1. プライムコンサルタント
  2. 人材マネジメントセミナー
  3. 2012年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する

プライム特選情報

2012年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサル ティング株式会社
調査部 尾畠未輝
(2012年6月5日・夏季定例研究会ブックレット「春季賃金交渉結果と 夏季賞与配分 資料」より)

【景況分析と賃金、賞与の動向】

●景気の現状と2012年度日本経済の見通し ~2012年度、景気の牽引役は 内需から外需へ

 足元では、景気は緩やかに持ち直している。
 世界経済の回復ペースが鈍いため外需の動きは弱いものの、内需が比較的堅 調に推移している。2012年1~3月期の鉱工業生産指数は前期比+1.2%(季節 調整値)と3期連続で増加しているが、これは国内向けが堅調なためであり、 とくに自動車の生産は好調である。
 また、個人消費は緩やかに持ち直している。
 自粛ムードの後退や消費者マインドの好転を反映してサービス関連の支出が 伸びており、一部では高額商品の売れ行きも好調である。加えて、4月の自動 車販売台数(乗用車、含む軽)は前年比+99.5%と前年同月が震災の影響で落 ち込んでいた反動もあって大幅に増加しており、2010年4月と比べても+2.7% と一昨年の水準を上回っている。
 さらに、公共投資も補正予算の本格的な執行が進んでいることを受けて、被 災地を中心に増加してきた。
 2012年1~3月期の実質公共投資(SNAベース、公的固定資本形成)は前期 比+5.4%(季節調整値)と3四半期ぶりに増加した。2011年度の実質GDPは 前年比-0.0%と、東日本大震災後の景気の落ち込みがあったにもかかわらず 、ゼロ成長にとどまった。

 当面、政策効果によって自動車の生産や販売は好調が続き、遅れていた 被災地での復興が進むにつれて公共投資は増加してくる見込みである。また、 企業収益の改善を受けて、先送りされていた設備投資も増加傾向が続くと予想 される。
 2012年度上期の景気は、内需を中心に持ち直しの動きが続くだろう。

 下期になると内需の伸びは一巡するとみられる。しかし、海外景気の回 復力の高まりを背景に外需が日本経済を牽引すると期待され、景気が失速する 可能性は低いだろう。
 先行している米国景気の改善を背景に、アジア景気は順調な回復軌道に復し 、欧州景気も遅れながらも持ち直してくるとみられる。
 昨年までの急激な円高はこのところ一服しており、輸出環境は好転していく 見込みだ。もっとも、原油価格など国際商品市況の上昇に加え、欧州における 財政金融危機の根本的な問題解決には時間がかかることなど、世界経済の下振 れ懸念は残っている。
 2012年度の実質GDP成長率は2%台後半まで高まりプラス成長となる見込 みだが、世界経済の状況によっては一時的に景気の回復力が弱まるリスクがあ る。

●賃金を取り巻く環境 ~企業収益および雇用、賃金の動向

 夏季賞与の原資となる2011年度下期の経常利益は、売上高の減少を受け て低迷した。
 財務省「法人企業統計」によると、2011年10~12月期の売上高(金融業、保 険業を除く全産業、全規模)は前年比-1.3%、経常利益(同)は同-10.3% と、3四半期連続で減収減益となった。リーマン・ショック後に急減した経常 利益は、固定費削減の効果もあって持ち直していたが、その後は東日本大震災 の影響などを受けて足元まで弱含みで推移している。
 2011年10~12月期の経常利益は11.1兆円と、震災前と比べると1.6兆円程度 、水準が切り下がった状態が続いている。とくに、海外景気の鈍化や円高の進 行、タイ洪水などの影響を強く受けた製造業では非製造業と比べて落ち込みが 大きい。

 雇用についてみると、様々なミスマッチが深刻化していることもあって 、新規求人数や有効求人倍率に比べ、完全失業率の改善が遅れている。今後、 景気の回復を背景に雇用情勢の改善基調は維持されるものの、企業は人件費抑 制姿勢を保つとみられることから、改善ペースは緩やかにとどまるだろう。
 また、雇用環境の厳しさが続く中では、足元ではようやく下げ止まってきた 賃金が、この先伸び悩む可能性がある。2012年度の一人当たり賃金は小幅な増 加に転じるとみられるが、水準は依然として低いため雇用者にとって回復の実 感は乏しいだろう。

