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「未来の価値」をお互いに引き上げていこう(2014.2)

株式会社プライムコンサルタント代表  菊谷寛之
(2014年2月18日(東京)20日(大阪)開催・春季定例研究会ブックレット「はじめに」より)

【人材マネジメントを展望する】

 賃金には、過去に対する支払いと、未来への価値づけという二重の意味がある。

 過去の労働(実績)に対する給料は、使用者の債務・コストであり、労働者の債権・生活資金である。
 労働時間や出来高に対応した賃金債権は法的にも第一優先で保護されており、賃金不払いという債務の不履行は厳しく罰せられる。

 他方、これからの労働(投入)に対する報酬は、使用者にとっては投資であり、労働者にとっては収入の機会である。報酬には次の4種類がある。

 一つ目は、権限・責任・リスクに応じた社会的対価を払う「地位報酬」である。

 組織上の地位や役割、仕事のグレードに対応した役割給や職務給、資格序列や能力等級に対応する資格給や職能給、役職に対する役付手当などがある。

 二つ目に、仕事の経験やスキルアップ、より大きな貢献に対する「習熟報酬」がある。

 年齢給や勤続給、号俸制や昇給率を用いた積み上げ型の定期昇給、毎年の評価による洗い替え型の昇給など、さまざまな仕組みがある。

 毎月の賃金は、この地位報酬と習熟報酬の組み合わせが基本であり、権限・責任・リスクや、仕事の習熟度や貢献度など、社内の位置づけが上がって賃金が増えることを「昇格」や「昇給」と呼んでいる。
 社内の位置づけは同じでも、その市場価値や会社の生産性の上昇に伴い賃金水準を引き上げることを「ベースアップ」と呼ぶ。

 三つ目に、会社が実現した経済的成果を配分する「成果報酬」がある。
 企業業績連動型の賞与や部門・個人の成績に連動した賞与配分などの仕組みがある。

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 最後に、過去の功労に対する「功労報酬」がある。
 入社から退職までの退職給付のほか、特許の取得や社会的な貢献などの顕著な功労に対する報奨金などがある。

 報酬制度は、未来の人的投資に対する会社の計画であり、約束でもある。従業員は「この会社で働く」ことを選択し、将来の昇給や収入を期待し、生活設計を行う。

 昇格や昇給、賞与配分等の運用を通して、従業員は自分たちの社内の位置づけや社会的評価を受けとめ、会社の期待や自分たちの役割を再確認していく。

 このような関係性の意識が従業員の意欲や思考・行動に大きく影響することは論をまたない。
 ただし逆説的に聞こえるかもしれないが、報酬だけで従業員の意欲や行動を動機づけること には限界がある。

 役割を引き受け、仕事に本気・真剣に取り組んで成果を上げようとするのは、従業員本人の内的な動機である。
 お金の力が及ばない人間的な気持が主体であり、周囲が心理操作で駆り立てたり、組織の威令で押しつけたりすることにも限界がある。

 仕事の意欲や満足は、キャリア意欲に支えられた仕事への挑戦や、仕事そのものの面白さ、未知の領域への探究心、仕事を通じた人や社会とのつながりなどからもたらされる。
 それは働く人々自身の内的な成長・貢献の意欲が自然に発現したものである。
 それらの意欲を支えるものは、組織の共有ビジョンや全体への参画意識、人間的な信頼関係、オープンなものの見方、一人ひとりの自信や自尊心などである。

 報酬は、働く人々に自信や自尊心を植えつける最重要な労働条件の一つである。

 しかし経営的に厳しい現実の中で、報酬の引き上げには自ずと限界があろう。

 だからこそ、報酬制度とその運用に細心の注意を払いつつ、働く人々の尊厳を守り、成長可能性を信頼し、粘り強く仕事の意欲や満足を高めていく努力が欠かせない。
 未来の価値をお互いに引き上げていくための配慮や手間を惜しんではならない。

【人材マネジメントを展望する】は、プライムコンサルタントが主宰する「成果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介するものです。

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