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定額残業手当制度が法的に認められる要件は?-6-(連載第108回) 

【中川恒彦の人事労務相談コーナー】

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(2015年3月)

Q 最近、定額残業代についての裁判所の判決が厳しくなり、ハローワークも求人票における固定残業代の示し方に不適切なものが多いとして指導を強めているということを聞きます。
 定額残業代制度は法的にどのような問題があるのか、適法と認められるための要件とは何かについて説明いただければ幸いです。

A 割増賃金を定額で支払うことは、毎月の時間外労働等に対し労働基準法上支払うべき割増賃金額がその定額を下回っているときは、その定額を支払うだけで足りますが、労働基準法上支払うべき割増賃金額がその定額を上回るときは、法律上必要な割増賃金額に達するまでの差額を支払うことが必要です。

 裁判における使用者側敗訴事件の多くは、その差額が適正に支払われていないもので、差額を支払っていれば割増賃金に関し労働基準法に違反することはありません。

 なお、最近は、基本給を極端に低額(最低賃金ぎりぎり)にし、80時間ないし100時間の時間外割増賃金に相当する金額を定額残業手当として設定するケースがあり、裁判所は、「そのような制度は公序良俗に違反するおそれがある」、「被告の賃金制度は不合理なものである」などとして、そのような定額残業手当の支払では割増賃金が支払われているとは認められない、あるいは、定額残業手当の一部は基本給と同様とみるべきであるといった判決を下しています。

〔解説〕

 これまで5回にわたり、定額残業手当に関する裁判例を紹介してきました。
 そのほとんどが使用者側の敗訴に終わっていますが、今回は定額残業手当に関する行政の考え方を紹介するとともに、定額残業手当のメリットの有無について考えます。

 その前に、1つだけ、特異な裁判例を紹介しておきます。
  これまで紹介した裁判例は、基本給中に割増賃金が含まれているというのであれば、明確に区分されていることが必要であるというものでしたが、ここで紹介する裁判例は、明確に区分されていなくても割増賃金は基本給中に含まれているとしたものです。

3 区分が不明確でも割増賃金は基本給中に含まれているとされた例
     (モルガン・スタンレー証券事件 平17.10.19 東京地裁判決)

 被告から原告へ支給される毎月の基本給の中に所定時間労働の対価と所定時間外労働の対価とが区別されることなく入っていても、労基法37条の制度趣旨に反することにはならないというべきである。

 基本給中の割増賃金部分が明確に区分されていなくても、割増賃金は支払われていると判断してもよいという、これまで紹介した裁判所の見解とは異なるような判決ですが、これは、年俸2200万円、業績賞与年4000万円、合計年収6000万円を超える、外国為替関連取引を行うプロフェッショナル社員に関する判決であり、この判決をもって、「割増賃金部分が明確に区分されていなくても割増賃金は基本給に含まれているという取扱いが一般的に有効と認められた」と受け取ったのでは、状況を大きく見誤ることになります。

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