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2012年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 尾畠未輝
(2012年11月6日・秋季定例研究会ブックレット「最近の経済動向と年末賞与配分  資料」より)

【景況分析と賃金、賞与の動向】

●景気の現状と2012年度日本経済の見通し ~景気は一時的な調整局面に入る可能性

 海外経済の減速を受けて輸出の改善が遅れている上、東日本大震災以降、国内景気を牽 引してきた内需の回復の勢いが鈍化してきたため、景気は足元で持ち直しの動きが一服してい る。

 

 世界経済は回復基調を維持しているものの、先行き不透明感は強まっている。
 先進国では追加的な緩和政策が次々と採られているが、回復ペースが一段と鈍化するリスク は大きい。
 中国も金融緩和に転じたものの、供給過剰による在庫調整圧力の高まりから景気減速の動き が続いており、今後も回復が遅れる可能性がある。

 8月の実質輸出は前月比-0.6%(季節調整値)と4ヶ月連続で減少している。
 欧州向けの不振が続いている上、中国などアジア向けも伸び悩んでいる。
 輸出が低迷していることを受けて、このところ生産も弱い動きとなっている。
 8月の鉱工業生産指数は前月比-1.3%(季節調整値)と2ヶ月連続で低下した。
 9月の予測指数を参考にすると、7~9月期は2四半期連続で前期を下回ることが確実だ。
 さらに、化学やIT関連財など一部の業種では在庫が積み上がってきており、今後は在庫調整 圧力が強まることで生産が抑制される懸念がある。

 また、これまで好調が続いていた個人消費も持ち直しが一服している。
 自動車販売を押上げてきたエコカー補助金制度は、9月21日に受付が終了したため、9月の新車 登録台数(含む軽)は前年比-10.1%と13ヶ月ぶりに減少した。
 今後、自動車販売は反動減と低迷が予想され、個人消費は一時的に落ち込む可能性がある。
 さらに、復興需要を受けて政府最終消費や公共投資は足元では堅調に伸びているが、前期比 でみた押し上げ効果は徐々に剥落していくだろう。

 内需の伸びが鈍る一方で外需の回復が遅れることで景気回復に隙間が生じるため、景気は 一時的な調整局面に入るとみられる。
 2012年度の実質GDP成長率は2%程度になると見込まれるが、下期に限ると、成長率は季調済 前期比0%台半ばにとどまると予測する。

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●賃金を取り巻く環境 ~企業収益および雇用、賃金の動向

 震災によって大きく落ち込んだ企業の経常利益は、その後は売上高が順調に回復したこと に加え、人件費を中心としたコスト抑制の効果もあって持ち直していた。
 しかし、このところ改善が一服しており、法人企業統計ベースでみると2012年4~6月期の経常 利益(全規模、季節調整値)は製造業、非製造業とも前期比で減少している。
 当社の予測では、2012 年度の経常利益は前年比+5.1%と、2年ぶりに増益に転じる見込みだが、 非製造業と比べ製造業では伸び率は小幅にとどまる公算が大きい。
 とくに、2012年年末賞与に反映されるとみられる12年度上期の経常利益に限ってみると、製造 業、非製造業とも経常利益は前年同期を下回る見込みである。

 経常利益の低迷とともに、足元では企業の景況感も改善がみられない。
 日銀短観(9月調査)によると、製造業の業況判断DI(「良い」-「悪い」)は、海外景気の 減速長期化による輸出の低迷や在庫の積み上がりを受けて生産が弱含んでいることが影響して、 素材業種、加工業種とも低下した。
 一方、非製造業では景況感は横ばいを維持しているが、業種間でのバラつきが大きく、一部に は弱い動きもみられる。

 足元では雇用環境は厳しいながらも緩やかな改善基調を維持しているが、国内景気の持 ち直しが一服する中、今後は回復の動きが弱まる可能性がある。
 総務省「労働力調査」によると、完全失業者は2009年7月の360万人というピーク時から減少傾 向を維持しており、このところ300万人を下回る水準での推移が続いている。
 しかし、就業者数や雇用者数の動きをみると、リーマン・ショック後に大幅に減少した後、増減 を繰り返しており、水準は依然として低いままである。
 また、厚生労働省「毎月勤労統計」をみると、2009年半ば以降、新規求人数は増加傾向が続 いていたが、このところ伸びが一服しており、新規求人倍率の改善も一服している。
 今後は新規求人倍率に遅行して動く有効求人倍率も、上昇が頭打ちとなる可能性が高い。

