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自然の道理にかなう評価と処遇を実現しよう(2012.11)

株式会社プライムコンサルタント代表  菊谷寛之
(2012年11月6日・秋季定例研究会ブックレット「はじめに」より)

【人材マネジメントを展望する】

 人はなぜ働くのか。この古くて新しい問いに対する答えはさまざまだ。

 最右翼の答えは、生活の糧や地位に見合う報酬を得ることなどの経済的動機だろう。
 しかし人は経済的動機だけに支配されて生きるのではない。

 非経済的な動機もそれに負けないくらい強力である。
 責任を果たし人に感謝されることや、成長し能力が認められること、社会を支え組織の目標を 達成すること、真理や芸術を追求すること、信仰を広めること、法と正義を守ること、生態系を守り 自然と共生することなど、いずれも人が仕事に向かう十分な動機となり得る。

 経済的な動機の場合は、人がその仕事に費やす時間や労力あるいは責任の重さや貢献度と、 人が実際に手にする報酬とが天秤にかけられる。
 特に心身が消耗する肉体労働や単純労働、大きな責任やリスクの伴う経営管理や取引などの仕事は、 割に合うか合わないかがシビアーに問われる。
 損だと思うような仕事だと、働く人々の動機はスポイルされ、使用者は信頼関係を築けない。
 労働時間に見合うかどうか、仕事の負荷や責任・貢献度が公平に評価されるかが職場の大きな問題となる。

 一方、非経済的な動機のほうは、金銭や時間に代えられない心理的な満足や社会的称賛、 さらには人や社会、自然とのつながりなどの直截で具体的な価値を追い求める。
 そこでの報酬感は率直かつ個性的で、ある人にはあまり意味のないことが、他の人には特別の意味を持ち、 深い満足をもたらす。

 多くの仕事には経済的動機と非経済的動機が同居しているので見えにくいが、非経済的な 動機には驚くべきことが隠されている。
 それは仕事をすればするほど経験や満足が高まるという学習効果が伴うことだ。
 労働時間の長短や損得勘定さえ意味を失い、人々は倦むことなく仕事を続け、経験を深め ようとする。
 特に知識労働やサービス労働はその傾向が強くなる。
 ただし非経済的な動機は、その人が自分で発見し選択するものであって、人が押しつけたり 操作できたりするものではない。

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 非経済的な動機を突き詰めると、仕事を通して物事の道理を学び、人や組織、社会、自然 とのつながりを通して、より大きな生態系の一部となって適応や進化を果たすという、人類の 基本的衝動にその本質があるように思える。

 自然界のパターンに学び、進化を支えるという膨大な無償の行為は、人々の進歩と調和、 成熟をもたらし、それこそが人々の人生を意味あるものにする。

 もっともこれらは経済的動機が満たされたうえでの話である。
 どんなに立派な志や高い目標であっても、経済的余裕がなければ生活が脅かされる。
 報酬が心身の消耗や責任・リスクに見合わなければ、動機は長続きしない。
 まして第三者にその志や目標が受け継がれることはない。そこには冷徹な適者生存の原理が 働く。

 経済的な動機が満たされ、非経済的な動機を重視するようになると、人々は報酬の多寡を あまり気にしなくなる。
 賃金や賞与などの金銭報酬は社会的な約束事に基づく「仮の姿」ほどの意味しか持たなくなる。

 報酬感の異なる多くの人々に納得してもらうための原則は、まず経済的な動機に対する説明力のある評価と報酬を確立することである。
 そのうえで、一人ひとりの非経済的動機に目を向ける振り返りや対話の取り組みが必要だ。
 その場合、自然界のパターンに学び、進化を支えるという本源的な動機を損ねたり、経済的動機のバイアスを加えたりするような評価や報酬のプレッシャーは避けるほうが賢明である。

 むしろ経済的利害を超えて、人々が安心して、さらにいえば自信を持って仕事に向かうことを促すような、自然な評価基準や報酬が望ましい。
 経済的・非経済的な動機のいずれにせよ、何がよい働きかということは、何よりも真摯に仕事をしている人々が一番よく知っている。
 よい評価基準を作るには、職場で働く人々の声に素直に耳を傾ける必要がある。

【人材マネジメントを展望する】は、プライムコンサルタントが主宰する「成 果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介 するものです。

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