業所でボーナスの支給を受けていない労働者も含む)の数で割っている。このため、パート労働者であっても、ボーナスの支給対象者が増え、支給総額が増加することが統計上の一人あたり支給額を押し上げることになる。
2 ボーナスが支給される事業所で働く労働者(当該事業所でボーナスの支給を受けていない労働者も含む)の数。
3 労働者の総数に対して、ボーナスが支給される事業所で働く労働者(当該事業所でボーナスの支給を受けていない労働者も含む)が占める割合。

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