 雇用に比べてさらに回復が遅れていた賃金は、昨年夏から今年初め頃にかけて一旦は下げ 止まっていたが、足元では再び減少している。
 賞与算定のベースとなる所定内給与は、リーマン・ショック後に大きく水準が切り下がったまま 低迷が続いている。
 また、足元では生産が弱含んでいることを受けて、製造業の残業時間の伸び率が鈍化しており、 今後は全体でみた所定外給与も増加が一服する可能性がある。

 リーマン・ショック後、企業は急速に人件費の削減を進めてきたが、2010年頃からは抑制姿 勢をやや緩和させていた。
 しかし、景気の先行きに対する不透明感が高まる中、足元では再び人件費は減少傾向にある。
 今後も、企業は人件費を中心とした固定費抑制姿勢をさらに強めると考えられ、雇用や賃金は 低迷が続く可能性がある。

●2012年夏季賞与の動向 ~2年連続で減少した見込み

 本稿執筆時点では、厚生労働省による2012年夏季賞与の結果はまだ公表されていないが、 おそらく1人当たり平均支給額(調査産業計・事業所規模5人以上)は2年連続で減少し、比較 可能な90年以降の最低水準を更新したとみられる。
 「毎月勤労統計」によると夏季賞与が含まれるとみられる6、7月平均の一人当たり特別給与は 前年比-2.7%と減少しているが、常用労働者が5~29人の事業所では同-0.4%と減少幅は小幅に とどまっている。
 一方、500人以上では同-6.8%と落ち込みが大きい。

 対象が大企業に限定されている日本経済団体連合会(経団連)の調査をみると、12年夏季 賞与の総平均妥結額(最終集計) は前年比-2.54%と減少しているが、非製造業(前年比- 0.16%)と比べ、製造業(同-3.25%)の減少幅が大きくなっている。
 非製造業の賞与は、リーマン・ショック後の落ち込みが緩やかだった反面、製造業と比較して 回復は遅れていた。
 賞与の減少幅は縮小してきているが、水準は依然として低下している。

●2012年年末賞与の見通し ~4年連続で減少し、過去最低水準を更新する可能性

 12年年末賞与は4年連続で減少し、90年以降の最低水準を更新すると予測する。
 景気の先行き不透明感が増す中、企業は人件費抑制姿勢をさらに強めるとみられる。
 特に大企業では、12年春季労使交渉で夏季賞与と年末賞与を合わせて決定している場合が 多く、夏季に続き年末も前年の賞与の水準を下回る可能性が高い。
 また、これから年末賞与の支給を決定する場合や見直しが行われる場合についても、賞与に 反映されるであろう2012年度上期の経常利益は製造業を中心に伸び悩んだ上、算定のベースと なる所定内給与は低迷が続いており、厳しい結果となるだろう。
 一方、非製造業については、今年度初め頃までは好調な内需を受けて経常利益は増加してい たが、足元では改善が一服している。
 また、大企業と比べて収益環境の厳しさが続いている中小企業が全体に占める割合が大きい ため、非製造業全体でみると年末賞与は減少する見込みだ。

 リーマン・ショック以降、企業規模や業種、個別企業によって企業収益の落ち込みや改善に バラつきが出ていたため、賞与の支給状況や支給額にも格差が広がっていた。
 しかし、最近では、雇用環境が緩やかながらも改善傾向にある中、賞与の支給は徐々に多くの 雇用者に広がりつつある。
 ただし、中小企業を中心にこれまで賞与が支払われていなかった事業所が少ないながらも賞 与を支払うようになると、結果的に全体でみた一人当たり平均支給額は押し下げられることとな る。

【景況分析と賃金、賞与の動向】は、プライムコンサルタントが主宰する「成 果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介 するものです。

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