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定額残業手当制度が法的に認められる要件は?-2-(連載第104回) 

【中川恒彦の人事労務相談コーナー】

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(2015年1月)

Q 最近、定額残業代についての裁判所の判決が厳しくなり、ハローワークも求人票における固定残業代の示し方に不適切なものが多いとして指導を強めているということを聞きます。
定額残業代制度は法的にどのような問題があるのか、適法と認められるための要件とは何かについて説明いただければ幸いです。

A 割増賃金を定額で支払うことは、毎月の時間外労働等に対し労働基準法上支払うべき割増賃金額がその定額を下回っているときは、その定額を支払うだけで足りますが、労働基準法上支払うべき割増賃金額がその定額を上回るときは、法律上必要な割増賃金額に達するまでの差額を支払うことが必要です。

 裁判における使用者側敗訴事件の多くは、その差額が適正に支払われていないもので、差額を支払っていれば割増賃金に関し労働基準法に違反することはありません。

 なお、最近は、基本給を極端に低額(最低賃金ぎりぎり)にし、80時間ないし100時間の時間外割増賃金に相当する金額を定額残業手当として設定するケースがあり、裁判所は、「そのような制度は公序良俗に違反するおそれがある」、「被告の賃金制度は不合理なものである」などとして、そのような定額残業手当の支払では割増賃金が支払われているとは認められない、あるいは、定額残業手当の一部は基本給と同様とみるべきであるといった判決を下しています。

〔解説〕

 今回から数回にわたって、定額残業手当に関する裁判例を紹介します。
 適法と認められた事例もありますが、大部分は使用者側が敗訴しています。
 紹介する裁判例はかなりの数ですが、どんなやり方をしても不適切なものは敗訴しているということです。
 前回説明したように、結果的には同じ考え方で処理されますが、定額の手当を定額残業手当として設定している場合と、残業手当は基本給や職務手当等の中に含まれているという取扱いをする場合の2つのケースに分けて紹介します。

2 定額残業手当に関する裁判例

(1)定額の手当を設定しているケースについての裁判例

1.法定額が定額残業手当額を上回るときは差額支払いが必要とされた例
     (関西ソニー販売事件 昭和63.10.26 大阪地裁判決)

 労働基準法37条は時間外労働等に対し一定額以上の割増賃金の支払いを使用者に命じているところ、同条所定の額以上の割増賃金の支払いがなされるかぎりその趣旨は満たされ同条所定の計算方法を用いることまでは要しないので、その支払い額が法所定の計算方法による割増賃金額を上回る以上、割増賃金として一定額を支払うことも許されるが、現実の労働時間によって計算した割増賃金額が右一定額を上回っている場合には、労働者は使用者に対してその差額の支払いを請求することができる。

 前回も紹介しましたが、全体の中における位置づけをはっきりさせておいた方がいいと考え再掲しました。
 セールス手当という名称で基本給の17%に相当する額を定額残業手当として支払っていたものについて、定額残業手当と認めたものです。
 定額残業手当制度を設けることは差し支えないが、労働基準法上支払うべき割増賃金額がその額を上回るときは差額の追加支払いが必要である旨述べたもので、定額残業手当に関し最も基本的な考え方を述べたものといえます。

 なお、本件セールス手当の設定に当たって、会社側は、営業社員の時間外勤務の調査結果をもとにしており、休日労働割増賃金は含んでいません。

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