 東日本大震災の直後に実施された2011年の春季労使交渉は、震災の影響 を含めた企業収益の見通しが十分に立たないまま、交渉が妥結された組合が多 かった。
 2012年春季労使交渉は、現時点で非常に厳しい結果が出てきており、当社の 予測では、民間主要企業(資本金10億円以上、従業員1000人以上)の賃上げ率 は1.78%(前年差-0.05%ポイント)と、前年の水準を下回る見込みである。 とくに自動車や電機など大手製造業などは、一部を除き定期昇給は維持される ものの、賃金改善(ベア)は要求段階で見送った組合が多かった。
 さらに、一時金(賞与)については2011年の実績を下回る水準での要求が多 く、前年割れでの妥結が大半を占めたとみられる。これから本格的な交渉が始 まる中小企業の中には、賞与が大幅に削減される場合もあるだろう。

presen01_cl5.jpg

●2011年年末賞与の動向 ~震災の影響もあり3年連続で減少

 厚生労働省「毎月勤労統計」によると、2011年の年末賞与(調査産業計 、事業所規模5人以上)の一人当たり平均支給額は372,471円(前年比-1.9% )と3年連続で減少し、比較可能な1990年以降で過去最低水準を更新した。
 産業別にみると、東日本大震災やそれに続く原発問題による影響が大きかっ た「複合サービス事業」や「電気・ガス業」などで大幅な減少が続いている。 また、規模別にみると、前年を上回ったのは、事業所規模1000人以上 (677,219円、前年比+0.3%)のみであり、規模が小さい事業所では減少が続 いている。とくに、事業所規模5~29人(260,377円、前年比-4.5%)では、 相対的な水準が低い上、減少幅も大きい。

 一方、支給事業所数割合 は70.6%(前年差+0.5%ポイント)と上昇し ており、支給労働者割合 も83.7%(同+0.2%ポイント)と前年を上回った。 規模や業種によってバラつきはあるものの、賞与の支給は徐々に多くの企業に 広がりつつある。

●2012年夏季賞与の見通し ~2年連続で減少し、過去最低水準を更新す る見込み

 2012年の夏季賞与の一人当たり平均支給額は361,000円(前年比-0.9% )と、2年連続で減少すると予測する。
 減少幅は2011年夏季賞与と比べて拡大し、比較可能な1990年以降で過去最低 水準を更新することになるだろう。賞与算定のベースとなる所定内給与は、よ うやく足元で下げ止まってきた程度であり水準は依然として低く、今後も伸び 悩む可能性がある。
 さらに賞与に反映されるであろう2011年度下期の経常利益は、震災後の落ち 込みからは持ち直したが、円高の進行やタイ洪水の影響で、製造業を中心に厳 しい状況であった。景気の先行きに対する警戒感は根強く、企業は人件費抑制 姿勢を崩さないとみられる中では、企業規模や業種、個別企業で夏季賞与の支 給状況および支給額の格差はより広がることになるだろう。

 産業別にみると、製造業では前年比-0.7%と2年ぶりに減少し、非製造 業(調査産業計から製造業を除いて計算)でも同-0.9%と減少幅は縮小する ものの前年を下回ると予測する。非製造業では、製造業と比較してリーマン・ ショック後の落ち込みが緩やかだった反面、その後の賞与の回復は遅れている 。
 復興関連を中心に内需が堅調に推移していることを背景に、このところ非製 造業の景況感は改善しているとはいえ、中小企業では大企業と比べて収益環境 の厳しさが続いており、中小企業が全体に占める割合が大きい非製造業の賞与 は低迷したままとなろう。
 前年まで賞与が支払われていなかった事業所が、少ないながらも賞与を支払 うようになることも、逆に一人当たり平均支給額を下押しする要因となる。

 雇用環境の回復を背景に労働者数は増加が見込まれるため、夏季賞与の 支給労働者数は前年比+0.3%と増加するとみられる。しかし、一人当たり平 均支給額の減少幅が大きいため、2012年夏季賞与の支給総額は前年比-0.6% と減少するとみられる。

【景況分析と賃金、賞与の動向】は、プライムコンサルタントが主宰する「成 果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介 するものです。

このページの先頭へ