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定額残業手当制度が法的に認められる要件は?-3-(連載第105回) 

【中川恒彦の人事労務相談コーナー】

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(2015年2月)

Q 最近、定額残業代についての裁判所の判決が厳しくなり、ハローワークも求人票における固定残業代の示し方に不適切なものが多いとして指導を強めているということを聞きます。
 定額残業代制度は法的にどのような問題があるのか、適法と認められるための要件とは何かについて説明いただければ幸いです。

A 割増賃金を定額で支払うことは、毎月の時間外労働等に対し労働基準法上支払うべき割増賃金額がその定額を下回っているときは、その定額を支払うだけで足りますが、労働基準法上支払うべき割増賃金額がその定額を上回るときは、法律上必要な割増賃金額に達するまでの差額を支払うことが必要です。

 裁判における使用者側敗訴事件の多くは、その差額が適正に支払われていないもので、差額を支払っていれば割増賃金に関し労働基準法に違反することはありません。

 なお、最近は、基本給を極端に低額(最低賃金ぎりぎり)にし、80時間ないし100時間の時間外割増賃金に相当する金額を定額残業手当として設定するケースがあり、裁判所は、「そのような制度は公序良俗に違反するおそれがある」、「被告の賃金制度は不合理なものである」などとして、そのような定額残業手当の支払では割増賃金が支払われているとは認められない、あるいは、定額残業手当の一部は基本給と同様とみるべきであるといった判決を下しています。

〔解説〕

 前回は、定額の手当を設定しているケースについての裁判例を6件ほど紹介しましたが、今回はその続編です。

2 定額残業手当に関する裁判例

(1)定額の手当を設定しているケースについての裁判例

7.時間外80時間分に相当する役割給は長時間労働を誘導するものとされた例
     (大庄ほか事件 平成23.5.25 大阪高裁判決)

 本件給与体系においては、80時間の固定時間外労働手当及び固定深夜勤務手当を「役割給」という用語で表示しているものであるところ、管理職あるいは専門職に関 しては「役割給」との名称に合理性が認められる可能性もにわかに否定できないが、一般職に関してはこのような名称で固定時間外労働手当を表示する必要性は全くなく、むしろこのことによる弊害の可能性が高いというべきである。
 控訴人会社の新卒採用 募集概要を前提にすると、控訴人会社に応募する新入社員からみると、初任給として19万4500円が支給されるものと認識し、その金額を得るために80時間もの時間外労働を要するものとは認識できない。
 採用が決まった段階で交わされる雇用契約 書において初めて、役割給が一定時間の時間外労働を前提とする手当であることを知るであろうが、その内容をより具体的に知るのはそのことについて詳しい説明がなされる入社後の研修においてということになる。
 このような状況で、社員の心理としては、当初予定した給与を得ようとするのが通常であるから、給与の減額を避けるためにも80時間以上の時間外労働を行う方向に誘導されるのは当然である。
 したがって、少なくとも一般職に関する限り、このような給与体系は、単に社員の募集にあたり給与条件を実際以上によく見せるためだけに作用するにすぎず、長時間労働の抑制に働くとはいえないものであって、80時間の時間外労働を組み込んだ給与体系であると評価されてもやむを得ないものである。

 これは、過労死についての遺族からの損害賠償請求事件であり、定額残業手当そのものが直接の争点になったものではありませんが、

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