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「景気持ち直しは消費税率引き上げ後も続くのか?~2014年度日本経済ならびに春季賃金改定の見通し」(2014.2)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 尾畠未輝
(2014年2月18日(東京)20日(大阪)・春季定例研究会ブックレット「春季賃金交渉関連データ」より)

【景況分析と賃金、賞与の動向】

●消費税率引き上げ後も景気の底割れは回避できる見込み

 「目指すは経済の好循環、収入アップの実現」と首相が年頭記者会見で述べたように、賃金の動向に対する注目が一段と高まっている。

 2013年はアベノミクスの一挙手一投足が脚光を浴びる中、1年間で対ドルレートは約2割の円安、株価は約6割の上昇が進むなど金融市場の改善に合わせ、実体経済も持ち直しが続いてきた。
 夏場には消費者マインドの改善が頭打ちとなり個人消費にやや弱い動きがみられた上、足元では設備投資や輸出の増加が一服しているが、緩やかながらも内需は持ち直し基調を維持しており、実質GDP成長率は季調済前期比でプラスが続いている。
 今後は、3月末にかけて消費税率引き上げ前の駆け込み需要が発生することで個人消費が大きく増加し、景気は盛り上がりが予想される。13年度の実質GDP成長率は+2.3%と高い伸びになると予測する。

 増税後は、個人消費や住宅投資を中心に反動減が表れるため、景気は一時的な落ち込みが避けられない。
 しかし、世界経済の回復を背景に輸出の増加が下支えとなることで、国内景気が後退局面に入ることは回避される見込みだ。
 もっとも、消費や住宅は先食いされた需要が大きく、増税後は弱い動きが続くとみられることから、13 年度と比べると14年度は景気の回復ペースが大幅に鈍化することになるだろう。
 尚、増税後の景気の落ち込みに対応するため5.5 兆円の規模となる経済対策が策定された。
 そのうち公共事業はおよそ3 兆円と想定されるが、高かった13年度の水準をさらに上回ることは難しく、成長率を押し下げる要因となる。

●賃金を取り巻く環境

 財務省「法人企業統計」によると、13年上期の経常利益は製造業、非製造業とも2桁増と大幅に増加した。
 とくに、資本金10億円以上の大企業製造業では売上高が減少したにもかかわらず、人件費を中心としたコスト削減に加え円安の進行に伴う採算改善によって、経常利益は前年と比べ7割以上増加し利益率が急改善した。
 こうした企業収益の改善は徐々に裾野が広がってきている。
 資本金2千万円以上1億円未満という中小企業でも、13年上期の経常利益は前年比+7.7%と増加に転じた。
 大企業と比べ中小企業を取り巻く収益環境は依然として厳しい状態が続いているものの、収益の持ち直しが景況感の改善にも繋がっている。
 日本銀行「企業短期経済観測調査」(日銀短観)の12 月調査では、中小企業の業況判断DI(「良い」-「悪い」)は大幅に上昇し、水準は製造業では07 年12 月調査以来のプラスに、非製造業でもプラスに転じ約22年ぶりの高さとなった。

 もっとも、先行きについては大企業、中小企業とも景況感は悪化に転じると見込まれている。
 調査で聞かれている今後3 カ月までの間の変化は増税前の駆け込み需要によって景気が盛り上がっている期間とみられるが、多くの企業ではその後の反動減に対する懸念などを含め、先行きに対して慎重な見方をしている。

 今後も、海外景気の回復を受けて外需が拡大することに加え、増税前の駆け込み需要によって内需も大きく盛り上がると見込まれることから、経常利益の増加は続き、13年度は製造業、非製造業とも増収増益となる公算だ。
 ただし、円安の進行は輸入価格の上昇を通じてコストを押し上げる要因にもなる。
 足元では原油などの国際商品市況が比較的安定して推移しているが、国内企業物価は前年と比べると水準は依然として高い。
 エネルギー価格を中心とした企業物価の上昇は徐々に消費者物価にも波及し始めているものの、所得の伸び悩みが続く中で消費者の低価格指向は根強く、なかなか価格転嫁が進まない品目も多く企業の収益が圧迫されつつある。
 さらに、14年4月には消費税率引き上げによって物価は一段と上昇する。
 増税後は一時的な売上高の減少が避けられず、その後も内需は力強さに欠ける動きが続くとみられる中、経常利益の増加幅は大きく縮小し、利益率の改善は徐々に頭打ちとなる可能性がある。

