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「2013年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2013.6)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 尾畠未輝
(2013年6月5日・夏季定例研究会ブックレット「夏季一時金関連データ」より)

【景況分析と賃金、賞与の動向】

●景気の現状と2013年度日本経済の見通し

 2012年11月14日、当時の首相だった民主党・野田氏が衆議院解散の意思を示したことをきっかけに始まった金融市場における円安株高の流れは、足元までほぼ一貫して続いている。
 とくに、2013年4月4日に日本銀行によって導入された「量的・質的金融緩和」、いわゆる"異次元緩和"は円安株高の流れにさらに拍車を掛けた。
 2012年11月13日には、為替レートは1ドル=79.30円、日経平均株価は8,661円だったが、約半年が経ち、2013年5月10日には為替が1ドル=100円を、5月15日には株価が1万5,000円を超え、それぞれ約5年ぶりとなる円安株高の水準となった。
 こうしたアベノミクスを受けた円安株高の影響は、企業や家計のマインドを大きく改善させた。
 内閣府「景気ウォッチャー調査」における現状判断DIは、2012年12月以降、2013年3月まで改善が続いてきた。
 とくに消費者動向関連については、3月の現状判断DIは景気が戦後最長の拡大局面にあった2006年3月以降の水準を上回り、過去最高水準を更新した。
 同じく内閣府の調査である「消費動向調査」でみても、消費者のマインドを示す消費者態度指数は2013年1月に大きく上昇した後、高水準での推移が続いている。

  もっとも、景気は持ち直しの動きがみられているもの、期待先行による部分が大きい。
 世界経済の回復を背景に輸出は持ち直しの動きがみえてきたが、昨年11月をボトムに緩やかながらも増加基調が続いていた生産は足元で力強さに欠ける。
 3月の鉱工業生産指数は前月比+0.9%であったが、予測調査によると4月に増加した後、5月は減少が見込まれている。
 また、雇用情勢は緩やかながらも改善基調にある一方、所得環境は悪化に歯止めが掛かっておらず、2013年3月の現金給与総額(調査産業計・事業所規模5 人以上)は前年比-0.9%と減少している。
 とくに、賞与算定のベースとなる所定内給与は1990年代後半以降ほぼ一貫して減少しており、足元でも半年以上にわたって前年比で減少が続いている。
 足元では消費者マインドによって一時的に個人消費が持ち直しているが、所得の伸び悩みが続く中、持続的に景気全体をけん引することは難しいだろう。

  今後は、これまで先行して高まってきた期待に、実体経済の回復が追いつくかが焦点となる。海外経済の持ち直しを背景に、輸出が増加基調に転じ、生産の押上げに寄与するだろう。
 ただし、円安の進行は輸出環境を改善させる一方、国際商品市況の上昇とともに輸入価格の上昇を通じてコストの押上げ圧力となる。
 足元の伸びが大きいため、個人消費は一時的に調整局面を迎える可能性があるものの、年度末にかけては消費税率引き上げ前の駆け込み需要が見込まれ、消費は底堅さを維持するとみられる。
 今後も、景気は持ち直しの動きが途切れることはないが、期待されているほどの力強さはなく緩やかなペースにとどまる見込みだ。
 2013年度の実質GDP成長率は前年比+2%強と予測する 。

●2013年夏季賞与の動向 ~3年連続で減少する見込み

  厚生労働省「毎月勤労統計」によると、2012 年年末賞与 の一人当たり平均支給額は365,687 円(前年比-1.5%)と4 年連続で減少した。
 2013年夏季賞与についても、一人当たり平均支給額は357,400 円(前年比-0.3%)と、夏季賞与としては比較可能な1990 年以降で最低水準になると予測する。もっとも、減少は3 年連続となるものの、減少幅は2012 年夏と比べると縮小するだろう。

