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経営を阻む「溝」を超える三つの行動原則(2012.6)

株式会社プライムコンサルタント代表  菊谷寛之
(2012年6月5日・夏季定例研究会ブックレット「はじめに」より)

【人材マネジメントを展望する】

 前回、私は経営という仕事を「VSOP」の4文字で表した。

 V(ビジョン):会社の目的と使命、方向性を明らかにし、人々の共感を得 ること
 S(戦略):社会の成果に向かってシステムを働かせるストーリーを描くこ と
 O(組織):仕事を組織化し、人に具体的な責任を持たせ、成果を上げさせ ること
 P(利益):雇用の継続と投資に必要な利益を実現し、企業を存続させるこ と

 この4領域を順につなげていく意識的な行動を、「経営目標管理」と呼 んでいる。
 そこには越えねばならない三つの「溝」がある。
 一つ目は利益と組織の間に広がる溝、二つ目は組織と戦略の間、三つ目は戦略 とビジョンの間に広がる溝である。

 利益を上げる組織の主活動をここでは「現業」と呼ぼう。どの会社も、 現業は必要最小限の資源で最大の利益を上げねばならないというジレンマがあ る。
 利益を増やすには仕事量を増やさねばならない。しかし仕事量を増やす には多くの人材・設備・在庫を抱えねばならず、その維持コストが利益を圧迫 する。

 仕事量と組織の最適バランスをとるには、組織の最も弱い箇所である「 制約条件」に管理を集中する必要がある。
 制約条件を無視して仕事を増やせば、組織はたちまち渋滞し、生産性は急降下 する。
 重要な行動原則は、組織のボトルネックが効率的にフル回転できるように仕事 の投入を注意深く調整し、それ以外の仕事をその弱い箇所に従属させることで ある。最適な人員や設備、在庫もそこから割り出される。

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 では組織と戦略との間の溝とは何か。
 組織は、現業が繁盛すればするほど、その勢いをひたすら維持しようとする強 い求心力が働く。そこでは人員や設備を一層強化・改善し、現業をフル稼働さ せることが最大の価値となる。
 だが、どんな事業にも新興・成長・成熟・衰退というライフサイクルがある。 現業がいかに繁盛していても、そこに安住することは許されない。
 経営者は常に自社の強みを活かし、市場のニーズを満たす変革を起こすための 新たな戦略・目標を持つ必要がある。
 そしてまさにその戦略・目標に取り組むとき、現業の強い求心力が行動の足を 引っ張るのである。
 現業の繁忙に巻き込まれれば、組織が変わることは難しい。

 これを打破するための行動原則は、現業で効率的に成果を上げることで 経営資源に余裕を作り出し、勢いづいた有能なマンパワーを戦略課題に集中す ることである。

 投入する資源は過去の成功体験をリメイクするのではなく、新たな顧客 をつかむ成功物語を描くことに集中する。
 既存の仕事は最小限の人材で最大の成果を絞り出すだけとする。または意識的 に廃棄する。
 本当に重要な機会にこそ人材をあてる。

 最後のビジョンと戦略との間の溝とは、
 誰のためにいかなる事業を行うのか
 自分たちはどんな会社にしたいのか
という自己定義と、
 どのような知識と強みを発揮して社会に経済的成果を実現するか
という戦略の整合性との間の溝である。

 社会の価値観は確実に変化する。そしてグローバル経済のもとで変化は 複雑に多様化し、加速される。
 変化に遅れれば、どんな優れた事業のコンセプトもやがて陳腐化し、有効だっ た戦略も力を失う。
 ビジョンと戦略の溝を埋めるための行動原則は、社会の現実を直視する謙虚な 学習の姿勢と、間違いに気づいたら柔軟にビジョンと戦略を修正する果敢な意 思決定である。われわれ自身の物の見方・行動を変えて試してみる素直な実験 の精神である。

 経営者もミドルも人事担当も、組織のメンバーが心から願うことに耳を 傾け、社会のニーズに共鳴しようとする志を保てるかどうかが大事な勝負どこ ろとなる。

【人材マネジメントを展望する】は、プライムコンサルタントが主宰する「成 果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介 するものです。

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