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平成の次の時代の人材価値を高める報酬マネジメント

株式会社プライムコンサルタント代表  菊谷寛之
(2018年11月7日(東京)開催・秋季定例研究会 ブックレット「はじめに」より)

【人材マネジメントを展望する】

 会社が事業の成果を上げ続けるには、適切な経済的・心理的報酬のマネジメントが不可欠である。報酬は、次のような4段階のフェーズでとらえるとわかりやすい。

 報酬の第1段階は、基本給30万円、残業手当4万円、あるいはボーナス70万円といった賃金そのものである。金銭報酬によって会社は労働の対価を支払い、人々の働きを組織化し、投入した人件費を超える顧客価値を実現して収益を上げていく。
 働く人たちは会社の生産活動に貢献しながら、賃金から税金や社会保険料を払い、商品を購入して家庭生活を営む。会社が十分な収益を上げ、働く人たちが安心して働ける必要十分な賃金を支給できるかどうかは、経営の成否と働く人々の人生にかかわる根源的なテーマである。社会全体でみても、金銭報酬の総量とその購買力が、市場経済の規模と富の質を左右するといっても過言ではない。

 報酬の第2段階は、賃金の経済効果を高める昇給や手当、賞与、報奨金などの配分によるインセンティブを活用することである。例えばある職種の熟練者を30万円の固定給で20年雇うよりも、初任給20万円で若手を雇い、熟練度に応じて毎年6000円昇給し、20年後には32万円になるような賃金の傾斜配分を行えば、全体で支払う人件費は約7分の6に節約できる。しかも熟練とともに生活水準が年々向上するので、固定給で据え置くよりも従業員の労働意欲はむしろ高まる。
 同一労働同一賃金の議論でも分かるように、同じ働きをしている人には同じ賃金を、働きに違いがあればその違いに応じた賃金を支給することが、今後は大事な取り組みとなる。同じお金をかけても、賃金制度の設計と運用、その説明力の巧拙によって、働く人たちの納得感やヤル気が大きく違ってくることは論を待たない。

 第3段階は金銭ではなく、組織への参加や仕事そのものから受け取る心理的な満足を高めることである。賃金が高くても、組織に疎外感を抱き、仕事に満足できない従業員は、いずれ組織の中で不平・不満を抱え、問題行動やモラールの低下を引き起こす。逆に賃金がそれほど高くなくても、目標を持ち、仕事の満足度が高い従業員は自律的な成長意欲とともに高い能力を発揮し、組織の成長に大きく貢献する。
 残念ながら第1段階や第2段階の金銭報酬が薄弱な会社では、仕事の満足度を高くキープすることは難しい。だが金銭報酬にどれだけ物量を投入しても、仕事の満足度を高めなければ、大事な人件費が台無しになりかねないこともまた事実である。

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 第4段階は、支援的な関係性を築き、思考と行動の変革を通して組織の達成力に貢献するディープな経験を繰り返し共有することである。組織の使命や課題を共有し、一人ひとりが仕事の失敗や成功を丁寧に振り返る場を確保する中で、柔軟なコミュニケーションを通して人々が集合知を発揮し、各人の持ち場で貢献し合うことができれば、組織の達成力は飛躍的に高まる。
 組織の困難な課題を自分たちで克服し、新たなキャリアのステージに自己成長を遂げる経験は、個人的な仕事の満足を超えて、一人ひとりにとってこの上なく大切な一期一会の記憶となるだろう。
 平成の次の時代は、このような次元の異なる報酬を開発・実践し、人々の自発的な創造力や達成力を着実に高めていける組織が社会をリードしていくのである。

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