 2013年1月22日には、政府と日本銀行はデフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けた共同声明を公表した。
 その中で、日銀は「物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%」とするインフレターゲットの導入に踏み切った。
 インフレターゲットを導入した目的は、明確な物価目標を明示することによって人々の予想インフレ率に働きかけて需要を喚起させ、雇用環境の改善を通じて賃金の増加を促すことを期待したためである。
 しかし、実際に物価の上昇が賃金に波及するかどうかは不確実であり、たとえ予想インフレ率が上がっても物価が上昇するまでにはタイムラグがある上、賃金が増加するまでにはさらに時間がかかることになると考えられる。
 そうした中、政府としても安倍首相自らが経済3 団体( 日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会)に対して賃上げを要請したり、閣僚が特定の企業名を挙げて「(賃上げを) 期待している」と述べたりするなど、賃金の上昇に向けて政治力を行使してきた。

 以上のような状況の下で実施された2013 年春季労使交渉(春闘)では、3月13日の一斉回答において、自動車業界など大企業を中心に年間賞与について組合の要求に対する満額回答が相次いだ。
 しかし、基本的には、業績の好調が続いている企業のみが賃上げや賞与の増額の実施に踏み切った形だ。
 例えば、トヨタ自動車では、2013年3月期の純利益(連結決算)は9,621億円と、前期と比べ3.4倍となっている。
 円安の進行が輸出の採算改善を通じて収益押上げの追い風となった。
 さらに、2014年3月期についても、想定為替レートが1ドル=90円のもとで、純利益(連結決算)は1兆3,700億円を見込んでいる。
 また、コンビニエンスストア大手3社では、セブン-イレブン・ジャパン がベースアップを含む賃上げの実施、ローソンが賞与の増額による年収3%引き上げ、ファミリーマートが賞与の増額による年収2.2%引き上げ、と春闘での動向は大きな注目を浴びた。
 ただし、これら3社についても、2012年2月期の営業利益は過去最高となっており、賞与の増額は好調な企業業績に基づいたものである。
 一方、多くの企業では定期昇給は維持されるものの、ベースアップは要求段階で見送られている上、賞与算定のベースとなる所定内給与は伸び悩む可能性が高い。
 また、大企業と比べて収益環境の厳しさが続く中小企業では、賞与についても削減が実施される場合が多いとみられる。

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 業績が好調な大企業が多いこともあって、製造業の一人当たり平均賞与支給額は479,200 円(前年比+1.5%)と2 年ぶりに増加する見込みだ。
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査(日銀短観)」(3月調査)の事業計画では、2013 年夏季賞与に反映されるであろう2012 年度下期の経常利益は大企業製造業を中心に増加が見込まれている。
 しかし、大企業製造業でも内外需要の低迷により業績の不振が続く電気機械では、賞与は業績連動とされているが、2012年度は減益となった企業が多いため、賞与は減額となる可能性が高い。

 一方、厳しい収益環境が続く中小企業のウエイトが高い非製造業は329,500円(同-0.8%)と、3 年連続で減少する見込みだ。
 財務省「法人企業統計」によると、2012年10~12月期の非製造業の経常利益(全規模・全産業、季節調整値)は前期比-1.0%と3四半期連続で減少しており、日銀短観(3月調査)では2012 年度下期は減益が見込まれている。
 大手流通業やメガバンクなど、賞与の増額が予定されている企業もあるが、非製造業全体でみるとごく一部に過ぎない。
 また、非製造業では雇用の非正規化が進んでおり、賞与の水準が低い労働者のウエイトが増すことも、全体でみた水準を下げる要因になる。

 もっとも、徐々にではあるが、賞与の支給はリーマン・ショック直後と比べ多くの企業に広がっている。
 そのため、夏季賞与の支給事業所数割合や支給労働者割合は上昇し、支給労働者数は3,769 万人(前年比+1.0%)に増加するとみられる。
 一人当たり平均支給額は減少が見込まれるものの、支給労働者数が大きく増えることから、2013 年夏季賞与の支給総額(=一人当たり平均支給額×支給労働者数)は増加する見込みである。
 しかし、企業の人件費抑制姿勢が依然として強く、増加幅は小幅にとどまるだろう。

【景況分析と賃金、賞与の動向】は、プライムコンサルタントが主宰する「成果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介するものです。

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