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●2014年春闘賃金改定の見通し

 企業収益は改善が進んでいるものの、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現の要である賃金の上昇は未だ十分に実現していない。
 安倍政権発足後間もなく始まった前年の春闘では、首相自らが経済3団体に対して賃上げを要請するなど賃金上昇に向けた積極的な政治力の行使がみられた。
 自動車や大手小売など好調な業績が続く大企業で、一時金について組合の要求に対する満額回答が相次ぐなど春闘には明るい兆しがみられたものの、多くの企業では定期昇給(定昇)維持と要求段階におけるベースアップ(ベア)見送りという例年通りの結果だった。
 結局、厚生労働省がまとめた2013年の民間主要企業(資本金10億円以上かつ従業員規模1000人以上の労働組合のある企業)の賃上げ率は1.80%と、前年と比べて+0.02%ポイントしか上がらなかった。

 14年春闘でも、政府は賃上げに向けて主体的に関わっていこうとする姿勢がうかがえる。
 昨年9月には労働組合および経営者とともに「政労使会議」が開かれたが、そこでも首相は経営者に対して積極的な賃上げを要請した。
 日本労働組合総連合会(連合)が昨年12月にまとめた「2014春季生活闘争方針」では、定昇(賃金カーブ維持相当分、約2%)の確保に加え、5年ぶりにベア相当分に当たる1%以上の賃上げと格差等の是正(目安1%)の要求を基本としている。
 さらに、経営者側にあたる日本経済団体連合会(経団連)も、会長が政労使会議で賃上げを前向きに検討する考えを示した上、1月半ばに決定された「2014年版経営労働政策委員会報告」では、「ここ数年と異なる手法も選択肢」とベア実施を容認した。
 00年代に入って以降、春闘における賃上げのほとんどが定期昇給によるものとなっている中、このように三者が揃って賃上げに対して前向きな方針を示したことは、近年みられなかった大きな変化である。

 実際、好調な業績が持続している一部の大企業では、ベアにも踏み込んだ積極的な賃上げを実施する場合もあるだろう。
 しかし、総じてみれば、前年同様ほとんどは定昇程度の賃上げとなり、収益が伸びた企業でも一時金の増額で賃金に還元する場合が多いとみられる。
 14年の民間主要企業(同)の賃上げ率は1.85%と2年連続で前年の水準を上回るものの、前年差は+0.05ポイントと小幅にとどまると予測する。

 尚、人手不足にある中小企業では、労働力の確保や労使関係の安定から、やむを得ず賃上げを実施する企業もあると考えられる。
 景気の持ち直しを背景に失業率の低下や求人倍率の上昇が続くなど雇用環境全体の改善が続く中、とくに中小企業では雇用不足感が強まっている。
 しかし、日銀短観(12月調査)をみると、中小企業非製造業の雇用判断DI(「過剰」-「不足」)は大幅なマイナスが続いているが、大企業と比べ収益の増加ペースは鈍く、景況感の改善はようやく始まったばかりである。
 景気の先行きに慎重な見方を続ける中、それらの企業が人件費抑制姿勢を緩和させるには時間を要するだろう。
 また、業績の改善が十分に伴わない中での賃上げ実施には限界がある上、賃上げに関する交渉を行う余裕さえないといった企業も依然として多い。
 同一規模や同一業種の中でも個別企業ごとに経営環境や企業業績に差がある中、賃上げ率はさらにバラつきが広がる可能性がある。

 さらに、消費税率が3%ポイント上がれば、家賃など非課税品目の影響を除くと消費者物価は2%強の上昇が見込まれる。
 賃金が物価の上昇幅以上に上がらなければ、実質でみた賃金は減ってしまうことになる。
 しかし、厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、12年時点で企業が賃金の改定を決定する際「物価の動向」を重視する企業割合はたった0.5%と、増税によって物価の上昇が見込まれるからといって、企業が積極的に賃上げを行うとは考えにくい。
 むしろ増税後に景気が一時的に落ち込む懸念が強い中、企業は人件費の増加に対してより慎重になりかねない。

【景況分析と賃金、賞与の動向】は、プライムコンサルタントが主宰する「成果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介するものです。

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